俺の友達が世界を救った上に女の子になって帰って来たんだが 作:虚憂
「私の異能でできることは至ってシンプル、白い霧は相手を見透かして私を隠すし、黒い皮は私を強くする」
「へー」
通りで吸っても吸っても晴れちゃくれないのか。
変に能力が盛られてない所為なのか燃費がいいらしい。
「シンプルさで言えばキミの異能は相当上澄みなんじゃないかな」
「……まあ使っててバテた覚えはないな」
「でしょ?」
こういう系の異能には2種類の使い手がいると個人的には思ってる。
本体の強さに自信を持ってる奴か、そいつの境遇的に己が戦う必要がなかったのか。
異能でやってることがサポートアイテムだからな、必然的にそうなっていくのだろう。
「本体が強い奴は厄介だから困る」
「キミが言うの?」
「俺はもう満身創痍だよ」
俺の身体には、あちこちに切り傷が刻まれている。
どれもこれも女の攻撃を避けられなかったが故の負傷だ。
「手負いの獣ほど怖いものはないし」
「見ての通り攻撃手段がねぇんだ」
「ふーん?」
俺自身はそこまで戦いたいと思ったことはないし、何よりユウがいたからな。
あいつのカバーをすることの方が重要だった。
「でも、諦めてないんだ」
「……はは」
まあそりゃあ、死にたい訳じゃないんだから。
術はあるとも。
「私ね」
「ん」
「そういうギラギラした目をしてる相手が一番怖いと思ってるし、相手にするのが楽しいとも感じてるんだ」
「タチ悪ぃ」
「知ってる、だからこんなのまで武器にする」
そうして黒い異能が形作るのは……カミソリ、床屋とかで見る折り畳める奴。
「いい性格してんな」
「キミに遠距離攻撃したらダメなのはわかったから、ね?」
「ナイフで一思いにサクッとしてくれよ」
「お断り、苦痛に歪むキミの顔も見てみたい」
「とことん終わってら」
俺のことをギラギラした目をしてるとか表現したよなこいつ。
こいつの方がよっぽどギラギラした肉食獣だと思うんだけど、そこら辺どうなんだ。
「じゃあ、地道に剃っていくから頑張ってね、ケンドウユウくん」
話は終わりだと言わんばかりに、黒い異能を纏ってこちらに詰め寄ってくる女。
黒い方は己を強化する……言葉をそのまま解釈するんなら、身体能力とか防御力とかを底上げするって感じだろうか。
……。
まあ、関係ない。
「剃らせねぇよ」
「へえ?」
「蒐集」
不規則な動きで近寄って来ていて、俺の反射神経では捉えることはできそうにないが。
あちこち動き回ってくれているのなら問題ない。
「俺の箱は異能系のものを納めることができる」
「知ってる、その範囲もそこまで広くないんでしょ」
「まぁな、箱からそう遠い距離は不可能だ」
大体2メートルくらいの距離まで来ないと蒐集は発動しなかったっけな。
それに俺が、
「そこで問題だ」
「なに?」
「俺の箱、今ははたしてどこにあるんでしょう……か?」
「……! しまっ」
「遅い」
俺の近くでふよふよ浮いてない箱は、吸い取る本体の癖に逆に引っ張られて行くからな。
そんな不規則に動いてんなら、引っかかったりするかもなぁ?
「んな」
「今だっ」
目論見通り、足に箱を引っ掛け体制を崩す女。
「……! それくらいならっ」
「ナイフが残ってくれると思うなよ」
「っ〜! やっぱり強いじゃんキミ!」
黒い異能が箱に吸収され消えてゆく。
俺は俺を攻撃手段がないとは言ったが弱いと皮肉った覚えはない。
何らかのやりようがあるんだとお前だって理解してた筈だろ。
「おらっ!」
「っ」
そこからは男女のもみくちゃで……。
異能なしの純粋な力が求められる。
「取り押さえたぞ、絵面は終わってるが」
女の両手を押さえて、上からのしかかる様な状態。
どう見ても俺が襲ってる絵面だ誰も来るなよ実際は逆だ。
「あは、襲っちゃう?」
「その間に首掻っ切られそうだな」
「私初めてだから優しくしてね、どーてーくん」
「……俺は初めてじゃねぇよ、生憎だが」
「へぇ?」
謎の勢いで元男とヤることやってしまってんだよなぁ。
マジで。
「意外だね、身持ちは固そうに見えたのに」
「俺もそのつもりだったんだが、結局は男だったって訳だ」
「……えっち」
「何とでもいえ」
さて、あとはどうするか。
ユウを呼んで別の方法で取り押さえてもらうか、それとも。
「……健堂くん?」
「っ!?」
俺を呼ぶ声に振り返ると、そこにはおんなじ学校の制服を来た女子生徒。
……やばい、終わったかも知れない。