三大騒音
豪雪吹き荒ぶる真夜中。
その中で威風堂堂とする黄金の毛を持つ彼女。
『貴方は生きなさい。連中は我々が食い止めるから』
そっと手を掲げると、地面に大きか絵が現れる。
絵は光り輝き、俺を飲み込んでいく。
『血を……絶やすな』
彼女の隣に立っていた凛々しい顔の男性。
その光景を最後に、俺はここではない何処かへ飛ばされた。
▲▽▲▽▲▽
「…………」
目が覚めた。
どうやらまた夢を見ていたらしい。
「……何時だ?」
未だに眠気を訴える瞼に抵抗しつつ、枕元にある時計に手を伸ばす。
時計を見れば、午前の六時頃だ。
「……起きるか」
布団を退ければ、春先の少し冷たい空気に晒される。
それが少し心地よくて、多少の眠気も消えた。
ついでにくしゃみもした。
朝のホームルームと一時限目の間。このちょっとした時間に本を読む。
というか暇な時間は本を読んでいる。
趣味とは違うが、いい暇潰しだ。
「よっ、なのは!」
「あ……か、
「おいおい、海羅じゃなくて、
「う、うん。海羅君」
「だーからぁーー」
また来た。
恐らくこの世界の当選者。
金の髪に赤と青の瞳。つまり馬鹿。
当選者が媚びる相手だ、つまりあの高町さんが原作の主人公なんだろう。
なんにせよ、喧しいこのこの上ない。
「ちょっと! なのは嫌がってるでしょ!」
「お、嫉妬かよ、アリサ?」
「んなわけないでしょーが!」
「そう言うなって。お前も愛してるからさ」
小学校三年の言葉じゃないな。
少なくとも二度目以上の人生だろうに、馬鹿以外の何者でもない。
「やめてあげなよ、海羅くん」
「あぁ? またてめぇかモブ!」
「僕には
そしてきた、正統派くん。
黒の髪に黒の瞳。つまり馬鹿。
何が面白くてあんなのに突っかかるのやら。極めて騒がしい。
「うるせぇ! 女みてぇな名前しやがって!」
「そ、そういう事は言わないでくれるかな!」
「まぁまぁまぁまぁ、朝からハイテンションも構わないが、双方抑えて抑えて」
最後にこいつ、三枚目。
青い髪に青い瞳。つまり馬鹿。
収めようとして結局騒ぐ、三大騒音の一人。
「黙ってろ赤青!」
「あかあっ……! お前だってその目をどうにかしろよ!」
「これは俺のアイデンティティなんだよ!」
つーか、三人が濃すぎて原作が影薄いな。
……どうでもいいか。
今日の授業を終え、出された宿題を教室で手早く終わらせる。
なんとも短調作業。
算数なぞ、正確な答えを示さずともいいんだからラクすぎる。
「あの、
「ん?」
顔をあげると、紫がかった黒髪の少女。
月村すずかだ。
「ここ、教えてもらえないかな?」
「……どこ」
「えっと、ここなんだけど」
そう言ってノートを見せられる。
しかし、コイツほどならこれしき、分からんでもないはずだがね。
というか、塾やら行ってるんじゃなかったか?
まぁいいや。
まだ残っている周囲の喧騒を聞き流しながら、問われたところを適当に教える。
「ーーつまり円に一辺引き、中点を通りながら……」
思ったんだが、これ中学レベルじゃね?
そんな疑問を抱いたが、まあ創作物だ。今更だな。
「ありがと、大神くん」
教え終えると、月村は頭を下げた。
「構いやしない」
そう返すが、何やら納得いかないような顔だ。
「えっと、ね? このあとーー」
「おい、てめぇ!」
月村の言葉を遮って怒声が飛ぶ。
「あ?」
「俺のすずかに触んじゃねーよ!」
や、手前んじゃねえよ。俺のでもない。
それ以前に物ですらない。者ではあるな。
溜息を吐き、素早く支度して席をたつ。
「あ……」
「へっ、モブが! 逃げんのかよ!」
あぁうざったい。
無視して帰路についた。
▲▽▲▽▲▽
スーパーで食糧を買い込んだ帰り。
夕焼けが眩しい。
「空気中の魔素は基本人間には毒物であり、体内にある魔力器官に吸収する際、なんらかの過程を経て体内魔力に変換しーー」
歩きながらこの世界の魔力について考える。
魔法少女、と言うだけあり、魔法は存在するらしい。
しかしどういう位置づけなのか。
三回目の世界では秘匿されたものだったな。
いやしかし、あれは魔術か。
おかげで魔術回路も出来上がってしまった。
物資は持ち込めないし、魔術礼装も新たに作らねばな。
「ん?」
道中、草影で何かがキラリと光った。
法則異物解析をして見れば、何かしらマジックアイテム的な物のようだ。
「ふむ……なんだこれ」
拾って見ると、青い楔形の、宝石みたいな石。
解析してみれば、随分と気持ちの悪い色をした膨大な魔力が込められている。
ーー覚醒に使えるか?
そう思ったが、どうにも取り出せない。
何かしらに使えるかもしれんね。ポケットに突っ込んで帰った。
「何がどうしてこうなった」
「動くなよ、がきんちょ」
マンションに帰ると、オレンジ色の髪をした豊満ボデーな女性に襲われた。
まあ居たのは分かってたんだがね。
金色の鎖が体に絡みついて動くに動けん。
「貴方が所持しているジュエルシード、回収させてもらいます」
「ジュエル……?」
オレンジ女性と一緒にいた金髪エンジェルが金色の鎌を向ける。
しかしジュエルシード?
先の石のことか?
「ふむ、ジュエルシードとやらはどんな物なのかね?」
「水色をした、楔形の石です」
「あぁ……アレなら飲み込んだよ」
「は?」
嘘だけど。
「いやね、なんでも口に運ぶ癖が赤ん坊の頃からあってね。
おっと、出せというなら出そう。それこそ俺の生理的行為をイタイケたる君の目の前で堂々と……」
「わ、分かりました! 待ってますから!」
魔法術式解析完了。
おーけぃ、ならばちょちょいと管理コードを書き換えてやるよ。なぁに、俺の名前にするだけさ。
俺を縛る鎖が淡い金色から濃い金色に変色する。
「え?」
「フェイトぉ!」
鎖は俺から離れて二人へ殺到、即座に縛り上げた。
ふむ、オレンジガールの体が……うむ。
「形勢逆転かな」
「どうするつもりだい……!」
「ふむ、このまま出力をあげて君らの身体を破損させるのも楽しそうだが……」
「くっ……!」
「そうだな、まず君らの目的を聞こう」
まず何にしても、俺は原作知らんしね。
ここらで情報集めたい。
「ん? どうした? はよ話せ」
「……言えない」
「おいおい、はは。 状況わかってるのか?」
「があぁあああ!!」
「アルフ!」
オレンジガールの鎖の出力をあげる。
「ほれ、お仲間が死なんうちに話ときなって」
「ぐっ……!」
我ながらちと大人気なかったかね?
〜当選者
悪運強く当選してしまった運の悪い方々。皮肉。
〜海羅くん
踏み台。馬鹿。
〜神津くん
正統派。馬鹿。
〜湿治くん
三枚目。馬鹿。
〜三大騒音
三人娘を取り巻く当選者御三方を言い表した総称。踏み台くんが嫁嫁言い張り、正統派くんが「やめなよ」と主人公しだし、三枚目くんが仲裁を取ろうとして、結局三人とも騒ぎ出す校内きっての騒音源。
〜すずかたん
第一天使。
〜金髪エンジェル
第二天使。しかしフラグはへし折る。