ダンクロ!-男子黒魔術部の日常‐   作:ブリコたっぷりっ子

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その胸に夢を抱いて‐4‐

★☆★☆★☆★

 

 男子黒魔術部(科学部)の悪しき企みにより女子のブラホックが外れやすくなった駒手山高校内では、めくるめくラッキーイベント(ブラぷちっ☆いやん♡)が大量発生! 

 

 男子生徒は歓喜に沸き、女子生徒は顔を茹で上げる。

 生徒たちはそんなトキメキハラハラ学校生活を過ごす! 

 ……かに思われたが。

 もちろん、そうは問屋が卸さない。

 

「みんなヤバいっす!! 近藤先輩がっ!」

 

 早川の叫び声と共に、男子黒魔術部の青春の1ページがまた新たに加わろうとしていた。

 

★☆★☆★☆★

 

 時は流れ放課後。

 

 生徒達は授業を終え、各々が所属する部活動へと流れ行く頃。

 

 科学部もとい、男子黒魔術部の面々も理科室に顔を揃え始め、今日のブラぷちっ☆発見!成果や、今後の筋トレメニューについてなど、普段の活動と特に変わらない穏やかな雑談に興じていた。

 

「風紀委員が横にいると皆挨拶返してくれるな〜。まあ、大体は風紀委員の方に顔を向けてだけど」

 

「ふっ、俺なんて目の前で挨拶交わした二人が同時にぷちってた所を目撃したぜ? しかも片方は生徒会の書記ちゃん!」

 

「……あ、もしかして、なんか引っ叩かれてたのお前か?」

 

 

「書記ちゃんが恥ずかしさの余りパニクってビンタした上級生に『ありがとうございます!!』って返された事件な? お前だったのか……」

 

 下級生の女子からご褒美を貰ったと前向きに受け止め笑う者とそれを気の毒そうに見る者。

 

 

「女バスと女バレーの練習中はそんなでも無かったな……」

 

「そりゃ運動部はインナー変えるだろうし、部活中はブラぷちっ☆の発生率は低めだよ」

 

「昨日は家庭科部が凄かったぜ? パンの生地をこねる時なんて特に……むふふ」

「うわ、そっちは思いつかなかったな〜」

 

 部活動中の女子を偵察に向った者。

 

「やっぱり階段が一番じゃねえか? なんといっても揺れる回数が段違いだしよ……階段だけに」

「おい、それはいいけど北側の階段はあんま近寄るなよ? 科学部はあの辺居るとヤバいからな?」

 

「……え、それってどういうことですか?」

 

「あー、1年は知らんかー。まあ、あんまあの階段は使うなって事で覚えとけ」

 

 こうして彼らは少しでもブラぷちっ☆の遭遇率を高めようと、各々が調査した情報を共有し合っているのである。

 科学部故に、地道な観察とその経過を記録する事に関しては一家言持っている学生であるのだが、使用用途が不届きな事この上ない。ちゃんと科学をしないか。

 

 そんな部活動の最中、

 

 

「ヤバいっす! ヤバいっす〜〜!!」

 

 

 理科室の外からドタドタと忙しない足音が。

 

 

 

「こ、近藤先輩が怖い女子生徒達に拉致られたっす!!!」

 

 足音の主は部屋に駆け込むやいなや、慌てた様子で叫ぶ。

 肩で息をする程とは、いったいどこから駆けつけてきたのやら、男子黒魔術部1年早川である。

 

「ん? 近藤が拉致?」

「…………あー、近藤なぁ? またかよ……」

「とりあえず早川、扉はちゃんと閉めとけ〜」

 

 

 既に理科室に居た男子黒魔術の面々は落ち着かない後輩を諫めつつもそんな反応。打って響かぬとは彼らの事か。

 

「あ、あれ? 皆、なんか反応が薄くないっすか?」

 

 

 そんな先輩達の様子に少し戸惑いつつも後ろ手に扉を閉める早川。

 この低反発クッションな反応は何故なのかと頭を回すも、息も整わぬ現在の脳みそではその真意を想像できないようだ。

 

 今、彼の脳には酸素が足りない! 

 

 

「や、ヤバいんすよ! 連れてった怖い先輩ってのも「令和のスケ番」とか言われてる人らしいんす! 他にもブチギレた運動部の女子とかが何人もいたって!」

 

 早川後輩は先輩達のリアクションよりも事実報告を優先させる事にしたのか、まくし立てながら最悪の事態を想像してサッと顔を青くする。

 

「きっと近藤先輩、今頃ボコボコに……大事件っすよ!」

 

 彼の脳内では、女子生徒に囲まれ倒れ伏す、血だらけボコボコ顔な近藤の姿が! 

 彼はうわ言で仲間達に助けを求め、涙と血を流している……あくまで想像だが。

 

 

「まあ落ち着け早川、何を想像してるか分からんが心配は無いさ。とりあえず座るといい」

 

 小刻みに震える後輩に落ち着くように諭すのは我らが黒田部長であった。

 

 彼のまったく焦る様子のないどっしりとした振る舞いに、さしもの狼狽えを見せていた早川も従わざるを得ない。ひとまずは促されるままに角椅子に腰を落とす。

 

「黒先輩、こんな時に落ち着いてなんて……」

 

 座りはしたものの、視線が外へと泳ぐそわそわ早川。

 このまま止めなければすぐにでも部室を飛び出していきそうな程の焦りに、かたかたと角椅子の脚が床を打つ。

 

 そんな彼に黒田は短く、

 

「7回だ」

「えっ?」

 

 さらりと告げられる謎の回数。

 

 

「な、何が7回なんっすか?」

 

 早川にはとんと思い当たる節も無い。

 

 

「…………」

「あの〜……黒先輩?」

 

 中々次の言葉を開かない口と静かな目線を向け続ける瞳。

 

 その目を見つめ返して意味を探ろうとする内に、ようやく早川は焦りを忘れることができた。

 

 

「えと……あの……」

 

 落ち着きを取り戻した早川に黒田はようやく口を開く。

 

「7回とは、これまでに近藤が女子生徒に連れて行かれた回数だ」

「えっ!? はい……?」

「進級してからは無かったが、1年の時に3回、2年で4回やられている。今日で8回目だな」

「はぁ……8回目っすか……って、えぇ!? 8回も!?」

 

 近藤、実は常習犯だったらしい。

 

 その華々しい実績に、早川の心配も大きな驚きによって押しやられどっかにいってしまった。ところてん方式の脳内構造をした単純後輩である。

 

 

「近藤も落ち着いたかと思ったけどな〜」

「この前はなんでだっけ? 階段下で腹筋だっけ?」

 

「そりゃ2年の春だからもっと前だな……」

「確か冬だったから、アレじゃね? さつまいもの……」

「あ〜、そんな事もあったなぁ」

 

 近藤の奇行を懐かしむ部員の面々は一様に落ち着いたまま。

 

 

 彼が今も無事に学校生活を送れている事を踏まえると、どうやらそこまで心配する事件では無いらしい。

 呆れた雰囲気すら混じったほのぼの空気、不憫なり……近藤。

 

 

「それで早川よ、近藤は何をしでかしたんだ?」

 

 

 さて、そんな仲間たちの〝不心配〟をよそに〝微心配〟程度はしている黒田は話を進めにかかる。

 流石俺達の部長! その慈悲深さは長たる所以か。

 

「そ、それが……」

 

 うながされるままに早川は見聞きした情報を仲間たちに伝え始める。

 

 

 

 近藤を目撃した者曰く、廊下で歩く女子生徒に駆け寄って挨拶していた……と。

 

 その〝挨拶〟というのも『追い越し様に肩や背を叩いて声をかける』という一連の行為がセットらしく、明らかに親しい仲の友人にするような物を、見境無しの不特定多数に繰り返し行っていたらしい。

 

 そんな〝挨拶〟を試み、廊下を何度往復する内に気の強い運動部女子達がキレ始め、ついには例の〝スケ番〟にも見つかり逃走。

 

 その後3クラス分の距離を走り抜けるも、敢え無く御用となったそうだ。せいぜい20メートルの逃走劇!

 

 連れ去られ様には「くそぉっ! 階段を駆け降りれればこんな事にはっ! この足めぇっ……」と訳の分からない供述もしていたそうで、一時辺りは騒然となったとかならなかったとか。

 

 

 

「近藤のやつ、無茶しやがって……」

 

 話を聞いていたうちの誰から漏れ出た声だろうか。

 

「近藤の野郎、あいつマジかよ……」

「まったくだぜ、まさかブラぷちっ☆が起きるのを待たず、自ら起こしに行くなんてっ!」

 

「そんな発想が無かった訳じゃないけど、実行に移す奴がいたんだねぇ」

 

 仲間の無鉄砲な行動を知り驚く者、呆れてため息をつく者。

 

 勇気と蛮勇は違うと言う。奴は後者の方であり、オマケに馬鹿と短慮が芋づるで付いて回るお祭り野郎である。

 

 ……それでも彼の無謀(勇敢)さ、そしてそのスケベ心には敬意を抱いき、ピンチとあらば助けに向かわねばならぬと誰しもが思った! 

 

 

「皆、いくぞ。せめて骨は拾ってやらねばアイツも報われぬ」

 

 

 ゆるりと立ち上がった部長が扉に向う。

 

 部員達もやれやれ仕方が無いなとその背を追い始め、

 

「いや、流石に死んではいないと思うんっすけど……え? まさかマジで死んでるかもしんないんっすか〜!?」

 

 最後尾を追う早川のツッコミだけが、理科室に残って小さく響くと消えた。

 男子黒魔術部の今日の部活動はこうして始まった。

 

 

★☆★☆★☆★

 

 場面は変わり校舎裏にて。

 

 そこには両手を後ろに組まされ立つ近藤と、向き合う形で女子生徒が複数人辺りを陣取っていた。

 

「紫博ぉ〜……あんなに待てって呼んでんのに、アタシ達から逃げるなんて悲しいじゃんよ〜?」

 

 女子軍団の先頭、近藤の目の前に立つ女子生徒が声をあげる。

 

 コレは『男子を呼び出した女子(とその取り巻き)によるドキドキ告白イベント』だろうか……? 

 

「お前ちょっとは大人しくなったかと思ったら、今度はウチらをド突いて回ってやがるなんて、何考えてんだぁ?覚悟は出来てんだろうなぁ?」

 

 いや、それには程遠い『男子の首根っこを掴んだ女子による令和のヤキ入れタイム』であった。

 

よくよくドスの効かされたその声は、すぐ目の前の下手人の鼻先を撫でる。超コワい。

 

 

「ぐぬぬ……いや、ド突いてなんてねーよ。ただ俺はみんなに挨拶をしてだなぁ」

 

 

 言い逃れをしようという心理故にか、視線が下がり、メンチを散切りバラに切ってくる詰問者に目を合わせられない容疑者近藤。

 

 

「あぁーん? あいさつ……挨拶ねぇ?そういやアタシもお前に挨拶がまだだったわぁ……」

 

 そんな苔の生えそうな言い訳に「ハンッ」と鼻で笑いつつ、眼光をより一層強める威嚇の主が、半歩引いた。

 

 ふっ、と風がうなる。

 

「こんの、馬鹿シバぁ!!!」

 

「ふべぇぇっ!!?」

 

 そうして一拍の間に、容赦無い〝挨拶〟が近藤の右頬にさく裂した。

 

 近藤の言葉を借りるのであれば、女子からの元気な挨拶がおみまいされる。

 戯言を抜かしたその頬に! 季節外れの紅葉が訪れようとしていた! 

 

「なに人の胸見て鼻の下伸ばしてんのよ! こん変態が!!」

 

「な、ナイスバウト……」

 

「やかましいわ!」

 

 バチーンッと返しのビンタもお見舞いする。

 ようやく胸元が邪な目線から解放されたと確信した彼女は、手をいまいましく振りつつも一旦近藤から距離をあけた。

 

 

 どうやら、先ほどから近藤の視線が下がっていたのは睨まれたからではなく、単に目の前の女子の胸元に目線が吸い寄せられていたかららしい。

 

 近藤紫博……こんな時にもおっぱいの魅力に逆らえない実直な高校生男児。これが男という生き物の悲しき性か。

 

 

「ねぇ、ナオ〜? あんま近藤の事叩いても逆に喜ぶだけじゃない?」

「そうそう、奈緒が手を痛めても割に合わないよぉ?」

「やっぱ部室からボール持ってこよっか? あっ、それとも竹刀借りてくる?」

 

 

「別にいらないよ、みんなは先生が来ないか周り見てて」

 

 

 ナオと呼ばれた彼女は、周りの女子からの提案を断りつつ近藤に向き直る。

 この彼女はそう、マテヤ校にて〝令和のスケ番〟などと恐れられる女。五十嵐奈緒であった。

 

 

 先の変態以外には睨みを利かせる必要は無いと、周りに見せるその表情は存外にも柔らかい。

 

 

 少し長い後ろ髪をサイドテールに纏め、邪魔くさそうに前髪を払う様は頼れる姐さんとでも言えばいいだろうか。

 制服の着崩し方も、〝だらしの無い〟と言うよりかは〝動きやすくしたい〟為のものだろうと見て取れる装いだと分かるもの……いや、あるいは〝胸元がきつい〟も含まれているかもしれない。

 

 

「おぉおぉ、馬鹿シバぁ……お前にゃ口で言ってもわかんねぇだろうからな? そんなお前でもわかるように、コレからアタシがきっちりと、その性根を叩き直してやんよ……」

 

「ぐふ……、う……、うぬぬぬぅ……」

 

 握りこぶしからパキポキ骨を鳴らす奈緒の姿に、低く唸り声を漏らす頬を腫らした近藤。

 

 これは恐怖からだろうか? それとも後悔か? 

 

 

「…ま…、…ゆ…な…………う…………」

 

 何かを呼んでいるのか、漏れ出るか細い声。

 

 それは誰の耳にも届かぬ程小さく、膨れた頬の内から空気が抜ける音にも聞こえる。

 未だ星がまたたく視界の中、彼女の拳の方を見つめる男は何を思うか────

 

 

 

「…………」

 

(……まじか!?ゆ、指を鳴らすだけで腕がっ!腕がおっぱいを寄せている!?)

 

 

 やべぇ、コイツこんな時もおっぱい見てやがった。

 

 

 ────続く! 

 

★☆★☆★☆★

 

 




生徒会書記ちゃん
挨拶運動の最中、お辞儀をした拍子にブラのホックが外れ盛大に取り乱す。
その際、心配そうに声をかけてくれた上級生の先輩に思わずビンタをかましてしまう。
我に返り直ぐ様謝ろうとするも、それよりも速く生きの良いお礼を言われ今度は半泣きになってしまう。

この後、叩いてしまった事を謝りに行きたいと、その先輩と同じクラスらしい生徒会長に相談するが『……え?悪いこと言わないから、やめといたら……?』と、何故か引き留められている。
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