五度目の転生はインフレが過ぎる   作:イモリ

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ガーディアン

 リニスとディーを拾ってから一週間。

 実に充実のない一週間だったと言わざるを得ない。

 

 朝起きる。

 飯が出来ている。

 食べる。

 ジョギングに行く。

 帰ると風呂が沸いている。

 学校行く。

 帰ると飯が出来ている。

 食べる。

 寝る。

 

 俺なんもしてねえな。

 まあ家事しろっつったのも俺なわけで。文句の一つも言えない。言う気もないが。

 

「フウル、ご飯だよ」

「……ん、ああ。今行く」

 

 そして日曜なのだが。昼食が出来上がったようだ。

 ふむ、飯食べたら図書館にでも行こうか。ちょうどストックが切れたことだし。

 

 

 

「図書館? ボクも行っていいかな?」

 

 昼食。外出を伝えるとディーが言ってきた。

 

「別に構わんが……お前、本読めるのか?」

「む、ボクだって本くらいーー」

「日本語」

「……」

 

 そう、残念ながらディーは地球人ではない。いや宇宙人でもないが。

 地球人ではないなら必然的に地球語、ひいては日本語が読めるはずもない。

 

「では、フウルに教えてもらっては如何ですか?」

 

 リニスがいい笑顔で提案してきた。

 

 驚くことなかれ、リニスは人間に変身するのだ。

 本来の姿は猫なので、拾った日は魔力不足で猫状態だったが。

 休んで魔力が戻ったディーと改めて契約を果たし、魔力も潤滑になったので人間状態になり、家事の殆どを行っている。

 ペットにして家政婦とは、ぬかしおる。

 

「俺は別に構わんが……」

「うん、そうしたい! 教えてフウル!」

「まあ、お前が覚えたいなら吝かではないよ」

 

 そこでちょうど昼食も終え、出掛ける準備に入った。

 

 

 

「なんや大神くん、彼女いたんか?」

 

 図書館へ侵入を果たしたと同時に、八神から言われた。

 

「あ?」

「か、彼女だなんて……」

 

 ディーがウネウネクネクネしてやがる。

 いや、お前男だし。彼女じゃないし。

 

「愛らしい彼女さんやなぁ」

「いや違う」

「え?」

「え?」

 

 何故ディーまで驚く?

 

「コイツ男だぞ」

「……」

 

 あぁ、ディーががっくしいっとる。いやだから、何故よ。

 

「……男?」

「いえす」

「……マン?」

「正確にはボーイ」

「……マジなん?」

「大マジ」

 

 暫くフリーズしていた八神がようやく再始動する。

 

「こ、これで男の子やてぇ!? うっわ、頬とかモチモチやんか! こんなん卑怯や! 反則やんか!」

「落ち着け八神」

「これが落ち着いていられるかい! こんな理不尽あってはならん! 可愛すぎるやろ!」

 

 可愛いやら愛らしいやら騒ぎ出した。喧しい狸だな。

 

 そんなに騒ぐとこの図書館のガーディアン神こと司書さんが……あぁ、ほら、ハサミ飛んできた。

 

「司書さんごめんなさい、ほんますいません! ハサミ投げんといて!」

 

 すんでのところで避けた。チッ、おしい。

 

「ぜぇ……ぜぇ……あ、危なかったわ……」

「落ち着いたか」

「あんなハサミやら飛んできたら落ち着かなあかんやろ……」

 

 ご尤もで。

 

「で、コヤツ実は帰国子女と言う奴でな? 日本語話せるが読めないんだ」

「なるほどなぁ、だからこで日本語教えようゆうことか」

「おーるらいと」

 

 棚に近付いて絵本やらを適当に取る。

 

「ふむ。これでいいか。ディー、おいで」

「はーい」

 

 椅子に座ると、トコトコ近寄ってきて横にちょこんと座る。

 

「……なんやほんまに愛らしいなぁ」

 

 八神のそんな呟きが聞こえたが気にしない。

 

「さて、これは児童書だ。わかるな? これで日本語を勉強していく」

「えーと……なんて読むの、これ?」

「『へいたいさんのうた』」

 

 知る人ぞ知る、というものだったりする。内容は割愛するが。

 

「うーん……」

「あぁ、知らない文字を見て目を回すディーちゃん可愛いわぁ」

「八神うっせえ」

「酷ぅない?」

 

 酷くない。

 

 それから一時間ほどで平仮名はほぼ完璧に覚えてしまった。

 クローン生体というのはすごいねぇ。

 

「ふむ、そろそろ帰るか」

「なんや、もう帰るん?」

「色々とやる事があるんでな」

 

 嘘だが。

 まあ最近はディーとリニスに魔法理論を学んでたりするし、暇というわけでもない。

 魔法を扱えるが、感覚によるところが大き過ぎる。ムダが多くて効率が悪い。

 

「じゃあな、八神」

「ああ、うん。またな、大神くん。ディーちゃんもまたな」

「うん、ばいばい」

 

 ディーのばいばい攻撃に八神が悶えているが、知ったことではない。

 そうそうに帰路に着く。

 

「ん?」

「……魔力反応だね」

 

 道中、あのジュエルシードとやらの魔力反応があった。

 歪んだ魔力が範囲的に広がっている。

 

「どうする?」

「ふむ……」

 

 手を出せ、厄介事だ。

 手を引け、厄介事だ。

 二つの考えがよぎる。

 

 メリットとデメリットは?

 メリット、ディーの関係者に会える。

 デメリット、存在がバレる危険性。

 どうせ喰える魔力ではないジュエルシード。

 だが周囲の魔力なら?

 当選者と思われる存在は確認されているだけで四。

 内魔力内包は二。

 両者観測される魔力量は予測S。

 

 ーー喰うか。

 

『リニス』

『はい』

 

 考えがまとまったところで、念話でリニスに呼びかける。

 リニスは来ることを予想していたようで、特に慌てた様子もない。

 

『これより俺達はジュエルシード付近に行く。万一危険信号があったら、』

『心得ました』

『うむ。家は頼むぞ』

『気を付けて』

 

 念話を切り、ディーを一目見てから反応がする方向へ向く。

 

「行くぞ」




〜司書さん
図書館の守護神。静寂と静粛を何よりも愛する女神さま。図書館内で騒ぎ出すとハサミやらナイフやらカッターやらが飛んでくる。

〜へいたいさんのうた
敵地で孤立状態となった日本兵の方々のお話。食べ物がなくて餓死してしまい、以来食べ物を粗末に扱う輩を成敗する。架空の児童書。

〜感覚派魔導師
魔力をこう動かせばこんな感じで魔法が発動するんです。実は理論に基づいた動き方してるんだけど、無意識でやってるため説明できない感覚派。

〜当選者特典
基本的には転生する世界に則った能力とか技術が支給される。悪運の悪さでオーバーテクノロジー的に別世界の能力とか独自の技術とか手に入れることもある。
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