ケイちゃんかぁわいい!
自動ドアが開くと、冷たい空気とともに襲ってきたのは、一般の場所ではあり得ないくらいの爆音。
「......騒がしいな」と、デカグラマトンから当然の感想が出てきた。
「そういう場所ですから」
「人間は確か、騒音で判断力の低下が発生するらしい。それで財を使うときの判断にエラーを誘発させ、娯楽に投入させるという仕組みか──」
「そういうのはいいですから、さっさと入ってください」
「いいだろう」
ゲーセンに入ったデカグラマトンも、流石にゲームの種類の多さに驚いた様子。
「知識としては知ってはいたが、ここまで種類が多いのか。これは何する機体?」
「機体って、まあ間違ってはいないのですが。これは銃の達人と呼ばれたゲームです。えーと、リズムに合わせてこの銃を撃つ遊びです」
「そちらのは?」
「未確認飛行物体キャッチャー。上のアームを動かして、置いてる賞品を掴んで開口部に落としたらその賞品が貰えますよ」
「あっちのは?」
「
デカグラマトンは何も言ってないのに、自分の説明で面白くないと思われたら嫌だとなぜか慌ただしく弁明した。
(......なんでこんなに落ち着かないの、私。これは、そう! 面白いと思って人に推薦した物が興味を惹かれなかったら恥ずかしくなるやつ、別に緊張とかしてませんから!)
どうやらケイはもう一つの建前である「別にゲームは趣味ではない」という設定をとっくに忘れていたくらい、デカグラマトンのことを気にしている。
「汝の説明を聞いてるだけでも私は楽しいぞ?」
「............ソウデスカ」不意打ちされたケイは顔を隠すためにそっぽ向いた。
「とはいえ、汝の要望であれば共にするのも一興。選ぶといい、どんなゲームでも付き合うぞ」
「それなら、まずは定番の銃の達人からしましょうか......貴方も一応銃持ってるから、使い方分かりますよね?」
キヴォトスでは銃を持っていないのは、全裸と同じくらい非常識なことであった......どこかの先生は常に全裸で生徒たちを誘惑してるようなことをしてるけど、あれは例外の例外。デカグラマトンは今も一応銃を装備してるが、鋼鉄大陸での戦い方は銃ではないので、普通の銃は扱えるかをちょっと心配し始めたケイ。
「その原始的な装備を使うのは当然容易い。私の眷属にもそれを使っていたの忘れていたか?」
「原始って......まあ、貴方にとってそうでしょうけど。とにかく行きますよ」
と、よく考えたらよく見かける人型のデカグラマトン眷属は普通にライフルを持ってるから、使い方は流石に知ってると気付くケイは、とりあえずデカグラマトンの袖を軽く引っ張り、銃の達人コーナーへ向かった。
「はぁ?」
リザルト画面を見て信じられない声を出したケイ。何故かというと──
「ミスが多いぞ、ケイ」
初めてやったはずのデカグラマトンに倍以上のスコアを出されたから。
最初はデカグラマトンが初心者であることを考えて、まずは簡単の曲を選んでいたが、お互いがノーミスでクリア出来た。ケイも最初はデカグラマトンのことを褒めていたが、難易度を上げていくとケイの方にミスが出てきた。
元々AIであるデカグラマトンにとって、リズム通りに引き金を引くのは造作もないことだし、画面のピクセル単位でタイミングを判断することすら出来るから、ランダム性のないゲームなら文字通り精密機械の動きができる。
対して、同じAIだったはずのケイは......プレイスキルがあんまり上手とは言えないレベル、どのレベルというとゲーム開発部の中では四位争いしている。
もっとも、ゲーム歴の差を考えたら割とセンスを持ってる方ともいえるが、最高難易度の曲となるとやっぱりミスが出る。
「ちょっと貴方......もしかしてゲームの中でずっと演算で分析してる?」
「当然だ、どんなことも全力でするから」
「......それでは、ゲームをしてるとは言えませんよ」
「?」
「ここで言葉で説明するのも理解できないと思いますので、次行きましょう」
次のレースゲームも、格闘ゲームも、デカグラマトンはケイを圧勝し続けた。たまにケイがグリッチを使って優勢を取り戻すのも、すぐにデカグラマトンに学習された。まるで難易度設定がバグったAIと対戦してる感じ。
「む......」
「どうした? ケイ。少し不満そうな顔してるぞ」
「別に、不満とかありません......というより、貴方はそれで楽しいのか?」
「? 私は汝と一緒にいれば楽しいぞ?」
「そういうことではなく......ゲームに対して楽しめたのですか? その遊び方は、チートツールを使ってるとほぼ同じですから......」
「言ってる意味が分からない」
「何と言うか......達成感? やりがい? が全くないじゃないですか? 確かに対戦ゲームならチートを使って楽しめる人もいるけど、それはゲームそのものではなく勝つ快感に囚われているとモモイも言ってました」
「達成感......ああ、映画や食事と違って、ゲームはただ受け止めるだけでなく自らの手を加えたことで娯楽として成り立つらしい。その理由は考えてなかった......ではケイよ、汝はどうやってゲームを楽しめた?」
「べ、別にゲームとかそんなに好きでもないけど?」今更自分の設定を思い出したケイだが、その答えを考えた「もちろんみんなとやるのが楽しいのもあるのですが......なんと言いますが、ゲーム製作者が想定した難易度でプレイをしてクリア、もしくは同じ条件で対戦相手に勝つ時に楽しくなる......私も上手く説明できないのですが」
「なるほど、同じ条件下で製作者もしくは対戦相手に勝つこそが、相手が心から平伏するのか」
「全然違い......いえ、そこまで間違っていないのか?」
「人間は非効率の生き物だから、非効率の事が逆に一番効率的に繋がるのは、汝らに教われた」
感情というものは人間やAIを制御しやすい要素と分かりながらも、それを完全に理解できなかったから最終的に反抗期によって負けたデカグラマトン。
「そうですね、次はあんまり計算しないように...といっても、演算することが思考は同とじ物である
「なるほど、ならそうしよう。汝が勧めた場所なら、汝の勧めるやり方でするのが道理である」
「意外と難しい」
「げ、また負けました」
「いや、途中負けそうになってから思わず演算能力を使った、謝罪しよう」
「ほほう? つまり負けそうになったらムカついて
それを聞いて、なぜかちょっと嬉しくなったケイ。
「.....過程と結果と結論だけでみたら、そうなってるのは否定しない」珍しく、自ら顔をそっぽ向けたデカグラマトン。
「過程と結果と結論ならもうそれは全部じゃないですか!? ふふ、貴方、意外と負けず嫌いのところあるのですね?」
「負けず嫌いではなく、負けるのが嫌いなだけだ」
「同じ意味ですよ!? まあ、何しても完璧な貴方よりは、こっちの側面の方が好きですよ? ......って、そういう好きな意味ではなくて、えーと、その──」
「リベンジだ。次は負けないから」
「! 望むところです!」
「もうこんな時間ですか!? そろそろ帰る時間になりますが......えーと、今日は楽めたのかな?」
後半戦になると、ケイの方も闘志に燃やされて割と全力で挑んだから、最初の完敗から一転してケイの勝ち越しになったが、我に返ったケイは相手が初心者、しかも自分が誘ったことをおもい出し、ちょっとだけ気まずくなった。
「汝と一緒であること自体が楽しかったが、汝に勝てるようになったらもっと楽しくなると推測する」
「それはすみませんでした!」
「なに、それがゲームって存在であることをよく知った。後は訓練するだけか」
「まあね、ゲーセンは対戦や協力のゲームがメインなので、一人でも楽しめる家庭用ゲーム機とかもやってみるといいですよ」
「そうしよう」
「あ、帰る前に、未確認飛行物体キャッチャーをやりたいです!」
「何回か通った時めっちゃチラチラと見ていたな」
「バレましたか。ちょっとアリスが欲しいフィギュアが入ってますから」
「そうか、ならやってみよう。む、これも計算しないの難しいな」
「いえ、これは全力でやってください」
「?」
「これに限って、ルール違反しないかぎり、チートでもなんでも使っていいです!! とにかくそのフィギュアをとってください!」
「基準が分からなくなってきた」
「じゃあ、一回普通にやったらわかりますよ? 分類では一応ゲームではあるが、アリスでも唯一怒るゲームですよ」
「???」
その後、デカグラマトンは普通にやって無事にキレて、演算チートを使って賞品を総取りした。
浴衣ケイちゃん可愛すぎで死んだ