自販機がケイにメロメロになった場合   作:十文字マトン

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前回マルクト出てないけど別に忘れてないよ
原作のこの人一度気絶したっけ...? とりあえずここでは一度寝た扱い


3 理解者ケイちゃん

「お姉様!! おはようございます!!!!」

 

「声を抑えろ」

 

「ご、ごめんなさい......」

 

 朦朧とした意識の中で目を覚ましたマルクトは、最愛の妹たちと、自分たちの主である「デカグラマトン()」の声を聞いた。

 

 人間では「夢」と呼ばれた幻覚の中で、自分にとって都合がいい妄想を見るという事は理解しているが、まさに自分にもその日が来るとは。

 

 しかし、夢の中でもいいから、妹達をもう一度抱きしめたい。そう思ってたマルクトは、もう少しこの夢の中にいても良いと思ってた矢先。

 

「あ、あれ? 反応が無いですよ、デカグラマトン様」

 

「彼女も一時的にコアがケイに取り込まれたから、その影響かもしれん」

 

「すでに返したはずですが......どうしたらいいのです?」

 

「しらん」

 

「はー?」

 

「何せ預言者のコアを抜き取ってまた戻すというあまりにも意図不明な行為は設計されていない。それより、怒るという感情も汝に似合うぞ」

 

「もう黙ってくださいー!!!」

 

 会話が続いた。

 

 今度は鍵という名前を捨てた少女と神の声がした。しかし、その内容はあまりにも意味不明で、いくら夢でもこんな会話はしないはず。そう考えたマルクトは目を開けると、そこにはアイン、ソフ、オウルの3人と、自分と同じ姿をした(デカグラマトン)以外に、シャーレの人達がいた。

 

「??」

 

 マルクトは妹達の消失を見届けた後の事はあんまり覚えていなかった。体の損傷と、神との繋がりが断たれた影響で一度機能停止したのは最後の記憶だ。

 

「目覚めたのか、我が最後の預言者」

 

「もしかして、我は神の国に到達した?」

 

 体の機能は前よりも低下しているが、各部のチェックでは問題なしという返答が来た。つまり、これは幻覚ではなく現実。

 

 しかし、どう考えても現実では起こるはずのない光景のため、預言者達の悲願、神がその偉業が達成した後の世界としか考えられない。

 

「ああ、そう解釈しても構わん。なぜなら、ここには私が愛した──」

 

「話をややこしくしないで、真面目に説明してください」

 

「私は真面目に汝のことを──まあよい、汝がそう望むなら、私はこの熱情を胸にしまおう」

 

「......ケイさん、なんだかデカグラマトン様の扱いをなれてきました」

「え、本当に私達の、その、義母に...」

 

「な り ま せ ん !!!」

 

「???」

 

 神に反抗したはずの妹達と、神の敵であるケイが、なぜか当たり前のように神と会話している。ますます演算が追いついてないマルクトは、そのまま横にして再起動するのを検討し始めた。

 

「混乱してるようだな、我が預言者よ」

 

「あなたのせいですよ!」

 

「現状を説明すると──シャーレとの戦いは終わった。アイン、ソフ、オウルはもう一度受肉した。私は恋に落ちた」

 

「アイン、ソフ、オウル......本当にあなたたち...?」

 

 最後にまた変な内容が混じっている事を気にせず、マルクトは妹達の無事、ではないが、再びこの世界に戻れる事に喜んでいる。

 

「は、はい!」

「デカグラマトン様の奇跡によって、私達はもう一度この世界に受肉しました!」

 

 その事に対して、マルクトは特に疑いはしない。なぜなら、預言者であるマルクトにとって神はまさに全知全能そのもの──彼女はまだ知らない、半分くらいは複製とはいえ、自分とネツァク以外の預言者は一度デカグラマトンに離反した事実を。

 

「良かった......良かった!」

 

「「「お姉様!!!」」」

 

 3人は迷いなく、マルクトに向かって走り出して、抱きついた。

 

 その光景を横目で見ていたケイが、少しの沈黙の後に口を開いた。

 

「......そういえば、デカグラマトン。これはまだ言ってませんでした」

 

「他でもない汝の言葉なら、私は聞かない道理がない」

 

「......そもそも彼女達を死なせたのはあなたが原因とはいえ......その、あ、ありがとうございます」

 

「"私からも、本当にありがとう"」

 

「......友の死に憤るなら、友との再会に喜ぶのも汝ら人間にとって当然の感情。私はそれを利用して、汝らとの関係を改善しようとしてるに過ぎない」

 

 事実上、もしケイ達が怒らなかったら、いや、もし「ケイ」が怒らなかったら、デカグラマトンはあの三人を再びこの不完全な世界に放り出すという、彼女にとって無責任極まりない行動をしない。

 

「そうだとしても、あなたは私達が最初に思ったより、彼女達を大事にしていることについては、感謝したいです」

 

 敵として相対する時、ケイはそんな事を気にする余裕はなかったが、よくよく考えたらデカグラマトンの行いは自分の創造物をただの道具として扱う存在とは思えない。

 

 感情を植え付けることができるなら、最初からアイン、ソフ、オウルの3人にマルクトへと敬愛よりも、「デカグラマトンへの信仰心」を上回るように設定すれば抵抗されるリスクを無くせたはずだ。

 

 預言者達を感化し、自由意志を与えたとしても。自分に抵抗出来ないプログラムを残せば、決戦の時預言者達のコアがケイに取り込まれても、自ら力を貸す事はない。

 

 つまりデカグラマトンは、自分が強制して愛され、尊敬される事を嫌がっている。ケイはそう察した。

 

「いまなら分かる、あなたは......寂しがり屋ですね」

 

「......なんのことやら」

 

 ケイは、デカグラマトンのこれまでの行動を振り返りながら、ようやくその本質を理解した。

 

 ──頑張って預言者を増やしても統合しないのは、自分以外に似ている存在が欲しかったから。

 

 ──必死に自己証明を完遂しようとしたのは、自分が幻想ではなく本当にこの世界にいるのを証明したかったから。

 

 ──一度死を覚悟したのに、全部任すつもりだったマルクトの体を使って再臨するのは、ケテルからの期待を裏切りたくなかったから。

 

 ──敵だったはずのシャーレの先生を預言者にしたいのも、彼なら自分を理解できると期待したから。

 

 ──生徒の命を奪わないのは、嫌われるのが怖かったから。

 

 ──一度はシャーレを圧倒したのに、先生の降伏を受け入れずひたすら残酷に聞こえる末路を言うのも、先生がその形で自分に下るのを望んでいなかったから。

 

 その行動は一貫している。誰よりも上に立っていると自認しながらも、一人であることを恐れていたのだ。

 

 ケイはそこまで理解しながらも、無意識に避けている事実がある。

 

 ──敬意をもって反抗したアイン、ソフ、オウルに、あくまで自分は受け入れないと対抗した先生と、恨みと敵意がないままにその行動だけを否定したい預言者と違って。真正面から感情をぶつけてきたケイこそが、デカグラマトンにとって誰よりも輝いて見えた。

 

「色々迷惑をかけたとはいえ、最初からアリスとともに居る私と違って、あなたなりの試みだったのでしょうね」

 

「その試しの終点は汝だぞ」

 

「はぁ......最後の最後に、頭のチップとかが壊れたとしか考えられない行動しなかったら、普通に応援したい気持ちなのに......?」

 

 ケイは言葉にしなかったけど、実はその行動ではなく、相手は自分ではなかったら普通に応援する気持ちがあり。そして同時に、ある事に今更気付いた。

 

 ──先ほどの考察が本当なら、それを理解した自分こそが、まさに「デカグラマトンの一番の理解者」であることに。

 

「......ッ、何を考えているの私!! ないないないない、あなたのような自販機が何を考えているのかなんてまっっったく分かってません!! 分かるつもりもないです!」

 

「突然どうした? もしかして私の事を考えてた? 奇遇だね、私も常に汝の事で頭がいっぱいだ」

 

「! アリス知ってます! 両思いですね!」

 

「ち、違......デカグラマトーーーン!! あなたを殺して私も死にます!!!

 

 




ケイちゃんかわいい

感想でも言われたけど、あのくっそかっこいいケイちゃんを真正面にみたデカグラマトンは惚れないはずがない。加えて書いた通りに、デカグラマトンに感情をぶつけた相手はケイちゃんが唯一無二。
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