カードファイト!!ヴァンガードーyou wish ー   作:ユキノサザメキ

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その少女は、殲滅者

「ねぇ?あの都市伝説通りのカードがあったら素敵だよねー」

「またその話ー?」

 

学校でファイトをしながら二人は話していた。

目を輝かせて都市伝説の話を始めた少女、遠藤カナにその親友、白井ナギはため息を吐いた。

都市伝説とは、今噂になっている意思を持つカードのことだ。

なんでも、この世には意思を持つカードが存在し、そのカードを持つ者同士闘い、勝ち続けると願いが叶うとか。

しかし、それは暇を持て余した暇人が面白半分で広めた噂だと認識されているが、興味本意が伝染し、周りも面白半分にその都市伝説について語っている。

 

「もう聞き飽きた。てかあんた願いも無いのによくそんな都市伝説を鵜呑みにできるわね」

「いやいや、願いとか関係ないよ。ロマンだよ、ロマン」

「ロマンねぇ…。それよりクリティカル出たからカナの負けね」

「え…?」

 

ファイトの決着が着き、デッキを片付けるとナギが切り出した。

 

「今日さ、またケーキの試食に来てくれない?母さんが店に出す新作ケーキを作ったんだけど…」

「あっ…。ごめん、今日は用があって…」

「そう…」

 

昼休みが終わり、放課後。

分かれ道で別れたナギは自宅に着いた。

ナギの実家は喫茶店を営んでいる。

 

「ただいま」

「おかえり、ナギ」

「母さん、今日カナ来れないって」

「えっ、そう…。残念ね〜。カナちゃんのアドバイス聞きたかったのに…」

 

カウンターで項垂れる母をよそに店と繋がる自宅に入ろうとした途端、母は思い出したようにナギに言った。

 

「そういえば、あなた宛に小包が届いていたわよ」

「小包?」

 

小包のことを疑問に思いながら居間に入ると、早速小包が目に入った。

宛先を確認すると確かにナギの名前が入っていた。

送り主は不明。

 

「これは…、ヴァンガード…?」

 

警戒しながら開けると、そこには黒い箱が入っていた。

そこにヴァンガードサークルのロゴが描かれている。

ナギはとりあえず自室に戻し、その黒い箱を眺めていた。

 

「何かの懸賞かな?でも応募した記憶もないし…」

 

と、眺めながら考える。

しばらく悩んだ後、意を決したナギは黒い箱を掴んだ。

これまた慎重に箱を開ける。

その箱を開けると、一枚のカードが入っていた。

 

「何…このカード…」

 

それは見たことのないカードだった。

背景は黒雲に染められているが、中心には少女が立っていた。

その少女は漆黒を基調とした鎧を身に纏っている。

ところどころ鎧に見られる黄金のライン、肩に担いである巨大な鎌が余計に不気味さを漂わせていた。

不思議そうにそのカードを見つめると、そのカードの変化に気づいた。

 

「えっ…?」

 

カードに描かれた漆黒の少女が、鎌を降ろした。

肩を回した。

背中を曲げた。

大きなため息を吐いた。

欠伸をした。

さながら、窮屈な姿勢から解放されたかのような態度だった。

 

「嘘…、ユニットが…動いた…?」

 

その声に反応したのか、漆黒の少女は動きを止めると、ナギを見つめた。

 

『初めまして…、マイヴァンガード』

 

漆黒の少女は言った。

喋った。

あまりの出来事に、ナギは思わず唖然とした。

 

『どうしたの?そんな鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして…』

「ユニットが…、喋った…!?」

『ああ…、そんなこと…』

「そんなことって…」

『私は‘‘ルーツ’’。喋るのは当然』

「ルーツ…?」

『あなたは、意思を持つカードの都市伝説を知っている?』

「…!?」

 

それはついさっき、カナと話していたことだった。

 

『私はそのカード。意思を持つユニットはルーツ、と呼ばれているわ』

「じゃあ…」

『そう。あなたの願いを叶えることが出来る。…ものは試しね。外に出なさい』

「へっ…!?」

 

ナギは漆黒の少女に言われるままに人気のない路地裏に来た。

そして、ほぼ同士に反対から別の少女が現れる。

 

「いたいた、ルーツを持ったファイター!」

『ね?だから言ったでしょ?』

 

その少女が持つカードからも声が聞こえる。

ルーツ持ちのファイターだ。

 

「じゃあ、早速ファイトをやろうか!スタンドアップ!!」

「す、スタンドアップ…!!」

 

少女がカードを前に突き出し、そう叫ぶ。

ナギも彼女に吊られて思わず同じく叫んでしまった。

その瞬間、視界が闇に包まれた。

しばらくしてナギは目を開ける。

 

「な、なに…?ここ…」

 

そこは真っ白な世界だった。

そして目の前にファイトテーブルが置かれており、離れたところに同じくテーブルとともに先程の少女がいた。

確認したところで、ナギの足元が光った。

 

「さあ、キミのターンからだよ!」

「キミのターンからだって…」

『普段通り、ファイトすればいい…』

 

手札から漆黒の少女の声が聞こえる。

手札を見ると、いつの間にかデッキに入っていた漆黒の少女がいた。

 

「えっ…!?」

 

ナギは漆黒の少女が入っていた以上に驚いたことがあった。

 

「これ…、私のデッキじゃない…?それにこのユニット達、見たことない…」

『これはあなたのデッキよ。あなたのデッキじゃないようであなたのデッキ、と言った方が正しいかな…?』

「それってどういう…」

『私の超能力みたいなもんさ。使い方もわかるだろ?』

「そういえば…」

 

手札を見ると、戦略が湧き上がってくる。

まるで、自分のデッキ。

そういう意味では漆黒の少女が言ったことは正しいのか。

そう認識したナギは目つきが鋭くなった。

 

「…いくよッ!!」

 

こうして始まったファイト。

初めは期待と不安が入り混じる複雑な心境だったが、この空間の効果によるユニットの実体化と今までにない衝撃に、そんな心境は消えていた。

 

(なにこれ…、楽しい…!私が本当に憑依(ライド)しているみたい…)

「いいね、盛り上がってきたねー。ハルメラ、アタック!」

『おうよッ!!』

 

少女からハルメラと呼ばれた薔薇を意識した衣装の少女ユニットは杖を回すと地から巨大な薔薇の棘が生え、それをナギに向かって放った。

しかし、その攻撃は…、

 

「ガード!」

 

ナギの出したガーディアンによって阻まれた。

 

「何よあんた!ちまちまと攻撃を防いでさ。それにあんたの使っているカード見たことないわよ!!」

 

こればかりは不可抗力だ、とナギは無視してドローする。

そして視線を漆黒の少女に移した。

 

『私の出番か?マイヴァンガード』

「うん…」

『どうした?マイヴァンガード。ハルメラってルーツを恐れをなしたか?』

「冗談ッ…!いくよ!!」

『そうこなくちゃ…、ね』

 

ナギのヴァンガードが、変わる。

闇の雷に撃たれたヴァンガードが、漆黒の少女へと変わった。

イラスト通り、漆黒の鎧にマント、それに合わせるような黒く長い髪。

顔立ちも整っており、漆黒の鎧がよく似合う大人びた顔立ちだ。

そして、何より死神が持っていそうな不気味な鎌が彼女は相手のルーツとは別の、特別な存在であることを醸し出していた。

 

「これが…あなた…?」

『驚くのはまだ早いよッ…!』

 

現れた漆黒の少女は不敵な笑みを浮かべ鎌を空(くう)を裂くように横に振る。

すると次の瞬間、相手の少女のリアガードが三体、消滅した。

まるで巨大な鎌に切り裂かれたように。

 

「えっ…?何が起こって…」

『何、あのルーツ!?』

 

今の現象に、相手の少女とルーツも困惑しているようだ。

 

「これがあなたのスキル…」

『それだけじゃない』

 

次に鎌に切り裂いたユニットを吸収する。

吸収しきると、鎌が闇色に輝く。

次の瞬間、ナギの山札から裂かれたユニット分のユニットが現れた。

 

『敵を喰らい、僕(しもべ)を増やす。それが私の力』

「なによ!そのスキル!?」

 

ナギの前に相手の少女がそう叫んだ。

 

「こんな反則級なスキル、見たことないわよ。それにあなたの使っているユニットだって…!」

『お、落ち着きないよ…!』

 

少女がなおも困惑し、ハルメラの忠告も聞かなくなっていた。

 

『今よ、一気に潰すわよ』

「うん…!」

 

と、漆黒の少女が駆け上がる。

 

『来るよ!早くガーディアンを…』

「む、無理よ…。この手札じゃ、防げない…」

『覚悟しな…!』

 

ハルメラが振り返ると目の前には既に鎌を構え不気味な笑みを浮かべている漆黒の少女がいた。

そして、漆黒の少女はハルメラの胸元を切り裂いた。

ハルメラは声にもならない悲鳴を挙げ、倒れた。

相手の少女も放心状態だ。

 

『くっ…、キミは…何者…なんだ…?』

 

ハルメラは崩れゆく空間の中、最後の力を振り絞り、訊いた。

すると、漆黒の少女はハルメラを蔑むような目つきで見て答えた。

 

『私はクリア。…闇の殲滅者(バニッシャー)、クリア』

 

そう名乗り、空間は崩れ去った。

気づくと場所は人気のない路地裏に戻っていた。

 

「くっ…。次は負けないからねッ!」

 

そう言って少女は来た道を走り去った。

 

『…で?どうだった?』

「!?」

 

少女の走り去る姿をボーッと見ていると、クリアが訊いてきた。

その声に反応して体を跳ねさせる。

その問いに落ち着いて考えると、ナギは答えた。

 

「…楽しい」

『ふふ…。では、また闘いましょう?ねぇ?マイヴァンガード…』

 

そう言いクリアは妖艶に、妖しく艶めかしく、笑った。

 

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