学園都市ってどこもクソだな【分割版】   作:あしゅけーね

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7月20日13時頃

 

 

 ◈三人称→天織有栖

 

 

 図書室の中というのは意外と暇なもの。読む本が絞られたら、の注釈がつくけれど。一年の時間を使って面白そうな本は粗方読み終わってしまって、あとは難しいお話ばかり。まだ読めていない本は文字や図形がびっしり書き込まれた、開いただけで眠くなる本。常盤台の授業でも扱わない、お姫様には必要ない知識。

 

「ねぇ、聞こえてる?」

 

 なんとなく、近くの椅子に座って読書をしている女の子に声をかけてみる。

 嘘。ホントは昨日のことがあったから少し期待していた。だけど予想通り返事はなくて、少し悲しくなる。“騎士”様が迎えに来ない方が良いと思ってるけど、寂しいという感情はそれと矛盾しないから。

 

「お腹空いたなぁ……」

 

「はい、どうぞ。少し遅れてしまってごめんなさい。()()はちょっと用事が出来てしまったの」

 

 呟き声が聞こえたのか、それともたまたまタイミングが良かっただけなのか、差し出されたのはバスケットに入ったサンドウィッチ。卵やハム、レタスなど色々な具材を挟んだ一口大のサンドウィッチがいくつも並んでる。

 

「ううん、大丈夫。ありがとう、リリウム*1。作ってくれたんだね。おいしいよ」

 

「大切なアマリリスのためですから、これくらい」

 

 サンドウィッチを作って持って来てくれたのは、常盤台中学生徒会現会長宿里(やどりり) 海未(うみ)。常盤台中学の三年生にして、大能力者(レベル4)の実力者で、生徒会選挙で圧勝できるくらいの人望があって………“御伽の姫(アマリリス)”を守る“竜の魔女(リリウム)”。

 

「今日はなんだか嬉しそうですね。“騎士”が見つかりましたか?」

 

()()()()()。でも、久しぶりにリリウムの顔が見れたから」

 

 美琴のことは、きっと言わない方が良い。言ってしまえば最後、部分的にとはいえ美琴は“騎士”の役割を羽織らされる。そうなってしまえば、“竜の魔女”は“騎士”を殺しちゃう。

 

「最近は顔を出せなくてごめんなさい。生徒会の仕事が忙しくて。だけど、貴女の事を一度も忘れたことはないですよ」

 

「知ってる。たった一人の家族だから」

 

 置き去り(チャイルドエラー)*2として捨てられた私たちを拾ってくれた孤児院はもうなくて、私とリリウムだけが残された。気付いたら書類上だけは家族がいて、こんな素敵な学校に通えるようになっていたけれど、私の家族がリリウムただ一人なのはずっと変わらないよ。

 

「………そうですね。()()()()───」

 

「宿里様、残念ながらもう戻らなくては」

 

「忙しすぎて嫌になりますね。ではアマリリス。夏休みが明けたら席を譲れますから、そうしたら貴女を連れ出してくれる“騎士”をゆっくりと探しましょう」

 

「待ってるね」

 

 なにを言ってるんだろう。私は、ここから出たくない(出たい)のに。

 名残惜しそうに去っていく一房の金の尾を見送れば、入れ違いで入ってきたのは肩までしかない茶髪の子。まさか翌日すぐに来るとは思ってもなかったな。

 

「美琴?」

 

「いつでも遊びに来てって言ったのはそっちでしょ。何よその意外そうな顔は。はいこれ、差し入れ」

 

 今度は焼きそばパンみたい。リリウムが作ってくれたサンドウィッチほど整ってはいないけど、おいしそう。リリウムはいつもサンドウィッチとか、おにぎりとかしか持ってきてくれないから、初めて食べるなぁ、焼きそばパン。

 

「今はお腹いっぱいだからまた後で食べるね。ありがとう」

 

「お腹いっぱい?もう食べたの?」

 

「うん」

 

 まだ幾つかサンドウィッチの入ったバスケットを見せつける。少ししか食べてないけど、もうお腹いっぱいになっちゃった。

 

「これ、バスケット……?一体誰が」

 

「“竜の魔女”だよ」

 

「竜の魔女……?」

 

「うん。“御伽の姫”を、部屋に閉じ込めた魔女。でも悪い魔女じゃないよ」

 

「待って、アンタはなんで閉じ込められてるのか知ってるの!?犯人まで知ってて、かばうっていうの!!?」

 

 だって、リリウムは悪い魔女じゃないから。確かにちょっと押しが強いところがあるけれど、それも(家族)のことを想ってるからだし。

 

「私のためだから」

 

「アンタの……ため?」

 

「見てて」

 

 ゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ、探るようにして図書室の入り口に向かう。まず最初は立ちくらみ。一歩進むごとに目眩がして、吐き気が、頭痛が襲い、呼吸も苦しくなってくる。そして一筋の赤い雫が垂れてきた。

 

「ちょっと!鼻血出てるじゃない!!ほらこれ使って───」

 

 美琴の鼻を一筋の赤が流れていく。美琴だけじゃない。周りで読書をしてた子も、勉強をしてた子も、お喋りをしていた子たちも皆、同じように鼻血を出していた。

 

「“御伽の姫”は病弱なの。だから部屋から出られない。ここから一歩でも動いたら、今度は血を吐いちゃうかも。そして“御伽の姫”の傷や苦しみは周囲に伝播される」

 

「アンタ、さっきからなにを言って───」

 

「『御伽の姫と竜の魔女』っていう童話、聞いたことない?」

 

「……ないわね」

 

 それは、孤児院でリリウムが読み聞かせてくれた本。リリウムのお気に入りのハッピーエンド。

 

「あるところに病弱で、外に出れないお姫様がいました。

 

 王様はお姫様が寂しくないようにと、竜の魔女に本とお友達の竜がいる魔法の小部屋を作るようにお願いします。

 

 しかしあるとき騎士が魔法の小部屋に忍びこみ───えっ?」

 

 物語の登場人物は自分の結末を知らない。だから、メタ的な知識を持っていたとしても、役割を羽織った人は自分の物語がどんなものか他の人には伝えられないことになってる。()()()()()()()()()()()()()

 

 私は“御伽の姫”が閉じ込められてる理由しか話せないはずだった。なのに、“騎士”のところまで話せるようになっているということは、“騎士”が忍び込んだと判断されたってことになるのかな。

 

「美琴、リリウムに───宿里海未に何か言われた?」

 

「宿里……ああ、生徒会長!さっきすれ違ったとき、このあと生徒会室に来るよう言われたわね。……まさか!?」

 

「うん。私をここに閉じ込めたのは“竜の魔女”───リリウムだよ。生徒会室、行っちゃダメだからね」

 

「怪しすぎるし行かないわよ」

 

 バンっ、と音を立てて図書室の扉が開かれる。図書室の中は基本的に静かだからその音はよく響いたし、それに吃驚(びっくり)したのは私だけじゃなかったみたい。一切のざわめきがなくなって、図書室が真夜中のような静寂に包みこまれちゃった。

 

「御坂様!!!」

 

「あっ、ガオちゃん*3

 

 タイミングよく美琴に声をかけて来たのは、生徒会副会長のガオちゃん。入学式の日に声をかけてくれた良い人。でも、そのせいでリリウムに“竜”の役割を被せられてこんな大変なことをやってる。本人が楽しそうだからいいのかな。

 

「宿里様から伝言ですとも」

 

「伝言だぁ?言ってみなさいよ」

 

「『来れなくなったのは残念ですが、“騎士”は貴女でなくとも良い』だそうです。何のことかさっぱりわかりませんけど、確かに伝えましたとも。それでは、まだやることがありますので!」

 

「ガオちゃん、出口は反対側だよ」

 

「おっと失礼、ではまた!!!!」

 

 相変わらずの方向音痴っぷりだね。学校の中で迷った話は()()()()()()けれど、まさか図書室の中で迷うなんて思わなかったな。今日はお友達のメイドさんもいないし、ここに来るまでも迷ったのかな。

 

「騎士は私でなくとも良い……?」

 

「ねぇ美琴、黒子って今日は一緒じゃないの?」

 

 ふと疑問に思ったことを聞いてみる。昨日は美琴の隣から絶対に離れないって感じだったけど、今日は姿を見てないのが不思議だったから。

 

「今日は風紀委員(ジャッジメント)の活動だかなんだかで朝からいないわね。でもあの子、アンタのこと認識できてなかったじゃない」

 

「黒子って風紀委員(ジャッジメント)だったんだ。それ、大丈夫?……じゃなくて、風紀委員(ジャッジメント)なら書庫(バンク)の情報が見れるよね。“騎士”は私を認識できる人のことだから、書庫(バンク)で私の情報を見た場合も、当て嵌まったりするんじゃないかな」

*1
Shadowverseの才気学園編に登場するキャラ

本作では宿里海未という名前になってる

原作よりだいぶマイルド

*2
保護者が入学費のみを払って子供を学園都市の寮に入れたあと行方をくらます行為

要するに捨て子

*3
常盤台中学二年雅王院(がおういん) (つかさ)

レベル不明の『感応反射(リフレックスアンサー)

現生徒会副会長であり、夏休み明けの生徒会選挙では生徒会長の座を狙う

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  • 両方あると嬉しい
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