俺の友達が世界を救った上に女の子になって帰って来たんだが 作:虚憂
「いっ……てぇ……」
目が覚めたら、俺の家の天井だった。
いやまあ当たり前なんだけど。
「あれ……俺何を」
激しい頭痛と共に、
「なあ、ユ……あれ、どこだ」
外で鳥の囀る声が聞こえてくるし、朝なんだと思う。
なんかあいつも泊まるとか何とか言っていたことをギリギリ思い出して、どこかで寝ているであろうあいつを探す。
……のだが、部屋のどこを探しても見つからない。
「すぅ……んん」
「……?」
「てか寒……え、何で俺裸……?」
つーか昨日風呂入ったっけ、あ、ダメだ入ってない。
「ユ……ゔぇっ!?」
布団をめくったその場所には、あられもない姿の彼女の姿。
「んな、ちょ、え……」
「ん……寒い……ユウ、布団取らないでぇ……」
当人はなんか呑気なことをほざいているが。
こいつも裸、俺も裸、そして周りに散らばった俺達の服。
あっ。
「ユーウー? 聞いて……んえ?」
「ユエ……」
「あれ、なんでユウはだ……か……」
……そこからは、ご近所大迷惑であろう大騒ぎだったことは言うまでもない。
■■■
「しにたい」
「俺はなんてことを……!?」
よくわからん勢いで元男の幼馴染と一線超えたってかぁ?
……誰にっ! どうやってっ! 説明すんだぁっ!?
「ユウ、ごめんなさい、ボクがとんでもないこと、しちゃったせいで」
「いやお前だけの責任じゃないから、絶対気に病むな」
気に病むんだろうけど、こんなこと言ったって病むのがお前だけど。
これに関してはマジでお前だけの責任じゃない。
「でも、ボクがあんな、お、押し倒してっ……!」
「言うな俺まで恥ずかしいだろ」
今思い出してもあの時のユ……ユウはやばかった、魔性の女って異能持ってても不思議じゃないと思うくらいには。
「とにかく、風呂行ってこいよ、俺はこの部屋の片付け先にしとくから」
「あ、うん」
俺達の身体ベッタベタだからなー、ナンデダロウナーアハハハー。
はぁ。
「あ、ユウ……」
「ん、どした」
ユウがこちらを見て小さく狼狽えている。
なんだ、何か思い出してしまったのか?
「いや、えと、その……首」
「首?」
「あぅ……なんでも、ないっ」
「?」
俺の首が何かあったんだろうか。
……触るだけじゃどうにもわからんな、風呂入るときにでも確認しよう。
それからしばらくは、色々なものを仕分けていたのだが。
「力入らねー……もしかして水も何も取ってなかったのか?」
ユウにも風呂上がったらすぐに何かしら水分を取らせないとだな、倒れちまう。
……。
ダメだ、これ以上昨日のことを思い出すのは辞めておこう。
「ベッドもすっごいことなってら」
先程まで二人で寝ていたその場所は、どちらのものかもわからないあれやこれやでまぁ大変なことに。
洗濯しなきゃなぁ。
「ゆ、ユウっ」
「おお、もう上がって……っておまっ!?」
ちょい開きにされた扉から見えるユウは、先程と変わらぬ姿で……ってああ着替えぇっ!?
「風呂場の入り口側の棚の一番上! そこにタオルとか入ってっから!」
「うん、ごめん……」
「……謝んなくていい、どうせ俺も後で入るし、着替えも持ってくからよ」
……。
とりあえず俺は昨日のを一旦着ておくべきか、多分。
「これ以上間違いを起こしちゃなんないもんな……」
■■■
「……」
「……」
あの後何事もなく俺がシャワーを浴び終わって。
俺とユウはリビングの机を挟んでお見合い状態だ。
「なあ」
「うん」
「えっと……」
どうしよう、かける言葉が見つからない。
あれだ、シャワー浴びてより一層冷静になったら余計に恥ずかしくなって来て……。
なんであんなことしてしまったんだ、と。
洗面台で俺の首元に残った噛み跡とかマジで言いようのないもどかしさに襲われて辛かったし。
「……しにたい」
「死ぬなよ」
「あぅ」
とは言えこいつに死なれる訳にもいかないのでそこだけ釘を刺しておく。
仮にも世界を救ったらしい
「そうゆうのずるい」
「何がだよ」
「何もかも、だよー……」
ええ。
そりゃあ俺は基本的に楽しい方が良いしそういうこと言うんだけど、それをずるいって言われてもな。
「とにかく何か食べようぜ、腹減ってるだろ」
「あ、うん」
冷蔵庫何かあったかな、と。
はて、ぜーんぜん買い出しとかした覚えないぞー?
「うげ、何もねぇ」
そうだ、一昨日片付けたんだったわ。
んーとなると。
「なあユウ」
「ん、なーにー」
うゆぁーと悶えたり奇怪な行動を繰り返しているユウ。
何してんだとは問うまい。
「レトルトとかカップ麺で済ますか、買い出し行ってなんか食材買うか、どっちがいい?」
「買い出しー」
「あいよ」
正直そうなるとは思ってたとも、こいつ割と舌が肥えてるから。
「ユウの料理はせかいいちー」
「アホ、ただの趣味で世界が取れてたまるかよ」
「あいたっ」
その趣味しかやってないとかめちゃくちゃ凝ってるタイプなんだったらわからんでもないが、生憎俺は多趣味かつ飽き性でね。
「色々やってるよねぇ」
「広く浅くがモットーだからな、親父共々」
遊び呆ける程でもないが、結構な手間暇はかけてる筈。
……まー長続きしない所為でまともに見せられる趣味家庭科目くらいなんだけど。
「にしてはユウの部屋って片付いてるよね、何で?」
「散らかす暇がないほど来訪する誰かさんがいるからなぁ俺は」
親父の部屋は魔窟だぞ、入るべからず。
あんま物置いたってこいつ来るしという結論に至るから、基本棚にしまえたりする程度の小物しか買って来ねえよ。
「ふーん、傍迷惑な男も居たもんだねぇ」
「そんな男でも暇つぶしには助かってたさ」
「……そっか」
ああ、本当に。
こいつが来る時は暇を潰すことを考えなくて済むからありがたかったんだけどな。
■■■
「食べたいものとかあるか?」
「カレーライス」
「即答かよ」
しかもリクエスト聞いた時毎回カレーだよなお前な。
手頃だし余っても持ち越しに困らないから作る側としてはありがたいんだけど。
「それで良いのか?」
「うん、問題ない」
「ならいいけど」
作るものが決まったのならあとは簡単。
必要な食材とおまけを買ってレジに並ぶだけ。
「さぁて、さっさと」
「見つけましたぁっ!」
「んげ」
「あ」
ユウのよりも一回り高い声が響く。
この声は……。
「出たな妹」
「出ますともケン兄! おに、お姉ちゃんを返してもらいますよっ!」
「レーちゃん」
このいかにもツンツンしてそうな黒猫は
カイロもびっくりな発熱機構である。
「お前の姉貴はすぐにでも返却するさ、今はその準備中」
「え」
「買い出しですか?」
「おう」
「もしかしなくてもカレーですよね?」
「おう」
よくわかったなこの猫……って冗談はさておき。
いつもいつもおんなじもの作ってりゃそりゃあ予想もしやすいだろうと。
「お前も食うんだよな?」
「……はいっ!」
「おーけー、思う存分こいつに張り付いてていいぞ、食材買ってくるから」
「えちょっ」
仕方ないだろ、こいつ生粋のお兄ちゃんっ子だぞ。
飼い猫は飼い主にしか懐かないんだからさ。
「当然ですっ」
「あう……」
「はっはっは、構ってやれよー」
「うー、うらめしやー……あつい……」
あれがご近所で有名な優等生兄妹の実態だってんだから面白いよな、バレバレの事実だけど。
ただただ、兄に相応しい妹で居たいと猫の方が頑張ってるって微笑ましい光景なんだし。
……過剰過ぎて兄の方はちょっと疲れ気味だったりするんだが、それでも拒んだりはしないんだから相当仲睦まじいぞあいつら。
「……さて、おまけは何買って行くかねぇ」
またたびでも買ってやろうかな。
ブラコン(シスコン)猫妹参上