ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第13話 サワチーとの初対面 2

 あれから数回、アオとサワチー、俺の3人で『かどつよ』をプレイした。会話もそれなりの頻度で交わすようになったものの、数字がはっきり見えるまでには至っていない。気さくに話しつつも、どこか線を引いているような距離感があった。

 

 名波さんや瀬戸会長とは少しずつ話せるようになってきたものの、やはりネット越しで仲良くなるのは難しいか、と廊下を歩きながら考えていた。すると突然、後ろから肩をポンと叩かれた。

 

「よっす。トモで合ってるよねー?」

「えっ?」

 

 振り向くと、肩までの黒いストレートヘアーに、大きな四角い黒縁眼鏡の美女が立っていた。彼女の整った顔立ちを見て思い出した。確か、最初に挨拶だけ交わしたクラスメイトだ。名前は、唐沢千紗(からさわちさ)

 

「え、唐沢さん? ってその声、まさか!?」

「そ、これがサワチーの真の姿だー。なんちって」

 

 眼鏡を外すと、まるでモデルかと思えるような整った顔立ち。光の加減もあって、目元が一段と鋭く見える。思わず息をのんだ。なるほど、真の姿と言えそうだ。

 

「まさか、クラスメイトだったなんて……」

「うちも流石に驚いたよねー。ちなみにアオって青野っしょ? まだ明かしてないから不明だけど、ほぼ確だよね」

「ああ、アオは青野で正解だよ。……って、アオはまだ知らないのか?」

「教えてなーい。てゆーか、うちは基本リアルで会うのは歓迎してないから、アオにも教えるつもりないよん」

 

 やっぱり俺の事は警戒していたんだな、と納得がいった。リアルでは会いたくない、という人もいるのは知っている。俺としては、そういうのもあると理解はしている。

 

「……あれ? じゃあ、何で俺には会ってくれたんだ?」

 

 ただ腑に落ちないのは、なぜ俺には今明かしてしまったのだろうという点だ。リアルは歓迎しないどころか、唐沢さんから明かしちゃってるし、いいのだろうか。

 

「んー。うまく言えないけどさ、ネット越しでもなんとなく感じない? この人は大丈夫そー、とか。あいつはちょいヤバめかー、とかさ」

「あー、確かにチャットでもそういうのあるな。直接会うときよりも、言葉が強くなる人とかいるし」

「そーそー。……人の本名とか勝手にバラすのは論外中の論外だね」

 

 彼女の口調は軽いのに、説得力がある。彼女が論外と切り捨てた相手に、青野がバッチリ入ってしまっている。これは間違いなく、好感度が下がっているだろうな。俺は内心でため息をついた。

 

「でも、フレンドは続けてるんだな」

「レベルだけは高いからねー。いざというとき、人柱になってもらうのさ」

「ひどい……」

 

 唐沢さんの中で、青野の扱いはかなり雑なようだった。攻撃力に全振りしているから、突撃してもらうのにちょうどいい、と彼女は笑った。

 

「あー……でさ、この前はごめんね」

「え、何が?」

 

 何か、謝られる事があっただろうか。心当たりがない俺に、唐沢さんは核心を問いかけてきた。

 

 

 

「あの時、トモが敵に囲まれてたの、わざとっしょ?」

「……バレてた?」

「うん。よく考えたら、あんな初期のダンジョンにトラップなんか無かったし」

 

 

 

 自分では自然に振る舞ったつもりだったのに、すべて見抜かれていたことに驚いた。彼女の洞察力は、結構侮れないらしい。

 

「うちが空気悪くしちゃったのを、カバーしてくれたんよね。だから、そのお礼をしに来たんよ」

「お礼なんていいよ。あれはアオが悪いだろ」

「残念、もう正体明かしちったもんねー。クーリングオフも無ーし」

「なんじゃそりゃ……」

 

 少し冗談交じりの会話に、気持ちがほっと緩む。目の前の彼女の笑顔と距離感に、ネット越しでは感じられなかった親近感がそこにあった。

 

「でも実際さ、連携とかちゃんと考えてくれるのは大事なんよね。それ考えなくていいんなら、そもそもネトゲとかやらんし」

「そうだな……アオはただ力自慢がしたいだけな気がしたけど」

「あれも楽しみ方ではあるんだけどねー」

 

 こうして目の前で話していると、ネット越しよりとは少し空気感が違う様に思える。彼女がクラスの友達と話している空気感とも、これまた違う。まるでどちらも混ざったような感じだ。これが、本来の彼女の姿なのだろうか。

 

「へへっ、うちの直観大正解ー。やっぱトモとなら付き合っていけそうだね」

「そ、それは良かった」

 

 心を開いてくれたことに安心したのだが、少し気になる点がある。さっきから、距離感がめっちゃ近い。彼女の手が肩や腕に触れるたび、心臓がうるさくなる。

 

「そんじゃ、今後ともよろしくー」

 

 唐沢さんは、黒髪を靡かせながら小走りで去っていった。彼女に触れられた余韻が、まだ強く残っている。

 

 

 実は、唐沢さんと直接会ったときから数字は見えていた。数字は60で、少し桜色のように好感触に見えていたのだ。だが、青野への不満を口にするたび、数字は少しずつ減っていった。今は55まで下がり、桜色も少ししおれたように見える。

 

 こうして、俺とサワチーの距離は少し縮まった。だが、数字を通して青野との関係を意識するたび、複雑な感情がふっと浮かび上がる。仲良くなれたのに、数字は下がっている。この違和感が、ほんの少しだけ俺の胸に不安を忍び込ませたのだった。

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