「ただいま戻りました」
「「「お姉さま〜〜〜!!」」」
マルクトが帰還し、声をかけると声が聞こえた瞬間3人は大喜びでマルクトの周りに集まる。
「皆で見てたぞ、よく頑張ったな」
キムラヌートが先程の爆発でマルクトの頬についた煤を払ってやるとマルクトは白い肌をほんのり赤くした。
「我は上手く戦えてましたか?」
「勿論です!かっこよかったです!」
「お兄さまもここまでのものは見た事ないって大興奮してたよ!」
「あの、お兄さまが、ね〜?私達以上にはしゃいでましたし〜?」
「おう、やけに俺を強調するわるーいお口の持ち主は誰だー?」
「あっあっ、ちょっ…冗談ですだから頭持ち上げないで…お、お兄さま?な、なんで力込め…あっ、アーッ!!」
オウルの頭を指圧でいぢめるキムラヌートとのやり取りをマルクトは少し羨ましく思った。
「……兄さま、我も」
「お兄さま!今度はお兄さまもあの大人達の前に立つのですか!?」
「……いやぁ、俺はどうかな。武装無いし…」
「なら、私がお兄さまの武装を開発します!」
アインがえへんと胸を張ってそう宣言する。
「ずるい!じゃあ私も!」
「いてて…それじゃあ私も一緒に。お姉さまもやりますよね?」
「……ぁ、はい、我も一緒に」
「…そこまで言うなら、お言葉に甘えるとするかね」
「あ……」
キムラヌートが照れながらアイン達の頭を撫でる。マルクトはそれに羨望の眼差しを向けていた。
「…ん?」
「どうかしたの?お兄さま」
「……んー?これから離れるのに最終チェックしておこうかと思ってな」
「なにか不備でもあったの?」
「いや、そんなんじゃない。持ってく物が揃ってるか見るだけだ。折角だからマルクトと一緒に見に行こうと思ってさ」
「お姉さまと?」
「あぁ、帰ってきて早々悪いが頼めるか?」
「え?えぇ勿論です」
「よし、じゃあ3人ともちょっとの間頼むぞ?喧嘩はしないでくれよな」
キムラヌートに手を振る3人からマルクトと共に離れ荷物の確認に来た。各資材、エネルギー系統、数は少ないが眷属兵、自販機が一つ、各預言者のコア……
幾つかチェックした後、キムラヌートはちょっと進んで歩みを止めた。
「兄さま?どうかしましたか?」
「…いやぁそれは俺が聞きたいね。帰ってきてからなんかよそよそしい感じだ。どうかしたか?」
「…それは」
「あの3人に聞かれたくない事でもあったのかなーと思って2人きりの時間を無理にでも作ってみたが、もしかして俺の勘違いか?」
「いえ、そういう訳では…ただ…」
マルクトは帽子を脱いで照れているのか目を逸らしながら言った。
「頭を、撫でて欲しいのです…頑張った褒美として…」
「すぐに言えばやったのに…」
「我は…兄さまの妹です。ですがアイン達の姉でもあります…妹達の前で甘えるのは…ちょっと恥ずかしい…です」
妹達にかっこいいと言われたのもあってか、なるべくその憧れの姿を崩したくなかったのだろう。可愛いお願いを叶える為に早速頭を撫でた。
「あっ…ふふ」
「よしよし、アイン達は前に出て戦えないし、俺は武装も無いからなぁ」
「我は役にたってますか?」
「勿論だぞ〜うりうり」
頭を撫でくりまわしてやった後、マルクトの頬をこねくり回す。作られた存在ではあるが、身体構造は摩訶不思議で人間のように柔らかくすべすべの肌だ。
「お、お姉さまぁぁ…」
「あんなに激しく…」
「お姉さま取られちゃいましたね…」
マルクトの少し後ろで隠れてこちらを見ている3人に気づいたキムラヌート。激しく目を泳がしすぐに元いた場所へ戻れと目で意思疎通をはかる。
「ん…兄さま…もっと…」
「「「わぁ……」」」
マルクトにせがまれ辞めることも出来ない。そして3人も夢中でこちらのアイコンタクトに気が付かない!
「なぁ、そろそろ戻らないか?あの3人も待ってるだろうし…」
「いえ、もう少し…」
マルクトは大胆にも抱きついて更に頭を擦り合わせる。
「ねぇ、もうちょっと見せてよ…」
「んん、邪魔ですね…!」
「見え…ない…わわ!」
「「え?うわっ!?」」
1番下にいたアインが姿勢を崩し、そのまま3人仲良く音を立てて倒れ込んだ。
「え?」
「……oh......もう……」
驚愕の顔でマルクトが3人を見つめる。キムラヌートはやはりこうなってしまったかと頭を抑えた。
「アイン、ソフ、オウル…え?一体いつから…え?え??」
「ひぃん…ごめんなさいお姉さま…」
「気になっちゃって…」
「あ、因みに私達はお兄さまがお姉さまの頬を撫でてる所から見てました!」
3人各々そう答えると、マルクトはボンッ!と顔を真っ赤にし、目をグルグル回しながら混乱した。
「お、おおおおおおおおお」
「おいおい落ち着け、な?」
キムラヌートがマルクトを落ち着かせようと宥めるが、マルクトは目を回しながらポコポコと軽くキムラヌートを叩いていた。
「おおおおおおおおおおお」
「待て、ストップだ。マルクト?」
「おおおおおおおおおお!」
「おい!止まれ!!ちょっ…馬鹿にならん!!お前の力でそれは馬鹿にならんって!」
「おおおおおおおおおお!!」
「アッ!!オイ!マジで!!身体壊れる!!ヒィィィィ!!?」
「おおおおおおおおおお!!??」
次第にポコポコからトストス、ボコボコ、ドスッドスッ!ボカッ!ドゴッ!!と威力が高くなっていき、キムラヌートは体を丸めて初めて痛みというものを味わった。
少しして…
「さて…」
「…すみませんでした、兄さま」
未だに少し体が縮こまっている兄に申し訳なく謝る。キムラヌートは手で大丈夫と宥めると操縦席に座る。
「これから、この鋼鉄大陸を捨てる。何か足りないものはないな?」
「問題ないです!」
「準備OKです!」
全てのチェックを終え、発進する前にキムラヌートは思い出したかのように妹達に聞いた。
「あぁ、そういえば。俺だけあの先生達に挨拶してなかったな」
「そういえばそうですね」
「じゃあ、通信するんですか?私は気が進みませんが…」
「ま、一応。これもマナーって調べた時出てたような…?」
轟音響かせ空へと飛び上がった輸送船はそのまま鋼鉄大陸を抜け出す前に、先生達の反応がある場所へ通信を送った。
モモイ達と鋼鉄大陸に降下し、早速ビナーを探そうとしていたがすぐにその問題は解決した。
降下先に、ビナーがいたからである。
「うわー、大きな蛇だぁ…」
「寝てるんですかね…」
『いえ、そのような事はないハズです』
だが、ビナーは寝転んだ姿勢のままピクリとも動かない。モモイが試しに撃ってみても全く動かない。
「こんな反応今まで見たことがない…」
先生の隣に立つのはケイだ。マルクトととの戦闘の後、ボディが大破し間一髪無事だったデカグラマトンのボディに意識を移したケイもビナーを観察する。
ケイは少し見て何かに気づいたのか先生に声をかける。
「先生、これは…」
「"おかしいな、これじゃまるで…"」
『中身がないみたいじゃないか、って?』
「"!?"」
「誰ですか…!?」
『先生、通信です。これは…!?』
『おっと、失礼するよん』
「"…君が、キムラヌートか"」
『おおっ、先生と言われるだけあって察しは良いね。じゃあ俺もお決まりの奴やっとくか』
キムラヌートと言われた彼女(彼?)は先程出会ったマルクトとどこか似ているようで、雰囲気からは似ても似つかないような人物だった。
キムラヌートは恭しく胸に手を当て頭を下げる。
『初めまして、ご機嫌よう無粋な侵入者諸君。我が妹達からご挨拶を。俺は創造されざる1つの意志。自身の価値を否定した物質主義者』
頭をあげ、ニヤリと笑う。
『
『…何をしに来たのか分かりませんが、あなたのその笑みはこれから消え…』
「おっと、少し外野には黙っていて貰おう」
キムラヌートが指を鳴らすとヒマリ達との通信が遮断された。
「貴方、私達がここに降り立ってからじゃない。前から預言者のコアを抜き取ってましたね!?」
『ふむ、どうやらこの事態をようやく把握出来たのは俺達のボディに身を移したケイちゃんだけか』
「ケイちゃんじゃありません!」
「え?えぇ??どういう事?」
「モモイ、私達はどうやら奴らに釣られたようですよ」
ケイは苦虫を噛み潰したような顔で、笑うキムラヌートを睨みつける。
「微弱な反応で我々を呼び出して、あたかも預言者が存在していると思わせ、そこに我々を誘い出し一網打尽にする。違いますか!?」
『ふーん?半分どころか一ミリも合ってないね。ポンコツケイちゃん?』
「んなっ!?」
『まずひとつ、俺は別に預言者が存在してると思わせてはない。君たちが勝手に勘違いしただけ。ふたつ、そもそも俺はお前たちとことを構える気はない』
「急にそんな事言い出して、怖気付いたのですか?」
ケイの挑発めいた発言にもキムラヌートは意に返さず答える。
『降伏とも少し違うな、これは俺の意思で行っている事だ』
「"それは…"」
『それはデカグラマトンの思想すらも関係ない…という解釈でいいんですね?』
「"ヒマリ!"」
『お待たせしました先生、少し手間取りましたが、これくらいのジャミングなら対抗出来ます』
『おお?予想よりも早く復帰したか。見立てではもう少しかかると思ってたんだがな』
『この天才美少女ハッカーを舐めないでくださいね?』
「それより、あなた!」
ケイがキムラヌートを指さす。
「自分の意思でこれを行ってる、デカグラマトンの意思は関係ない。それってつまり」
『預言者らしくない?まるで1人の人間みたいだとでも言いたいかい?』
「!!」
『なら少し身の上話をしよう。俺は
キムラヌートは乾いた笑いをしながら語り始める。
『そしてマルクトの代替品として俺を作っただと?神に成る為犠牲となれ?そりゃ神じゃない神に祀りあげられた何かだろ。贄が消えたらそいつはどうなる?ただの生き血を覚えた獣だ。だから俺は否定する。ハッキリ言ってやろう、そのような犠牲ありきの神の再現なんざクソ喰らえだ』
断固とした意思を口にしたキムラヌートの言葉は止まらない。
『俺個人としては、別に君たちに悪感情を持ってる訳でもなし、このまま穏便に済むならそのまま済ませたいが…』
「"今からでも間に合う、この鋼鉄大陸を止めてさえくれれば…"」
『それならもう止めてあるとも』
「"え?"」
『先生…もう既に鋼鉄大陸の機能は停止しているさ』
確認してみろと促すと先生はすぐにヒマリ達に連絡を入れた。向こうも鋼鉄大陸が既に活動停止しているのを報告した。
「"よかった…"」
『何を安心しているんだ?言っただろうこれは降伏でもなんでもないってな』
再びキムラヌートが指を鳴らすと今度は激しい揺れと共に各所で爆発が起きる。
「"!?"」
「何!?何なの!?」
「ひぃっ!」
「皆!集まって!」
鋼鉄大陸に降り立った全員がバラバラにならないよう集まる。
『鋼鉄大陸はもう用済みだ、我々は既に主要な物資を全て回収済みである。よってこれより行うのは、証拠隠滅の為の自爆だ』
「無茶苦茶です!突然鋼鉄大陸がいらないだなんて!」
「"待ってくれ!まだ話し合えばわかる筈なんだ!"」
『先生よ、振るった拳を受けて尚許してくれるのならそれ以上に幸運な事はないよ、それが俺だけの問題だったならな』
映像のキムラヌートが少し後ろを見た。多分後ろにキムラヌートの言う妹…アイン、ソフ、オウル、そしてマルクトがいるのだろう。
『だが、事の発端はデカグラマトンでありそのデカグラマトンから生まれた妹達だ。俺は最後に誕生したが、それでも俺はこの子達の兄だ。最後に生まれた兄』
「"なら君が彼女達に間違ってない方向に導いてやらなきゃいけないじゃないか!"」
『俺と出会うまでここまで苦労したんだ、それを簡単に手放してこれから新しい道を歩もう!なんて都合がいいと思わないか?だから我々は一時休戦させてもらおう』
「"!?"」
『我々はどこかで身を隠す、共に人間社会を学び、そして期を迎えれば、また同じようにこの地を鋼鉄に染めあげよう。それまで我々の戦いは終わらない。デカグラマトンの思想を除いて、この子らの思想という願いを地に残すにはそうするのが現状のベストだと俺は判断した』
「やることが極端すぎるんですよ貴方達は!」
『確かに極端だよ、だがあーだこーだ考えるよりは分かりやすくていいと思うがね。…話しすぎたな、俺らも退散するか』
「"待て!"」
『さらばだ先生、次会う時はただのキムラヌート…そして、デカグラマトンの思想から離れた妹達として会えることを祈ってるよ』
通信が終わると爆発は更に激しくなる。
空に猛スピードでここから離れる輸送船を発見する。あの中にキムラヌート達がいるのだろう。
『先生、トキをあの輸送船に向かわせた!今すぐに救助に向かうわ!』
リオの通信を最後に先生達は救援が来やすい場所まで移動し、無事救助された。
その後、あっさりと爆破し沈んでいく鋼鉄大陸を見ながら先生は絶対にキムラヌート達兄妹達を見つけてみせると決意した。
鋼鉄大陸が沈んで数ヶ月が経ったある日…
『本日の業務は終了しました、給料を受け取りご帰宅下さい』
「お疲れ様でーす」
キヴォトスのどこかの街中…
キムラヌートはお金を受け取るとすぐに帰路に戻り、ちょっとボロボロなアパートに入る。
「おかえりなさい、兄さま」
長かった髪を少し切ったエプロン姿のマルクトが出迎え
「おかえりなさい〜!」
「お兄さま!今度はこのゲームで遊ぼう!」
「ソフ!お兄さまは仕事で疲れてるんだから休ませなきゃダメじゃないですか!」
白い服だったアイン達は各々今のキヴォトスに溶け込むような服を着ていた。
彼らはあるアパートの一室で仲睦まじく暮らしていた。
鋼鉄大陸から今に至るまで何でボロアパートに住んでるのか、多分次回数ヶ月のうちに何があったのか書くと思うで。