俺の友達が世界を救った上に女の子になって帰って来たんだが 作:虚憂
「ぼ、ボクの名前は
そう自身のことを語る彼女の、本当の名前は
立派な男子高校生であった者だ。
……この前の冬までは。
「じゃあ代崎さんは、あそこの角にいる
「は、はい!」
初々しさを感じさせる彼女の素振りは、その整った容姿も相まってもはや凶器とすら言える。
とても頭が痛い、はたしてあれが元
「ユウ、よろしくね」
「オオ、ヨロシクオネガイシマス……」
「なんでカタコトなのさ?」
なんでって、そりゃあユウさん改めユエさんや。
「俺にはちょーっと刺激が強すぎるからかな」
「?」
「なんでもない、とりあえず座りんさいよ」
「ぷ、どこの方言だよそれ」
俺の謎言語に微笑む仕草からは、元のユウと中身は何ら変わらないということがわかる。
しかし、しかしだ。
それ以外の要素が凶悪すぎる。
「……」
何故か色の変わった長い髪に、淡い紫の瞳。
前からだとあんまりだが、横からだと僅かに『ある』と理解させられる膨らみ。
おかしいぞこの
「ん、何見てんの?」
「ビビってるだけだっての」
「ふーん、変なユウ」
変なのは戻って来てからのお前だっての。
……という俺の叫びはさておき、俺の名前は
隣の元男とは同名仲間だった男だ、昔からの馴染みでもある。
ここぞとばかりに俺のことを一方的にユウと呼んでいるが、昔はお互いにユウと呼び合う奇妙な関係をしていた。
まあその形式は見事に崩れ去ったわけですがね、本当に理解が追いつかない。
「ユウ、今日って授業あったっけ」
「無いよ、今日は始業式とHRだけだし」
「よしっ」
昔っから、
事情はやんわり教えてもらっているのだがどうにも現実味が薄いんだよなぁ。
「ユウ」
「なんだよ」
「放課後、ユウの家に上がってくからよろしく!」
「はぁ?」
■■■
いつでもぼうっとして遊々と一日を過ごしてていた
だからまあ、世界なんてものすらも救ってしまえるわけだが……。
「おお、久しぶりだけど変わってないなぁユウの家」
「変わるかよ」
俺の部屋に見た目が整った異性を連れ込んだという事実が存在してしまっているということ。
これは、これだけはちょーっと事情が違うんじゃないんですかねぇ!
だって俺何にもおかしいことしてないんだもん、ユウがいつものように部屋に入り浸っているというだけのことだぞ。
「整えられたベットにどーん!」
「壊すなよー」
第一俺はこいつが本物のユウだと認めた覚えはない、ユウみたいなことをする別人なのではないのかとも疑ってる。
仕草が一々本物っぽいのはこの際無視しよう、じゃないと俺は性転換を受け入れなきゃならなくなってしまう。
「壊さないよ、ボクの第二の寝床なのに」
「おい」
「仕方ないじゃん、うちだと
「義妹と寝てろ」
「うえ、それはちょっと違うじゃん! あついし……」
いくら八方美人な方のユウと言っても、長年見て来て俺のことは助ける必要がないと判断したのか結構だらける。
そんな様子を見て、俺は俺でこの優等生の助けになれねーかなーとか思っていたことは認めよう、しかしだ。
中身があいつでも面が良すぎると霞む事実だってあるんだということを声を大にして言いたい……!
「暑がりの癖に俺のベッドに転がり込むな」
「寒がりのユウだったとしても、快適に眠れるおふとんは譲れないんだよ!」
「お前マジであの優等生面どこにやったんだよ」
これまでに何度も言ってきたことだけどな。
何年も何回も見てきたことだが未だながらバグるんだこれが。
「何年も何回も言われてきたけど、ユウにまで優等生しなくていーじゃん」
「それはそうだが、そんなになるならもうちょい外面も崩せとあれほど」
それに釣られて俺まで遊々としたいつもの調子が崩れてしまう。
俺はこいつの保護者か何かかな?
「ボクは優だから」
「……んで、俺は遊ってか?」
「うん」
そう微笑むこいつは、確かに俺の知ってるユウだ。
どういう原理で性別変わったんだか。
「ボクが女の子になった理由?」
「俺の考えを自然に読むなよ」
「見てたらなんとなくわかっちゃうんだししょうがなくない? んで、どうして女の子になったかなんだけどねー」
……この世界には魔法という概念はないが、その代わりに異能という概念はある。
ユウ/ユエが世界を救ったのはその力があったからだし、逆に世界を滅ぼそうとしたのもその力を持った人間だったという。
「大抵の人間は力の使い方を理解していない、だったよな」
「そうそう、それでさー倒した悪の親玉のヤツがいたんだけど、そいつの異能が厄介のなんのって」
まあ世界を滅ぼそうとする様な奴なんだからそりゃあ大層な異能を所持していることでしょうけどね。
「まあそっちは良くて、問題はそいつの愛人」
「愛人?」
「うん、ボスの人とすっごい仲睦まじい女の人」
ふむふむ。
まあそういう相手が居たって不思議じゃないよな、人間だし。
「そいつの異能が多分、ボクを女の子にしたのと関係してると思うんだけど……」
「だけど?」
「逃げられちゃった、不甲斐ないことにボクが身体の変化に耐えられなくて倒れちゃったからさー、こっちがてんやわんやしちゃって」
「想像に難くない光景だな」
うん、まあこいつの知り合いの奴らってユウ大好き人間だし。
そりゃあラスボス倒してホッとしてた時にユウが倒れたら混乱するだろうなって。
おんなじ名前で気まずいのなんの。
「まああんまり気にしてないよ、ボクだけの被害で済んでるから」
「気にすんなって言いたいけどそれは気にしろ、お前のことだぞ」
「ユウが気にしてくれるもん」
「もんじゃないが」
お前は俺のことをなんだと思っているんだ?
「たった一人の、大切なユウ?」
「お前もユウだし、日本を探せばユウは居る」
「そういうことじゃないんだけどなー」
……こいつが居ると日常って感じがするな。
「ま、何はともあれおかえり、ユウ」
「……うん、ただいま、ユウ」
とか何とか、久しぶりに他愛無い会話を弾ませていたというのに……!
「えへへ……ユウ、ユウ……♡」
「待て待て待てっ! 落ち着けユウ!」
「今はユエがいいなぁ……だめ?」
「だめだよなぁっ!?」
なんでこいつに、しかも自室で押し倒されなきゃならないんだぁっ!!
遊くん視点で基本お話が進むので、ルビを振ってない地の文のユウは基本彼(彼女)のことだと考えてもらって構いません