ひか姉は受けだと良いとされ、その無自覚天然な性格で東京の周りの女の子を堕としまくってたらなお良いとされる。

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のんのんびよりの百合が見たいねん。ひか姉の百合はもっと見たいねん。


ひか姉に彼女が出来そうな雰囲気を感じ取ってそれを食い止めるこのみ姉概念

 

 9月。世間一般的にはお月見の季節であり、ここ宮内家も周りと違わずお月見の準備を行っていた。

 周りが団欒を囲むみながら準備を進めていく中、手伝いに来ていた富士宮このみは、ひとつ不審に思っていることがあった。それは……

 

(ひかげちゃんの服装……あんなにお洒落だったっけ……)

 

 ひかげの服装がやけに良い感じなのだ。なんだか垢抜けた、都会に染まってしまったかなようなファッション。

 

(ひかげちゃんといえば……)

 

 ツートンカラーのど真ん中にでかでかとした星がプリントされた服。和訳しようがしまいがどっちみち微妙な印象を受ける英単語がプリントされた服など、正直言って、これまでのひかげの私服センスには、一言二言物申したくなるような所が多々あった。

 

(だけど今は……)

 

 もう一度ひかげの方を向く。今までの私服とは打って変わって、彼女の魅力を引き立てるような可愛らしい服装。派手すぎず、かといって地味すぎる訳でもない、非常に調和された印象を受ける。

 

 しかし、正直ひかげ自身があの服装をチョイスしているとは考えづらい。この前の夏休みまでは昔の服装のまんまだったし、短期間の間でファッションセンスを劇的に向上させたということも現実的ではないだろう。そうこのみは結論づけた。

 

 と、なると……

 

「ひか姉ーひか姉ー。今日の服装、いつもよりオシャレなんなー」

「あ、わかります!清楚な感じでひかげさんの良さが際立ってるっていうかー」

 

「あ、本当だー!これってひかげちゃんが自分で選んだのー?」

 

 会話の流れに乗って気になっていたことを聞き出す。このみの巧みな話術がここで炸裂。

 

「あ〜、やっと気づいたー?……じ、つ、はー、友達にコーディネートして貰ったんだよねー!"東京の"!」

「東京!……はー、やっぱり都会に住んでいる人はハイセンスなん」

 

 瞬間、このみの体の動きが止まる。

 

(……ふ、ふーん。そうなんだー。昔はいつも私がコーディネートしてあげてたのに、私に聞かずそっちの友達に聞いたんだー。ふーん)

 

 幼い頃からひかげのコーディネートを担当していたこのみにとって今の言葉は断じて聞き捨てならない言葉であり、非常に許しがたいものであった。無論、全くもっての筋違いの怒りなのだが。

 

「へー。その友達って、春風ちゃんのこと?」

「いや、別の友達。高校で話しかけてくれて、仲良くなったんだよね」

「そ、そうなんだ……」

 

 ひとまず春風ではなかったことに安堵するこのみ。このみにとって、ひかげを攻略していく上で春風の存在は最大の障壁と言っても過言ではないのだから。

 

(やっぱりルームシェアって関係性はズルいなぁ……。私がひかげちゃんとルームシェアしたら、あんなことしたりこんなことしたり……)

 

 ……プルルル、プルルル。……妄想に耽っているのも束の間、部屋に着信音が鳴り響く。ひかげのスマホからだ。

 

「あ、ごめん電話。ちょっと席外すね」

 

 そう言ってひかげは2階の自室へと向かっていった。

 

「…………よし、私もちょっとトイレ行ってくるね」

 

 そう言ってこのみは立ち上がり、トイレに向かう……フリをして、そのままひかげの後を追っていく。こっそりと、気づかれないように。

 

(もしもひかげちゃんが悪い女に取り込まれそうになっているとしたら、その時は私が食い止めてあげる……!)

 

 ただただ電話がかかってきただけなのだが、そこから彼女はひかげがピンチに陥っていると断定し、彼女なりの正義感の元、ひかげの追跡行為を実行していた。側から見ればそれは下心から成り立つただのストーキング行為にすぎないのだが。

 

 ひかげが部屋に入ったのを確認し、壁にもたれかかる。そのまま壁に耳を近づけ会話を盗聴を……するその前に。

 

「……どうして蛍ちゃんも着いてきてるのかなー?」

「えへへ、私もひかげさんが誰と話しているのか気になって……」

 

 一条蛍。今年の4月にこちらに引っ越してきた小学5年生の少女であり、そしてこの少女も、このみと同じくひかげに好意を抱いている人物であった。

 

 小学生だからと言って舐めてかかってはいけない。このみにとって、彼女は旭ヶ丘分校在学生の中での一番のライバルなのだ。小学5年生らしからぬ知性と実行力で、そして異常な愛のベクトルで幾度となくこのみの行く手行く手を阻んできた。

 

「……まあともかく、今は一時休戦ということで」

「そうですね、ひとまず今はひかげさんの電話内容を聞くことに集中しましょう」

 

 自覚のない異常者二人の間に、絆が芽生えた瞬間であった。

 

「はい、もしもし、どうしたの急に。……再来週の土曜日?あー、その時は東京戻ってるし遊べるよー。……うんうん、じゃあー、それ観に行こ」

 

 一見して普通の会話。おかしな所は見つからない。

 

「……特に何もなさそうですね」

「うん、普通の女子高生って感じ」

 

 特段不審な点はなく、普通の会話だったことに安堵するこのみ。冷静になった後、今自分がしている行為が立派なストーキング行為に当たることを認識し始め、急いで壁から離れようとするが……

 

「……え?お泊まり?私金ないけど……。え、東京ってそんなに安く泊まれるホテルがあんの!?マジで!?」

 

「「!!?!??!!!?!?!」」

 

 爆速で元の位置に戻る。叫び声が漏れそうになった口を抑えながら。

 

「こ、このみさん、この"ホテル"って……」

「……うん、多分……"アレ"だね……」

 

 本当にただのお泊まり会の可能性もあるのだが、既に2人の脳内は別のホテルの可能性で埋め尽くされていた。何故小学5年生の蛍がそっちの方を知っているのかはさておいて、再来週の土曜日、ひかげの純白が汚されてしまう可能性が出てきたことにこのみは焦りを隠せないでいた。

 

「な、なんとかしないと……」

「ですね……」

 

「……ほたるん、このみ姉、さっきから壁にはっ付いてなにしてるん」

 

 隣に立つれんげの存在に気づかないくらいには、彼女らは今起きた事態に衝撃を受けていた。

 

〜〜〜〜〜

 

「いやーお待たせお待たせ。ちょっと長引いちゃったー」

 

 頭を掻きながらやってくるひかげ。そして笑顔で彼女を迎えるこのみだが、心の中は穏やかではなかった。

 

「ひ、ひかげさん。今話してた人ってー……」

「ん?…あ、そう!さっき話した、私の服をコーディネートしてくれた友達!」

 

 やはりか。とでも言いたいかのような表情をするこのみ。彼女の推理力は今現在急上昇中である。

 

「はー、ひか姉春風ちゃん以外にも友達出来たんなー。ウチ、ひか姉が都会に馴染めるか心配だったん」

「余計なお世話だっての」

 

 ひかげの進学した高校は東京にある女子校だ。それも結構偏差値高めの。よって、何かトラブルに巻き込まれたり、良からぬことは起きないはずだとこのみは踏んでいたが……

 

「いやー、なんかさ、クラスの皆がすっごい優しいんだよね。昼飯忘れた時は皆私に分けてくれるし、忘れ物したら貸してくれるし、なんかもういつもお菓子貰ってるし他にも……」

 

(このみさん……これって……)

(うん……間違いなく、狙われている……!)

 

 自分の見通しの甘さに後悔するこのみ。女子校だからと油断していた。都会でもひかげのモテ体質は健在……、いや、都会であるからこそ田舎特有の距離感を持つひかげの魅力にやられてしまったのであろう。

 

「ウチ、ひか姉の高校の生活もっと知りたいーん!」

「わ、私もです!えーっと……そうだ!部活!何か部活とかやってますか?」

「あ、私も気になるー!」

 

 ……とは言ったものの……

 

(……ひかげちゃんは帰宅部だったはず)

 

 ひかげの高校生活の話を引き出すために敢えて知らないフリをするこのみ。"部活とか面倒臭いし疲れるし大変だから家でゴロゴロしていたい"……これが理由でひかげは部活をしていなかった。いかにもひかげらしい理由だなとこのみは思っていたが……

 

「あー、やってるよ。テニス部」

「「テニス!?!?」」

「……のマネージャー」

「「あ、ああ……」」

 

(ビックリしたー。テニス部なんてとこにいたら、ひかげちゃんは格好の餌食になっちゃうけど、マネージャーだったら大丈夫………あれ?)

 

「いやー、マネージャーも友達の頼みで初めは渋々だったんだけど、声援送ったりお茶汲みするだけで良くて、しかも友達増えたりお菓子貰えたりで結構楽しくてさー」

 

((マ、マネージャーの方が危険だ!!!))

 

 衝撃の新事実に混乱するこのみ。もし自分の部活のマネージャーにひかげのような人物がいたのなら。小柄で可愛くて、純粋無垢な笑顔で自分たちの応援をしてくれる存在がいるのなら、それはもう物凄いモチベーションに繋がるだろう。そのまま部内中でひかげに好意が向くのも想像に難くない。

 

「ひ、ひかげさん。もしかしてさっきの友達って……」

「おっ鋭いねー。そ、テニス部の友達」

 

(そういうことかー……。確かに部活の友達と遊びに行って洋服を買いに行くとかありそうだし……いいなぁ……)

 

 東京の友達に対する感情が憎みから羨望に変わりつつあるこのみ。彼女だって好きな女の子と2人きりでデートしたいのだ。最近はご無沙汰であるが故に特に。

 

「ひか姉ー、他にはなにかないーん?」

「えー、他にー?うーん……」

 

 これ以上余計なダメージを受けたくないが、それと同時にひかげの高校生活の実態を知りたい欲もあり、このみは無言で2人の会話を眺める。

 

「うーん……あ。……これはなんでかは分からないんだけど、定期的に告白されてるな……」

「「!!!!??!?!!?」」

「告白!?ひか姉、付き合ってるん、もう付き合ってるん!?」

 

(こ、このみさん……!)

(こ、こここ、こく、告白!?告白って……告白!?)

 

 表情は平静を保ちながら目線で会話する二人。ひかげの口から放たれた衝撃の事実は二人の情緒を破壊するのには十分な威力であった。

 

「ほ、ほんとにひかげちゃん?定期的に秘密を打ち明けられてるとかではなくて……?」

「いや流石の私もここでそんなギャグ言わないって……。手紙だったりSNSだったり直接だったりで、されてる……」

「あ、ああ、あああ……」

「このみ姉!?どうしたん!?凄い表情になってるん!ほたるんも!!」

 

(私がこんなところで縮こまっている間に、向こうはもう既に次のステージに入っていたんだ……。私がもっと早く告白しておけば……)

 

「ひか姉は何人と付き合ってるん?」

「何人って、私のことどう思ってるんだれんげ……」

「あははー、失礼だよれんちゃん。……ち、因みに今までどのくらい告白を……?」

「えーっと………先週は10回くらいは告白されたかな……?」

「「「じゅっ………っっ」」」

 

(いくらなんでもモテすぎですよひかげさん!!!1週間で10回って、どんな女たらしですか!!!)

 

 すこし頰を赤らめながら、気恥ずかしそうに話すひかげ。恋愛に初心なのは昔と変わっていないらしい。

 

「あ、あーでもその前の週は全然少なくて、5.6回とかー……」

(全然多いよ……)

(全然多いです……)

(全然多いのん……)

 

 どっちかというと悪い女はひかげだったのではないか。あまりのひかげのたらしっぷりに呆れかえる3人。

 

「……はっ!もしかして、さっきの友達とも既に付き合ってるん!?」

「「っ!!」」

 

(気になるけど、聞きたくない……!)

 

 これでもし"付き合ってる"なんて言われた時には、正直私には正気を保てる自信がない。隣の蛍なんて返事を聞く前から既に挙動不審になっている。

 

「ひか姉!白状するーん!」

「いや白状するもなにも……別に付き合ってないって」

「……本当なん?」

「いやマジだっての……」

 

 瞬間、このみと蛍の動きが止まる。

 

「じゃあ別の友達と付き合ってるん?」

「だから私のことをなんだと……。はぁ、別に誰とも付き合ってないよ。絶賛フリーの女子高生でーす」

 

 ぐにゃあ。と、背中から倒れ込むこのみ。隣には机に頭からぶっ倒れる蛍の姿も。一先ずひかげに彼女がいないことは確定し、二人の表情には安堵が浮かんでいた。

 

「……あ、じゃあひかげちゃんは今までの告白は全部断ってきたの?」

「え?あー、そうだよ」

「ど、どうしてですか?何十回もあった告白を、全部断るなんて……」

 

「いやー、友達として遊ぶ分には良いんだけど、みんなどうも波長が合わなくて。まあ付き合うんだったら、このみや蛍みたいな見知った人が私はいいかなー……なんて」

 

「「「………………」」」

 

 「こいつマジか」といった表情を浮かべるれんげ。このみや蛍のひかげに対する好意は部外者のれんげですら感じ取っていて、それに全く気づかない姉はとんだ鈍感姉だと今まで呆れていたのだが、更に2人の純情を弄ぶような発言をした姉に対してれんげは若干引いていた。どうせこの発言もそこまで深くは考えていないのだろう。

 

「わ、私、お団子作るお手伝いしてきますー!」

「わ、私も楓ちゃんのとこ手伝ってくるねー!」

 

 そういって各々の方向へと走り出す二人。ひかげの方からは見えなかったものの、れんげの瞳には真っ赤な顔をした二人が映っていた。

 

「一気にいなくなっちゃった……」

「……ひか姉はもう少し、他人からの感情に敏感になった方がいいん……」

 

 首をかしげながらも、れんげと二人で夕飯の時間まで過ごすひかげであった。

 

〜〜〜〜〜

 

 時刻は少し進み、夜9時。夜空には綺麗な満月が気ままに漂っていた。

 

「ねえひかげちゃん」

「何?」

 

 軒下に出たひかげとこのみは二人で満月を眺めていた。

 

「月、綺麗だね」

「そうだなぁ。東京じゃこんな景色見るのなんて無理だから、こういう所は田舎もいいかもな」

 

 団子を食べながら話すひかげ。目の前の満月に見惚れているせいで、背後から回ってくる腕の存在には気づかなかった。

 

「えいっ」

「うわわっ!?」

 

 ドサッ。

 

 後ろから何者かによって引っ張られたひかげは、勢いそのままに背中から倒れてしまった。瞑った目を開いてみれば、そこには満月ではなくこのみが映っていた。

 ぼーっとしていたが、首を振って我に帰るひかげ。

 

「ちょ、ちょっと!この体制は不味いって!れんげにでも見られたりしたら……」

「ねえ、ひかげちゃん」

 

 ひかげの必死な声掛けはこのみの一言にかき消されてしまった。

 

「今から言うこと、驚かないで聞いてね?」

「お、おう……」

 

 ふぅ、と息を吐くこのみ。そして……

 

「私と、付き合ってください」

 

「…………へ……?」

 

「今すぐ答えないとそのままキスするからね」

「ちょ、ちょっと!?少しは考えさせてよ!!」

 

 あたふた抵抗するひかげを無視して顔を近づけていくこのみ。逃げ出そうにも腰をガッチリとホールドされて逃げ出せないひかげは、顔を赤らめながら告白の返事をするかキスされるかを選択するしかなかった。

 そして、唇が触れ合うまであと数センチといった所で……

 

「分かった!言う!言いますから!」

 

 告白の返事が聞ける喜びとキスできなかった不満が入り混じった表情をするこのみ。……そして、その表情には不安も入り混じっていた。

 

「……えっとー、告白してくれたのは嬉しいし、確かに私はさっきこのみみたいな人と付き合いたいって言ったけどー……」

「うん」

「やっぱり、急すぎるというか、驚きで上手く考えがまとまらないというか……」

「……うん」

 

「……でも、やっぱ嬉しいわ。…なんか、告白された時、今までにない感情が湧いてきて……。その、このみとなら、大丈夫な気がする」

 

「……え?」

 

「私の方からも言う。……私と、付き合ってください」

 

 ポロポロと、ひかげの頬に涙がこぼれ落ちる。とどまることのない涙は、満月に照らされてキラキラと鮮やかに光っていた。

 そしてそのまま、涙をかき消すように唇が落とされる。虫の音に包まれて、満月に照らされた、神秘的な口付けだった。

 

(結局キスされちゃったけど……まあ、いいか)

 

 そのままひかげも目を瞑って腕を回す。今この二人は、数秒にも、数時間にも、永遠にも感じられる、清純で甘いひとときを過ごしていた。

 

「……そろそろ終わろっか。れんげちゃんたちに見られてたらまずいし」

「……だな」

 

 起き上がって、元いた場所に戻る二人。心も体も、先程までよりも近づいて。

 

「追加のお団子持ってきましたー!」

「うわ、ひか姉ずっる!一人でめちゃくちゃ食べてんじゃん!」

「はあー?誰も食べてないから代わりに食べたんですー。てかおめーもさっきめちゃくちゃ食ってただろ夏海!」

 

 瞬く間に終わってしまった甘いひととき。

 

(さっきまでのロマンチックな雰囲気も好きだけど、やっぱり賑やかな方もいいな)

 

 物思いに耽っていると、先程までひかげがいた位置に蛍が座る。何か言いたげな顔だ。

 

「告白、上手くいったみたいですね」

「うん。抜け駆けみたいになっちゃってごめんね」

「いえ、いいんです。私もいずれひかげさんの彼女になってみせますから」

 

 そう言って微笑む蛍。今この瞬間だけは、彼女の姿は年相応の、無邪気な小学生に見えた。

 

「……で、キスもしたんですか?」

「うん。しかも濃厚なやつ」

「は、はわわわ……」

 

 流石の蛍と言ってもこのような話題にはまだついていけない。歳上の余裕を見せつける瞬間であった。

 

「ど、どうでしたか……?」

「そうだねー……」

 

 先程までの感触を思い出す。ひかげとキスをした瞬間にこのみが感じたことは……

 

「……あんこの味、だったかな」

 

 初キスの感想なんて、こんなもので良いだろう。

 




ひか姉ありがとう

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