学園都市ってどこもクソだな【分割版】   作:あしゅけーね

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2話投稿1話目


7月23日16時頃

 

 

 ◈天織有栖→御坂美琴

 

 

「有栖……?」

 

「近付かないでください」

 

 ドラゴンが皆元に戻ったから、決着がついたのだろうと屋上に駆けつけてみれば、誰かを介抱する宿里生徒会長が。介抱されている人物は影になって見えないけど、多分有栖だ。

 

「『零距離痛(ストレンジペイン)』によって、天織有栖の傷は周囲に伝播されます。貴女まで動けなくなるわけにはいきません。だから近付かないでください。貴女の後輩にも、そう伝えるように」

 

「何か手伝えること……って、アンタもボロボロじゃない!!」

 

「後で能力を『肉体再生(オートリバース)』に上書くので問題はありません。それより、誰も近づけないことを徹底して、ついでに有栖の身体を覆えるくらい大きな布を持ってきてください。『零距離痛(ストレンジペイン)』は見なければ発動しません」

 

 大きな布……カーテン!それくらいならすぐに取ってこれる!!

 

「待ってて、すぐ取ってくる!!」

 

 階段を駆け下り、目についた教室へ。フックをいちいち外している時間はないから、電撃でカーテンレールをへし折って回収する。

 

「これどうやって渡そう」

 

 見たらダメってことは近付けないし、生徒会長に取りに来てもらうのもダメよね。投げて渡すのもあれだし……

 

「お姉様、一体何をなさって?流石に今回の件とは無関係な校舎の破壊は庇いきれませんわよ」

 

「黒子!いいところに来たわね。人命救助よ人命救助。ついてきなさい」

 

「ちょっ、お姉様!?」

 

 さっき屋上の入り口からは有栖の身体が見えなかった。そこからなら黒子の空間移動(テレポート)で渡せるし、本当にいいところに来た。

 

「取ってきたわよ」

 

「……ええ、これであれば十分です。できれば綺麗な包帯が欲しいので白井さん、保健室から取ってきて頂けませんか。道中の負傷者の救護もお願いします」

 

「……わかりましたわ。ただし、全て終われば警備員(アンチスキル)に突き出しますわよ。あとこれ、風紀委員(ジャッジメント)支給の止血剤ですの。使ってくださいまし」

 

 黒子が『空間移動(テレポート)』で消えた。この中で一番足が早いのは黒子だから、適任だろう。

 

「右脚の傷が一番深いです。まずはそこから。『零距離痛(ストレンジペイン)』の影響下にある私にも同じ傷がありますから、こちらを見ていただければ手当ては可能でしょう」

 

「脱がなくていいから傷の位置だけ説明しなさい!!止血するから!!」

 

 生徒会長の指示する通りの位置に余ったカーテンを引き裂いて作った簡易的な包帯を結び止血をする。本来は綺麗な包帯の方がいいんだけど、黒子が持ってきてくれるまでの応急処置的に。

 

「てか、アンタの能力で止められないわけ。図書室から出たときは止まってたわよ」

 

「無理です。『結末創造(ハッピーエンダー)』は意識のある人間にしか作用できません。それに、『結末創造(ハッピーエンダー)』でも抑えきれなかったからこその“呪い”なのです」

 

「はぁ?どういうことよ!?」

 

 生徒会長についた傷は有栖が図書室から出ようとしたときに発症する“病気”と同じ……というか、浅いけれど似たような傷が有栖を図書室から引っ張り出すときに私にもついた。だったらこの怪我は『結末創造(ハッピーエンダー)』由来じゃないの?

 

「“御伽の姫”はアマリリスです。役を強固に結びつけるために“御伽の姫”の設定とアマリリスの境遇を近付ける必要がありました。私だって、“御伽の姫”を病気になどしたくなかった。ですが仕方ないでしょう。彼女は生まれついての病弱だったのですから。これは、彼女の元々の持病です」

 

「ざっくり斬られたみたいに身体が裂ける病気なんて聞いたことないけど」

 

「ええ、私もそう思っていました。病気と言ったら熱や咳が出て、寝たきりになってしまうようなものだと。だから『結末創造(ハッピーエンダー)』で上書いてしまえば、そういった症状に変わって治療しやすくなるのではと思っていたのですよ」

 

 能力を用いた治療。すでに結構研究されており、それは『肉体再生(オートリバース)』といった治療向けの能力から、『空間移動(テレポート)』といった一見治療向きでない能力でも試みられている。私だって、筋ジストロフィーという難病の治療のために『電撃使い(エレクトロマスター)』のDNAマップが欲しいという病院にDNAマップを提供したことがある。

 

偽薬(プラシーボ)効果って知っていますか?効果のない薬でも効果があると思い込んで飲めば病気の進行が抑えられるというアレです。『結末創造(ハッピーエンダー)』も究極的には思い込ませる能力ですから。結果としては、図書室から出ようとした時だけ発症するようになりました。誰かに連れられたり、図書室から出てしまえば治まったようですね」

 

 黒子が『空間移動(テレポート)』で連れ出した時も、私が扉の前に連れてった時も、図書室から出た時も治まっていた。有栖の身体が傷付いたのは自発的に出ようとした時と、『結末創造(ハッピーエンダー)』が切れてから。

 

「じゃあ、物語が完遂していたら……?」

 

 もちろん誰かが死んでいいわけないし、有栖だってそれを望んでなかった。私だって全力で止めるだろうし、その結果が今の状況だ。

 

「“騎士”を殺して図書室に連れ戻せていたのなら、おそらく『零距離痛(ストレンジペイン)』もろとも“騎士の呪い”として消え去っていたでしょうね」

 

「それ早く言いなさいよ!!?」

 

 それをきちんと言ってくれてたらもっと別の、話し合うとかの方法で……あれ?有栖が前に閉じ込められた理由について「私のため」って言ってた気が……。まさか、()()()()

 

「まあ目的の一割程度でしたし、仮に解決しなかったのなら死ぬ気で解決策を見つけますよ。それこそ、誰を犠牲にしてでも」

 

「残り九割は……?」

 

 絶対ろくなものじゃないけど、怖いもの見たさの好奇心というのは抑えきれないもので。

 

「アマリリスと()()()()()()ハッピーエンドを迎えて───」

 

「もういいもういい、聞いた私がバカだった」

 

 猫が殺された。思ってた通り、黒子みたいな変態だったわけね。いや、黒子とは少しベクトルが違うけど、黒子以上の変態かもしれない。どのみち風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)に連れてってもらわないといけない類よ。

 

「これで粗方血は止まりましたね。あとは病院等の医療機関で傷を縫合してもらうしかないのですが……」

 

「『零距離痛(ストレンジペイン)』が厄介ってわけね」

 

 どんな腕のいい医者も人間だ。痛みで針が鈍ることもあるし、何より医者が傷付き続けたらやがて有栖の治療ができるものがいなくなってしまう。

 

 『零距離痛(ストレンジペイン)』……痛みや傷を周囲に伝える能力。大能力者(レベル4)はある強力な能力だけど、有栖自身はそれのせいで苦しんでる。……いや、待った。能力が障害となるのなら───

 

「一人、心当たりがあるわ」

 

「その方は……?」

 

「さぁ、素性は知らないわよ。でも───」

 

 思い起こされるのはツンツン頭の男子高校生*1。今何処で何をしているのか、どこに住んでいるのかは不明、なんなら名前も知らないけど、会うのは簡単。

 

「───アイツは困ってる人が居ればどこからともなく現れるわ。頼んでないのにね」

*1
とある高校の一年生上条(かみじょう) 当麻(とうま)

どんな超常も打ち消す右手『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を持つ

とある魔術の禁書目録(インデックス)の主人公

美琴が一方的にライバル視している

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