本当は数話書きたかったんですけど、GW期間周辺はクソ忙しくて執筆もクソも無かったんです。
GW休みは、誰かの休みを生贄に作られている(暗黒苦笑)
「〜〜♪」
ここに、ひとりで出かけている幼い少女が居る。
彼女はオウル、鼻歌を歌いながらオウルは敬愛するお姉さまに買ってもらった可愛らしいポシェットを揺らしながら街を歩いていた。
「お小遣いがようやく貯まったので、あなたのお家を買いに行けますね」
オウルがそう言うとポシェットの中から黒いサソリのような機械が現れる。
コイツはオウルのペット、名前はまだない。
今日は、オウルのペットの為の家を買うためにペット用品店へ行く日だ。
「お兄さまは心配性です。ちゃんとホドを携帯してるので一人で行けますのに」
オウルのペットがポシェットから"ホド"と言われたスマホを取り出した。
このスマホ、ルーターを本体に生まれ変わったホドの子機の役割をしており、兄妹達はホドの子機(スマホ)で連絡を取り合っていた。
この前アインが迷子になったのを聞いたキムラヌートがアイン達と共にホドを作り替えたのだ。
その結果、1家のインターネット系列はホドが管理していた。
「さて、着きました!」
オウルのペットが肩に乗り、自分の物件をいち早く見定めようと身体を前に乗り出した。
「いらっしゃいませー!」
店員が元気な挨拶を行い、オウルはペットハウスを見て回る。
「どれがいいです?」
オウルが聞くとオウルのペットは肩から飛び降りて自分の足でこれがいい!と指し示す。
ふわふわもこもこの可愛らしい一軒家を模したペットハウスだ。
「……高いですね」
オウルの小さな呟きにオウルのペットはガビーン!と音がなっていそうなオーバーリアクションと共に崩れ落ちる。
いちいち反応がうるさいオウルのペットにオウルはくすくす笑いながら1人と1体で仲良く見定めていた。
………そんなペット用品店にまた1人客がやってきた。
「頼もう!特別にいいペットフードを買いに来た!」
オウルが声のする方に目を向けると、やけに顔がいい角の生えた少女が威勢よく入ってきていた。
見ると、常連なのか店員と仲良さげに話しており店員の方はまたかと愛想笑いで対応していた。
「キキキキ!エンペラー・ライオンマル・ジュニア3世の為のいつものやつをご所望だ!」
「ごめんなさいね〜もう売り切れだったんですよ〜」
「な、何ぃ!?」
(あ、なんか馬鹿そうですね)
オウルが先程似たような反応をしていた奴に目を向けるとオウルのペットはまるで「失礼な!あいつほどマヌケな反応してない!」と抗議するようにカタカタと足を鳴らす。
「それで、決まりました?」
1人と1体の戯れは終わり、オウルのペットは程よい大きさの程よい値段のペットハウスを指した。
「…これなら、予算的にもピッタリです!」
オウルは店員を呼びにレジへと向かう。レジには残念美人がまだ店員とコントを続けており、キャットフードの代わりにドッグフードを買わされようとしていた。
「すみませーん、あのペットハウスが欲しいのですが…」
「はいかしこまりましたー!」
「ちょっ!?仮にも私も客なんだが!?」
走っていった店員に置いていかれ、ぞんざいな扱いをされた残念美人と気まずい空気になってしまった。
「……」
「……」
「…ん?なぁお前…」
「え??」
残念美人はジロジロとオウルを見るやいなや抱き上げて観察しはじめた。
「……うむ、イブキより小さい……」
「ちょっ!離してください!子供扱いするなー!」
バタバタと暴れるが、純粋なキヴォトス人のパワーに為す術もなく抱き上げられたオウルを守るためにオウルのペットは残念美人の腕に攻撃を始めた。
「痛ッ、やめっやめろぉ!おい!躾がなってないぞ躾が!鼻はやめろ鼻は!!」
まるで鼻にザリガニのハサミを挟んだかのように顔面にしがみつくオウルのペットによってようやく解放されたオウルはプリプリと怒りながら手短に会計を済ませ、そそくさとその場を後にした。
「おぉ!また会ったじゃないか!」
「………」
また別の日、今度はアインとソフと一緒にゲヘナの美味しいと有名な店に遊びに行った。その時、先日出会った残念美人とまた会ってしまった。
「「…………」」
「…知りませんよ?こんな人本当に知りません」
「んなぁッ!?」
アインとソフから「こんな変人と知り合いなのか?」と訝しまれオウルは即座に否定する。
「あの時ペット用品店で会っただろう!?覚えてないか!?」
「知りません、本当に知りません」
オウルからガチめの拒否反応をされ膝をついた残念美人にどこか不機嫌な様子の赤髪の少女が残念美人を引き摺って去っていく。
「ほら、帰りますよ。今日は寄り道している暇はないとか自分で言ってませんでした?」
「ま、待てイロハ!最近確かにお前をこき使いすぎたかもしれないが!これには訳が________」
イロハと呼ばれた少女が残念美人を戦車に投げ入れ、残念美人が犬神家の状態のまま戦車は走り出す。
「オウル…」
「人付き合いは…考えた方がいいですよ…?」
「ち、違います!あんな人ほんとに知り合いじゃないですってば!!」
オウルの叫びがゲヘナに響いた。
____________
その日の夜、オウルは夕飯時にも関わらず珍しく不機嫌なままだった。
「…ふんっ!」
「お、おぉ……」
黙々と平らげては勢いよく空になった茶碗を差し出すので、キムラヌートはなんとも言えない表情でご飯をよそった。
「あぐっ…んっ!?」
「オウル、急いで食べては喉につまらせますよ」
喉を叩くオウルにマルクトは水を差し出すとオウルは急いで水を飲み込んだ。
「んぐっ…はぁ…ありがとうございますお姉さま」
「…なぁ、一体何があったんだ?」
「…なんでもありません」
「いや、それにしては…」
「なんでもありません!!」
「…ハィ」
オウルの勢いに負け小さくなるキムラヌート、こういう時に余計怒らせると逆効果になるのでキムラヌートはこれ以上追及出来なかった。
オウルはそのまま怒りながら歯磨きをしてそのまま眠りについた。
「ソフ、やっぱりあの人の事だよね?」
「まぁ…向こうが馴れ馴れしいだけだと思うけど」
「…あの人?」
「それは我も気になります」
2人の会話に兄と姉も混ざり、アインとソフは今日あった出来事を2人に話した。
「……なるほどなぁ、それはちょっといただけない」
「………」
目の座ったマルクトと、妙に迫力のある笑顔で笑うキムラヌート。このような表情は滅多にしないのでアインとソフは顔を青くしながらお互いに抱いて震え上がっていた。
「アイン、ソフ。2人から見てその人はどういう人でした?」
「は、はい!」
「え、えっと…角の生えた…」
その後、2人は今日の人物の特徴を話していく。元々造られた存在であるアイン達に"忘れる"という行為はないのだ。
「………ん?どっっっっかで聞いたな…その人物像…」
キムラヌートは頭を捻る。忘れていた記憶を思い出す為ではない。寧ろ記憶に存在するその情報が一致してしまい困惑による情報整理をしている為だ。
「とりあえず明日は休みだ、仕事もこの件に関して何かあるまでしばらく休む」
「分かりました、では我はどうすればいいですか?」
「俺とオウルに何かあったら助けてくれ」
「兄さまがそばにいるなら我が出る幕はないと思いますが…」
「念の為だ。何かあってからじゃ遅いんだよ」
キムラヌートはそう言いながら寝息を立てて寝ているオウルの頭を撫でた。
次の日、キムラヌートはオウルと2人で電車に乗って出かけていた。
「珍しいですね、お兄さまから買い物に行こうだなんて」
「最近流行に疎いと思ってな、妹の中で1番理性的なお前から意見を頂こうと思ってな」
「もうお兄さまったら、褒めても何も出ませんよ〜?」
オウルがニヤニヤしながら満更でもなさそうにうりうりとキムラヌートに拳を押し付ける。
「ですがアインとソフが2人でお留守番で私だけなんて少し得しちゃったですね」
「大丈夫、あの二人にもちゃんとお出かけするさ」
「それで、今日はどこに行くんです?」
「ゲヘナ」
キムラヌートが答えると同時にゲヘナ到着のアナウンスが聞こえた。
席を立って降りるとオウルは少し嫌な顔をしながら後に着いてくる。
「えぇ…?治安が悪いことで有名ですよ?それに角が生えた人、私最近苦手ですし…」
「心配するな、今日は俺が一緒だ。何かあっても守ってやる」
キムラヌートがそう答えるとオウルは満面の笑みで腕にしがみつく。
「こら、歩きづらいぞ」
「えへへ」
その後、2人は買い物を楽しんだ後お土産を買って帰ろうとした。
「あっ…」
「ん?」
オウルが動きを止め、キムラヌートはオウルの視線の先を見た。
そこにはアインとソフが言った特徴に合致する女性が演説を行っていた。
「あっ!お前!!」
その女性はこちらに気づくやいなや一直線に向かって来た。
そのオウルの前にキムラヌートが立ちはだかる。
「む?誰だお前は?」
「そちらこそ、
2人は言葉をそう交わすとお互いに相手を睨みつけた。
一触即発の雰囲気に現場は騒然…となる訳なくいつもの日常のような「またか」という雰囲気が流れちらりと見ることはあっても足は止めることはなかった。
そんな2人の間に乱入者が現れた。
「マコト先輩〜〜!!」
トコトコと歩いて来るのは明らかに周りと違い年端もいかないような少女がこちらに走って来る。
「おぉイブキ!」
そんな少女に手を広げて受け入れる体制を取るが、イブキと呼ばれた少女はマコトの横に立ち、キムラヌートに頭を下げた。
「初めまして!丹花イブキです!」
「あぁどうもこんにちは、キムラヌートです。オウル、挨拶」
「……こんにちは、オウルです」
「わぁ〜!こんにちは!」
オウルが挨拶するとイブキがニコニコとオウルの手を繋いでキムラヌートの後ろに隠れていたオウルを引っ張り出し、そのままオウルに色々話しかけていた。
「わぁ〜!その子可愛い〜!」
「そうですかね?」
「ねぇねぇ!学校はどこに行ってるの?」
「えっと…学校は行ってないです…」
「そうなの?じゃあイブキと一緒にゲヘナ学園に行こうよ!絶対楽しいよー?」
「そ、それは…」
2人の仲睦まじいやり取りにキムラヌートはたっていた気を沈めてもう1人の方に向き合った。
「それで、いつまで俺らはここに拘束されなきゃいけないんだ?万魔殿の議長、羽沼マコトさん?」
「…キキキキ、まさか私の名がゲヘナの外にも轟いているとは…」
「勘違いするなよ?あんたの名前を知ってたのは俺の知り合いにあんたを知ってる人がいたからだ」
バイト先の先輩に感謝の念を送りながら、キムラヌートは持っていた荷物を下ろして肩を回す。
「妹達から聞いたぞ?ペット用品店で1回、この前の出来事で2回。そして今回のこの件だ。何か理由があっての事だろうな?」
「…なら、落ち着いて話ができる場所に案内しよう」
マコトが誰かに連絡を取ると、すぐに車がやってきて4人を乗せて走る。向かう先は勿論、万魔殿だ。
万魔殿内に入り、4人は席に座って話をしようとしていた。
「……俺はこの人と話してるから、オウル達は遊んでな?」
「いいの?」
「大丈夫ですか?お兄さま…」
「大丈夫大丈夫、ただ話すだけさ」
キムラヌートがオウルの頭を撫でて手を振る。
オウルはイブキの後をついてでていった。
「……さて」
キムラヌートがマコトと2人きりになると、キムラヌートはここに来て初めて相手に対して敵対的な表情を見せた。
キムラヌートの後ろにマルクトと似たモデルのファンネルをマコトに向ける。
「お前にはうちの妹達が色々と迷惑したんだ、何故そのようなことをしたのか…返答によってはどうなるかわかっているだろうな?」
「キキキキキ…あぁ、わかってる…」
マコトはただ笑みを浮かべてキムラヌートと相対していた。
部屋から出てから2人は親交を深め、お互いに名前で呼び合うようになった。
「じゃあ、イブキは飛び級でここに?」
「うん!オウルちゃんはどうして学校行ってないの?」
「それは…」
オウルは少し言い淀むとゆっくりと話し始めた。
「私達姉妹…お兄さまの他にお姉さまと2人姉妹がいるんですけど、私達は皆、この世界が嫌いでした」
オウルの言葉にイブキは静かに聞く。
「与えられた者は、当たり前のようにその力を行使し、私達は選び取ることもできない。そう、思っていました」
顔を上げ、天井を見るオウルは難しい顔をしていた。まるで今の自分がどう答えればいいのか分からないかのように。
「お兄さまに鋼鉄大陸から連れられ、新たな生活を通しその考えは肯定でもあり否定でもありました。なので今我々が否定しようとしても、前のように否定出来ないかもしれません。でも…」
オウルは床に落ちている色鉛筆で描かれた絵を見ながら苦笑した。
「少しだけ、思っちゃったんです。私達も…私も…今なら自分の好きなように生きられる。そしたら、貴方達の言う…青春を送れるのかも…って」
「出来るよ!」
オウルの言葉にイブキが身体を乗り出すように近づけた。
「イブキ、オウルちゃんに何があったのか分からないけど、オウルちゃんと友達になれて嬉しい!」
「イブキ…」
「だから、これからずーっと!イブキの友達でいよ!はい!」
「これは…」
イブキの手には、可愛らしいリボンがあった。
「これあげる!もしオウルちゃんが困ったらイブキも助けてあげる!」
オウルはそう言われると、無言でイブキを抱きしめた。
「どうしたの?」
「……なんでもありませんよ」
イブキはオウルの背中を少しの間撫でてあげた。
「……お客さん、そろそろ時間ですよ?」
部屋にノックをして入っきてたのは先日マコトを引きづった赤髪の少女だ。
「あぁ、先日お会いしましたね。棗イロハです。よろしく」
「…オウルです、よろしくお願いします」
「オウルちゃん!また会おうね!」
「えぇ、また会いましょう?」
2人は手を振って別れた。歩いている時にイロハから声がかかった。
「外でのお話、少し聞いてたんですが、もしうちの学園に入るなら検討しておいて下さいね?イブキの友達なら色々してあげますよ?」
「……考えさせてください」
外に出ると、何故かマルクトが万魔殿の入口に立っていた。
「お姉さま!」
「オウル、おかえりなさい」
オウルが思わずマルクトに飛び込んで行き、マルクトはオウルを抱きとめる。
「お兄さまはまだ中ですか?」
「えぇ、我にオウルを先に帰らせてくれと言ってましたので。では、お邪魔しました」
「また遊びに来てくださいね〜」
マルクトが頭を下げ、オウルを連れて帰って行った。
その日の夜…
4人が寝静まっている中、一人で手帳とにらめっこをしているキムラヌート。
寝床から、物音がするので振り返ると、オウルのペットがコチラに来ていた。
「なんだ…お前か…」
キムラヌートがオウルのペットを手招きすると、右手でオウルのペットを撫で始める。
「今回の騒動…お前は全てを知ってたな」
オウルのペットは喋らない、喋れない。ただキムラヌートの独白を聞いているだけだ。
「はぁ……」
キムラヌートは今日あった出来事を思い返していた。
『それで、何故お前はオウルをつけ狙った?』
『つけ狙った?』
『とぼけるな、数日に渡りオウルと行く先行く先出会いやがって』
『あぁ、それは全部偶然だぞ?』
『は?』
『キキキ……私もイブキがそんな目に会ったら同じ。お前の気持ちも分かるが、正直言おう。全部偶然の出来事だ』
『つまりなんだ、全部こっちの勘違いって訳か?』
『そういう事だな』
マコトの言葉にキムラヌートは大きく息を吐き、お土産の1つを目の前で差し出す。
『この度は大変ご迷惑を……』
マコトは遠慮なく受け取ると話を続ける。
『偶然だが、打算もあった』
『…なんだと?』
『……デカグラマトン』
『!?その名前どこで…!?』
マコトの口からデカグラマトンの名前を聞き、警戒するキムラヌートにマコトはお茶を飲みながら話を続ける。
『私の情報網を甘く見るなよ?初めてお前の妹と出会い、見知らぬ人物なら調べるに決まっているだろう?』
『……何が目的だ?』
マコトは笑うとキムラヌートに真正面から言い放つ。
『その技術、私の為に役立ててみないか?』
キムラヌートは目で話を続けろと促す。
『私は目的がある。だが、武力でも、技術でも、人でもまだ足りん!そこで、お前達にも我がゲヘナの門をくぐって貰いたい!勿論、その暁にはゲヘナ学園の編入は不可欠だが…』
『今は、お断りさせてもらう』
『へ?』
『言っておこう。俺たちは…厳密に言えば妹達だ。妹達の結論無しで俺は勝手に決めない』
紅茶を飲み干したキムラヌートはそのまま席を立ち、ホドで連絡を取る。
『マルクト、オウルの迎えを頼んだ。迎撃?大丈夫だ、今はな』
キムラヌートは最後にマコトを一瞥してから何かを言おうとしたが、そのまま言葉を飲み込んで立ち去る。
『……先生はお前達の事を探していた』
マコトの言葉にキムラヌートは足を止める。
『イロハがこの前シャーレに久しぶりに行った時の話だ。先生は寝る間も惜しんで何か作業をしていてな、部屋には数枚の届出があった。寝る時も寝言で誰かの名前をごくたまに呟いていたとか。今となっては分かる。それがお前達…デカグラマトンの者達か』
『………』
マコトの言葉に反応せず、キムラヌートはその場を後にした。
「お前には…全てを知っといて貰いたい。俺の容態についてもだ」
キムラヌートはオウルのペットを撫でながら言った。
「ごめんなぁ…最近、身体が言うことを聞かないんだ」
キムラヌートが左手…左腕を動かすとぎこちない動きしかしなかった。
「勿論、病院にも行ったさ。だがな、
仕方ない、デカグラマトン製のボディだからなとボヤくキムラヌートは次第にウトウトと眠気に誘われた。
「そろそろ…仕事で無茶も出来なくなってきたかもしれないな…」
キムラヌートはそうぼやきながら微睡みの中に沈んでいった。
後数話くらい関係を作れたら、次の章に行きますか。
因みに万魔殿は俺のお気にの生徒がいるグループの1つです。