自販機がケイにメロメロになった場合   作:十文字マトン

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今日もケイちゃんかわいい


17 初デート(初ではない)

 駅の改札を抜け、天童ケイはD.U.に到着した。

 

 やはりミレニアムの近くだとクラスメイトと遭遇する危険があるため、場所をD.U.に指定した。

 

 ......が、ケイの胸の中には、「いっそのこと、クラスメイトに二人で遊んでいる光景を見せた方が......」という衝動が潜んでいた。

 

 なお、最終的に恥ずかしさが勝ったためやめた。

 

 今日の服装は、もちろん制服ではない。そして、前回の「お出かけ」とも全く変えていた。

 

 淡いラベンダー色のニットに、動きやすいフレアスカート。足元はスニーカーではなく、ちょっとだけヒールのあるローファー。メイクはいつもより丁寧に、髪は三つ編みにまとめ、首元にはシンプルなステンレス製のネックレスを添えた。

 

 ──決して前回「ネックレスを付けたらどうだ」と言われたからではない、とケイは未だに言い訳をしている。

 

 無意識的にデカグラマトンには「大人の女性」として見られたいのか、全体的にかわいい系よりは落ち着いたスタイルになった。

 

「今回は、ちょっとだけ気合を入れました」

 

 流石に自分を騙すのにも限界が来たのか、今回のケイは自分が「外見」に対して多大なリソースを割いた事実を認めた。

 

「でも、あくまでオシャレするのが趣味であって、誰かに見せるためではないですから!」

 

 なお、理由に関してはまだデカグラマトンのためだと認めたくないらしい。

 

「(......三つ編み、解けていませんよね? リップの色、浮いていないでしょうか?)」

 

 約束の場所に移動してる途中、何度も突然の不安に襲われて、コンパクトミラーで自分の姿を確認し、大丈夫だと判断してから進め、少し経ったらまた不安という繰り返し。そのせいで移動の速度が普段の3割以下。

 

「(......日差しが強いですね。顔が熱いです)」

 

 心なしが、鏡に映る自分の顔がちょっとだけ赤いのは、日の光のせいにした。

 

 何度も立ち留まったせいなのか、待ち合わせ場所に到着した時には、すでにデカグラマトンがそこに立っていた。

 

「あ、え......? あ、あの......お待たせいたしました......」

 

 前回のデート......ではなく、お出掛けでは時間通りに現れたデカグラマトンだが、すでに待たせてるってことは自分が遅刻したのではないか? と一瞬焦ったケイだが、約束の時間にはまだ30分以上あった。自分の移動が遅くなってるのは事実だが、それよりデカグラマトンが早めに待っていたらしい。

 

「約束の時間にはまだ到達していない。故に、私は待っていない。ただ、予定の時間の前にここに待機していただけだ」

 

「それは待ってるって同じ意味じゃないですか!?」

 

 おそらく自分のフォローしようとしたが、その言い訳があんまりにも下手のせいで思わずツッコミを入れたケイ。

 

 とはいえ、そのおかげで少し緊張が解れたのか、呼吸が多少楽になったケイは改めて、目の前の存在を視界に収めた。

 

 深いネイビーのロングコートに、清潔感のあるタートルネック。そう、前回と違って、男物を着てきた。

 

「!」

 

 そう、そのセットは前回のデート、ではなく、コーディネートでケイが選んだ服装だった。

 

 授業でも見たはずの組み合わせだが、ふたりきりの休日にその姿を見た瞬間、ケイの心臓が大きく跳ねた。

 

 どうやら、これが「デート」であること、ケイの身体が勝手に認識してしまった。

 

「(う、うるさい! 聞かれたらどうするのですか!)」

 

 体を通じて耳に届いた、ドクンドクンの声はあんまりにも鮮明で、まるで外からでも聞こえるほどの音量だと錯覚するほど激しかった。

 

「と、とにかく......その、服。似合っています」

 

「ああ、汝の選択だ、間違いようはない。ケイもまた、とっても似合う。採点的には70点かな? 満点10点の中」

 

「満点の意味知ってます?」

 

「知ってる、その上の『ボケ』だ。人間のコミュニケーションではこれが重要──」

 

「知っていますから、自分で解説しないでください! ......とにかく、行きますよ!」

 

 これ以上立ち留まると体温で発火するのではないかと錯覚したケイは、逃げるように歩き出した。なお、逃げたい相手も当然ながらついてくるので、逃げるは何の意味もなかった。

 

 そして、二人の間には、奇妙な沈黙が流れていた。

 

 デカグラマトンは珍しく絡んでこないし、ケイもまた何を話しかけようか話題が思いつかなかったから。しかし、ケイは不思議と気まずさが全くなく、むしろ隣にいるだけである程度の満足度を覚えている。

 

 そして、裏では変なことを考えていた。

 

「(手、てて手ててを、繋いだ方が......いやいやいやいや、何を考えてるのですか私!!)」

 

 少し後ろを歩くデカグラマトンの長い指を、ちらりとみたケイは、心から湧き上がった欲望を強く否定し、もう一度心の奥に押し込んだ。

 

 ふと、肩を掴まれて道の端に引き寄せられた。

 

 何事と思った瞬間に、道の方に一台の戦車が猛スピードで通り過ぎていく、その後ろにヴァルキューレの装甲車が何台も続いていた。

 

「せっかくの服だ、汚してはダメだ」

 

 手はもちろん、デカグラマトンのもの。元々が歩いた位置でもおそらく当たらないが、念のために注意されただろう。

 

 キヴォトスの人間は戦車に轢かれても命の危険はないが、せっかくの服は台無しになるのは確定のため、基本的によけたいである。

 

「あ、ありがとう」

 

 ケイの声は、思ったより小さく震えていた。肩には、先ほどの手の感触が残っている。

 

 そして二人は目的地に到着した──カラフルな看板と、漏れ聞こえる電子音と音楽。

 

「ゲームセンターか......人間の娯楽が集められた場所」

 

「ま、まあ。貴方は確実に来た事ないから、連れてきました」

 

 ケイはゲーム開発部や先生、それとデカグラマトンの前では常に、経験豊富な先輩のように振る舞うことになっているが。実際のところ、彼女の「人間としての活動期間」はデカグラマトンと大差ない。

 

 知識こそ持っているのは間違いはないが、人間との交流はまさに初心者そのもの、

 

 ──つまり、突発的にデカグラマトンを誘い出したはいいとして、どこに行けばいいのか全然わからなかった。

 

 もう一度ショッピングしに行っても楽しいだろうけど、それだと前と大して変わらない。

 

 レストランとか、いわゆる「高級の料理」はこの二人の人工舌と子供舌では楽しめるか不明。それと資金的に厳しいのでデカグラマトンにおごらせるのはなんか違う。

 

 定番の遊園地なら、逆にケイ自身がどうやって遊ぶのもわかってない。

 

 悩んだ末に、無難にアリスが学校以外に一番楽しそうな場所──ゲームセンターを選んだ。この前ゲーム開発部のみんなと一緒に来た時も、自分では決してはしゃいでいないがそれなりに楽しかった。

 

 が、今回の隣はデカグラマトン。その事を思うと、妙に緊張したケイ。




お前らもケイちゃんかわいいと言いながら高評価と感想をください(欲張り)
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