俺の友達が世界を救った上に女の子になって帰って来たんだが   作:虚憂

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ユウメイジン

「アイドルのライブに行く?」

 

「うん」

 

 

 今どき珍しい学校の屋上で弁当を食べていると、ユウがそんなことを言い始めた。

 

 

「ああそう良かったな、いってらっしゃい」

 

「え」

 

「俺アイドルには興味ねぇから」

 

 

 最近だとVtuberとかも人気なんだっけな。

 あまりそういうのに触れてこなかったもんだから疎いんだけども。

 

 

「ひどい、ユウにはひとのこころがない」

 

「何が?」

 

 

 何が何でもそれは言い過ぎだろ。

 俺お前の予定を祝福しただけなんだが?

 

 

「部の皆と行くんだよぉ……」

 

「へぇ」

 

 

 部、というのは要するに正義の味方してる集団のこと、世界を救ったメンバーだ。

 ユウを除いた全員が女子で構成されていて、皆が皆ユウと共に死線を(くぐ)り抜けて……まあ、うん。

 

 男女間で育まれるのは、必ずしも友情だけとは限らないってことだけ言っておこう。

 いやはや、仲睦まじいことで。

 

 

「何でまたそんな修羅の地に踏み込むことになってんだ」

 

「修羅……うん、修羅の世界……あう」

 

「しっかりしてくれ」

 

 

 どうしてこいつがこれほど憔悴しているのかというのは言うまでもないだろう。

 恋のいざこざである。

 

 はい。

 正直巻き込まれなくて良かったなとは思っているところであります。

 

 

「わかる? 皆と雰囲気よく過ごしたいだけなのに、何でか最終的に睨み合いになってる部外者の気持ち……」

 

「部外者じゃねぇだろ」

 

「ほとんど部外者みたいなものじゃん、あそこまで行ったら」

 

「あー……」

 

 

 この件についてはよく相談されてはいるものの、門外漢ゆえに解決策は浮かばずじまい。

 俺もこいつも異性をどうこう思う気持ちが薄いからなぁ、最初から結果は見えていたということだ。

 

 

「今度のライブ、部長一行ってことで招待されてて」

 

「富豪のパイプか」

 

「いつもの」

 

 

 こってこてのお嬢様である部長殿は顔が広くってなぁ。

 こいつ含む部員は散々振り回されていた気がする。

 

 

「だからって俺を巻き込むなよ、マジもんの部外者だから居心地悪い」

 

「無理、そうでもしないと心が持たない」

 

「お前なぁ」

 

 

 俺も何かしらの部活に入って物理的に不可能にしてしまおうか。

 ……。

 

 無理だな、すぐに飽きる。

 

 

「妹はどうした」

 

「レーちゃんは後輩だから」

 

「立場的に勝てないと」

 

 

 恋心でも立場には負けるかあの猫被り。

 悔しがるのが目に見えて浮かんでくるじゃねぇか。

 

 

「だからお願い」

 

「断る、ほんとに嫌なんだっての、空気悪くしてそうでさ」

 

「むぅ……」

 

 

 わかるか? あのどう扱っていいのかわからない反応された時の俺の気持ち。

 誘われたからって軽い気持ちで遊びに行くもんじゃないってのを身に沁みて感じたぞ。

 

 

「うらぎりものー……」

 

「裏切ったんじゃなくて危険を回避したって言ってくれ」

 

「ボクは回避できてない」

 

「諦めろ」

 

「……末代まで祟る」

 

「成仏してくれ」

 

 

 南無阿弥陀仏。

 つかしれっと死んでないかお前。

 

 

「いつか背中刺されて死ぬ気がしてる、後ろこわい」

 

「誰かに告れば?」

 

「好きな人とかいないんだけど」

 

「じゃあダメか」

 

 

 あの小競り合い加減じゃああちら側から告られるのは当分無理筋だろうし。

 悪い奴らじゃないんだが、この通りユウが消極的なもんだから。

 

 

「ユウぐらいのがちょうどいい」

 

「誰彼構わず助ける癖にそういうとこあるよなぁ」

 

「? 人助けはいいことだし」

 

「だからそういうとこだぞ」

 

 

 裏表なく助けに行くのに、あっちから来られると尻込みする。

 タチ悪いわぁこいつ。

 

 

「疲れるし」

 

「その疲れることをお前がやってる自覚あるか?」

 

「……ひ、人にやられて嫌なことをするのが善行だし?」

 

「どんな野蛮な国の善意だばーか」

 

 

 ……そんなんだから世界まで救っちまうんだろうけどなぁ。

 第三者としては複雑だぜ、規模がデカ過ぎる。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「ねえ」

 

「……」

 

「アカミネユウ、ってのがどこにいるのか知らない?」

 

 

 ……規模感がデカすぎて、変なのが俺にまで寄って来るんだからな。

 

 

「誰だよあんた」

 

「んー、ワタシのことはどうでもよくないかな」

 

「よくないだろ」

 

「だよね」

 

 

 妙なこの女は何者なのか、何故ユウのことを俺に尋ねて来たのかとか聞きたいことは大いにあるけども。

 

 

「あれ、今はアカミネユウじゃないんだっけ」

 

「……」

 

「まあ別にいいや、とにかくアカミネユウのこと知らない?」

 

「知らない」

 

 

 今のユウがユウじゃないことを知ってるような言い方だし、あからさまに怪しい。

 さっさと逃げちまおう。

 

 

「あれ、でもその制服同じ学校の人だよね」

 

「あいつ、去年から学校来てないぞ、今年も顔見てないし」

 

「へえ、じゃあ知り合いなんだ」

 

「クラスメイトだったからなぁ、そりゃあ顔は知ってるさ」

 

「ふーん」

 

 

 ははは、先回りされたな見事によ。

 この逃がしてくれない感じどっかで。

 

 

「嘘付いたり?」

 

「するかよ、顔見てないってのはほんとだぞ」

 

 

 男のあいつの顔見てないのは事実だし。

 

 

白昼霧の世界(ホワイトジャック)

 

「ん」

 

 

 ……霧が、辺りを包み込んだ。

 女が意味ありげなことを紡いだと共に。

 

 

「驚かないんだ」

 

「残念ながら、飽き飽きするほど見慣れてる」

 

「へぇ?」

 

 

 異能の霧、おそらくただの霧じゃない。

 どう動いたものだろうか。

 

 

「じゃあ、これならどう?」

 

「……」

 

黒い皮の下準備(ブラックジャック)

 

「へえ」

 

 

 すごいな、異能って別の呼び方があるのか。

 

 

「解釈の問題だよ、異能なんて思い込めばどこまでも伸びていくんだから」

 

「そりゃあ勉強になった、助かるよ」

 

「ドウイタシマシテ……でいいのかな」

 

 

 らしい。

 よくわからないがそういうことだそうだ。

 

 

遊具匣(オモチャバコ)

 

「それがキミの異能?」

 

「ただの箱だけども」

 

 

 出し入れができるだけの箱だ、どうってことはない。

 

 

「少なくともあんたの異能に比べればみみっちい規模だろうよ」

 

「んー……」

 

 

 ジロジロと俺の箱を見る女。

 なんだ?

 

 

「なんとなくだけど、まだ伸びるんじゃない?」

 

「そうか?」

 

「うん、同年代の直感って奴だよ、ケンドウユウくん」

 

「知ってんのかい」

 

「知ってたよ」

 

 

 なんだ茶番じゃねえか、知ってて近付いて来たんならよ。

 胡散臭ぇなこいつ。

 

 

「個人的にキミのことが気になったからさ、ちょっと遊んでくれる?」

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