自販機がケイにメロメロになった場合   作:十文字マトン

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この作品の略はケイメロになるのちょっと面白い


4 転入届

「まさか、本当に小さくなりましたね...」

 

「私は嘘を言わん」

 

 デカグラマトンの第七の預言者ネツァク──通称、鋼鉄大陸。

 

 とはいえ、まだ正式にキヴォトスへの侵略が始まっていないため、決着がついた時点での規模を大陸と呼べるかは正直微妙なところ。

 

 それで、デカグラマトンがアリスとケイと一緒に、宣言通りにそのサイズを縮小させた。今では、数十平方キロメートル程度に収まり、周りの海は、一気に陸地が消失したせいでかなり荒れているが、そのうちに収まるであろう。

 

「この前と違って、なんかふわっとしてる感覚です!」

 

「前?」

 

「......おそらくアトラハシースを発動した時の事です」

 

 話しかけたらまた変な事を言われるのを警戒しながらも、デカグラマトンに説明をしたケイ。

 

「ネツァクには自分自身の意識がある。ゆえに汝らは、彼女の再構築を直接行うのではなく、力の使い方を教えるに過ぎない。実行しているのはネツァク自身であるため、実際に力を行使した時とは違う感触になるのも妥当であろう」

 

「ではネツァクさんが頑張ったってことですね! なでなでしてあげます! それと、アリスとお友達になってください!」

 

「ネツァクまで懐柔しようとしてる......恐るべし」

 

 ニコニコしながら地面をナデナデし、そして話しかけるアリスを見たオウルはアリスのコミュニケーション能力に驚嘆した。彼女達は先ほど預言者達の末路を聞いたが......まさか、鋼鉄大陸の預言者達が自分達のために、自らの命を捨ててまでデカグラマトンに反抗するとは、オウルにとって全くの予想外。

 

 もっと予想外なのは、それに対してデカグラマトンは全く怒っておらず、むしろその覚悟を称賛していることだ。

 

 オウル達にとって、あの時自分たちと敵対してるシャーレはまさに敬愛したマルクト(お姉様)を奪っているのと同じ意味だった。その後悪意がないのを知っても、ある程度和解したとしても、やはり敵対という行動自体を称賛するデカグラマトンの考えがわからない。

 

「これでは鋼鉄大陸ネツァクではなく、鋼鉄島ネツァクですね。アイン達が帰省する時私達も遊びに来てもいいかも」

 

 キヴォトス全域を掌握しようとしたネツァクが、これほどのサイズにまでなれることにヒマリは驚きつつも、デカグラマトンたちの仕事ぶりに満足げだ。

 

「このサイズならもう少しミレニアムに移動してもいいかも? 近くにいたほうが便利だし」

 

「いいえ、ミレニアム周辺の海域はオデュッセイアの領海になるわ。そこまで接近すると注目を浴びて、本末転倒になるわ」

 

 さらに移動できるかを提案したエイミだが、国際的な問題になりかねないためリオに否定された。

 

「......帰省? 私達別に、何処かに行くつもりはないですよ?」

 

 シャーレ側ではほぼ「ある前提」で話を進めているが、まだ三姉妹からその許可を得られていない。もっとも、拒絶される可能性を全く考慮しない大人もいる。

 

「"転入届は用意してあるよ!"」

 

 と、先生が何枚かの白い紙を持ってきた。彼が先ほど輸送船のプリンターでプリントした──転入届だ。

 

「ま、またその事を!」

「で、でも、もうやることがなくなったし......み、みんなが良かったら、私は生徒になっても大丈夫、です」

「お姉様がなるなら私もなります!」

 

 鋼鉄大陸攻略戦の時も何回かそれを口にした先生だが、それをあくまでも「友好の証」として捉えていたアイン、ソフ、オウル。まさか本当に書類を用意するとは思っていなかった。

 

「"マルクトの分ももちろんあるよ"」

 

「我を受け入れるのですか?」

 

「"もちろん! 生徒になるのは楽しいよ!"」

 

「楽しい、か。我の妹たちと一緒にいてもいいですか?」

 

「"クラス分けにもよるけど、放課後ならずっと一緒にいてもいいよ"」

 

「そうか......よろしいでしょうか、デカグラマトン様」

 

「汝はすでに使命を持っていない、好きなようにやれ」

 

「なら、我も生徒になります」

 

「お姉様がなるなら私たちも!!」

 

 マルクトを説得したということで、アイン、ソフ、オウルの三人も転入届を受け取ってその内容をまじまじと見つめ始めた。その中、先生がデカグラマトンにも話をかけた。

 

「"デカグラマトンもサインを!"」

 

「? 私か? 確かに彼女達は私が作り出したが......まあよい、形式上保護者の同意が必要であれば、私がサインをしよう」

 

「いいえ、先生の事だから、おそらく......」

 

 自分が保護者として許可を求められたと勘違いしたデカグラマトンを見て、実際接触した時間実はそんなに長くないとはいえ、アリスの中で先生という人物の言動を見てきたケイは、先生の本意を分かっていた。

 

「"デカグラマトンも生徒になろう!"」

 

「......生徒とは何かを学ぶ必要のある子供の職業であろう。私は子供ではない上、学ぶことも既にない故、私にとっては不要の事だ」

 

「"生徒になって、人間関係も作るのも大事よ"」

 

「いらん」

 

「"ケイちゃんも生徒になるから、一緒にいないと寂しくなるかもよ"」

 

「ちょ、は? こんな奴がいなくても別に寂しいとか全然ないですけど? というより、私は生徒になるとは一言も言ってませんよ! あとケイちゃんではありません!」

 

「ケイは、アリスのクラスメイトになりたくないのですか?」

 

 突っ込みどころが多すぎて思わず全部否定したケイだが、アリスはそれをケイが生徒になりたくないとして捉えた。

 

「そうですよね、アリス、勝手に思い込んじゃってました......大丈夫です! ケイは同じ学校の生徒にならなくても、アリスの仲間です!」

 

「あーもう! 私の分の転入届はどこですか? 今ならサインしてあげてもいいですけど! 早くください!!」

 

 もちろん、アリスを悲しませるのは絶対ありえない事のため、ケイは秒で生徒になることに同意した。

 

「"やったー"」

 

「いいのですか、リオ? アリスの前例がいるとはいえ、いきなりこんな人数が増えたら流石に隠せませんよ」

 

 前回、アリスを非正規手段でミレニアムの生徒として偽造したヒマリだが、それはあくまで生徒会長であるリオの協力で成しえた事。もっとも、ユウカはすでにうすうすその事を察したと思われる。今回は数も数なので、前のやり方では行けると思わない。

 

「......わ、私から、ユウカに、しっかり、説明、するわ」

 

「リオ会長がここまで冷や汗流すのは初めて見たかも」

 

「"では、デカグラマトンもよろしく!"」

 

「......やはり遠慮する。その配慮には感謝するが、私に何かを教えるのは、そこらへんの講師にとっては負担が大きすぎる」

 

 ケイを釣り餌にさえしたらすぐに来てくれると思われたデカグラマトンだが、考えた末に断った。

 

 彼女の懸念は現実的だ。基本から専門の知識は何でも知ってる上、かなり高圧の態度をとる生徒がいれば、講師はさぞプレッシャーを感じるだろう。

 

「意外ですね。私から言うのもなんですが、絶対ホイホイ着いてくると思っていました」

 

「案ずるな。同じ学校にいなくとも、いつでも会える。寂しいなら、私と繋がる端末を作ってあげようか?」

 

「誰が! 寂しいと! 言いましたか!? ......でもまあ、どうせあなたは携帯とか持ってないでしょうし。連絡が取れないと困るかもしれないので、その端末とやらをくれるなら、もらっておきます」

 

「とのことだ、先生。残念ながら私は生徒になる必要性を感じないので、今回は諦めろ」

 

「"......つまり"」

「"デカグラマトンは『そこらへんの講師』よりも豊富な知識を持ってるってこと?"」

 

「如何にも」

 

「"それなら、私にいい考えがある!"」




デカグラマトンの口調で一人称が「我」じゃないのはやはり違和感
↑絶対別のデカグラマトンの影響を受けてる
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