ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
以上が、彼女たちとの出会いだ。なぜだろう、思い出しただけなのに、ひどく疲れてしまった。
外ではまだ、部活動に精を出している声たちが聞こえてくる。こんな奇特な能力を持ってしまった俺の悩みなど、彼らが知ることは永遠に無いのだろうな、と気持ちが落ち込んでいく。
最初に青野と話した時の自分は、どこかおかしかった。
謎の能力が身についてしまった。どうしてなったのかとか、何故自分でなく青野の好感度なのかとか。わからないことばかりだけど、百歩譲って受け入れたとしよう。
しかし、かといって、青野に好感度を教える義理は無いはずだ。
青野から能力を譲渡されて、真剣にお願いされたのならまだ納得できる。しかし実際には、俺が自ら青野への協力に身を乗り出した。どうしてあんな事を言ってしまったのだろうか。あの瞬間、何者かに操られていたかのような、不気味な感覚だった。
そして現在、俺は自分が友人キャラとして扱われていることに、はっきりと疑問を感じ始めた。
「……友人キャラって、何なんだろうな」
青野は俺に、友人としてのアドバイスを求めてきた。俺はそれに幾度となく答えた。
「幼馴染だからって、雑に扱っていいわけじゃないぞ」
「会長への強引なアピールは逆効果だ」
「そもそもネットのリテラシーを守らないと印象が悪くなる」
「まずはボディガードに認められるところから始めるんだ」
どちらかと言えば、青野のためと言うより彼女たちのためだった。どうしたら彼女たちに受け入れてもらえるかを力説してきた。
だというのに、青野には全てのれんに腕押し。まるで改善が見られなかった。青野はあくまで、彼女たちを攻略するという気持ちでいる。……主人公が全く成長しないゲームなんて、誰が続けるだろうか。
「……なんかもう、疲れたな」
いくら頑張っても、報われない。やりがい搾取どころか、やりがいすら無い。友人キャラというポジションに、俺は心底うんざりしていた。
もう少しだけ、休んでいよう。そう思っていたところに、思わぬ足音と声が廊下からやってきた。
「なんだ、教室にいたんじゃない」
「あれ、名波さん?」
青野の幼馴染ヒロインである、名波さんだった。以前は青野と一緒に帰っていたはずなのだけれど、教室に何か忘れ物でもしたのだろうか。
「どうしてここに? 何か忘れ物でもしたのか?」
「それはこっちのセリフよ。今日は用事無いんでしょ?」
「あ、あぁ。生徒会も休みだし、例の手伝いも今日は無しって連絡が来た」
「ふーん、やっぱりあんたってお人好しよねー」
瀬戸会長の手伝いや、一ノ瀬さんの練習相手は、今も続いている。その事は、名波さんも既に知っている。初めは好感度を確認するために接していた。けれど俺は能力とか関係なく、彼女たちとの関係を続けていきたいと心から思っている。
まだ帰ろうとしない俺を見て、名波さんは俺の席へグイグイと近づいてくる。そして俺の腕を掴んで持ち上げてきた。
「ほら、一緒に帰るわよ」
「え? まさか、そのために俺を探してたのか?」
「……そうだけど、何か悪い?」
「なんでちょっと怒ってるんだ……?」
最近、名波さんが俺を誘いに来る機会が増えた。誘われるのは嬉しいし、好感度の確認もできるから一石二鳥ではある。ただ、青野よりも俺が優先されているような気がしている。それだけじゃない。今も違和感をヒシヒシと感じている点がある。
「……あの、名波さん?」
「どうしたの?」
「なんで俺の手を握ってるんだ?」
俺の問いに、名波さんはしばらく黙りこんでから、そっぽを向きながら呟いた。
「…………別にいいじゃない」
「いやいやいや」
名波さんは俺の手を掴みながら、少し早歩きで歩き出した。表情が見えないから、彼女の考えがわからない。
「私にもわかんないんだもん。気づいたらもう、手を握っていたっていうか……」
彼女の呟きは、強く響く足音にかき消されてしまった。俺の視界には、46という数字。この数字をどうにか上げたいという気持ちは、風前の灯火のように消えかかっていた。
ふと、思う。俺は今、名波さんにとってどのくらいなのだろうか。その答えを、自身の能力は答えてくれそうにない。
「ほら、早く行くわよ。
夕日に染まった彼女の眩しい笑顔が、俺に向けられた。少なくとも、嫌われてはいないと思う。多分。