ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第16話 違和感の始まり

 以上が、彼女たちとの出会いだ。なぜだろう、思い出しただけなのに、ひどく疲れてしまった。

 

 外ではまだ、部活動に精を出している声たちが聞こえてくる。こんな奇特な能力を持ってしまった俺の悩みなど、彼らが知ることは永遠に無いのだろうな、と気持ちが落ち込んでいく。

 

 最初に青野と話した時の自分は、どこかおかしかった。

 

 謎の能力が身についてしまった。どうしてなったのかとか、何故自分でなく青野の好感度なのかとか。わからないことばかりだけど、百歩譲って受け入れたとしよう。

 

 しかし、かといって、青野に好感度を教える義理は無いはずだ。

 

 青野から能力を譲渡されて、真剣にお願いされたのならまだ納得できる。しかし実際には、俺が自ら青野への協力に身を乗り出した。どうしてあんな事を言ってしまったのだろうか。あの瞬間、何者かに操られていたかのような、不気味な感覚だった。

 

 そして現在、俺は自分が友人キャラとして扱われていることに、はっきりと疑問を感じ始めた。

 

「……友人キャラって、何なんだろうな」

 

 青野は俺に、友人としてのアドバイスを求めてきた。俺はそれに幾度となく答えた。

 

「幼馴染だからって、雑に扱っていいわけじゃないぞ」

「会長への強引なアピールは逆効果だ」

「そもそもネットのリテラシーを守らないと印象が悪くなる」

「まずはボディガードに認められるところから始めるんだ」

 

 どちらかと言えば、青野のためと言うより彼女たちのためだった。どうしたら彼女たちに受け入れてもらえるかを力説してきた。

 

 だというのに、青野には全てのれんに腕押し。まるで改善が見られなかった。青野はあくまで、彼女たちを攻略するという気持ちでいる。……主人公が全く成長しないゲームなんて、誰が続けるだろうか。

 

 

「……なんかもう、疲れたな」

 

 

 いくら頑張っても、報われない。やりがい搾取どころか、やりがいすら無い。友人キャラというポジションに、俺は心底うんざりしていた。

 

 

 もう少しだけ、休んでいよう。そう思っていたところに、思わぬ足音と声が廊下からやってきた。

 

「なんだ、教室にいたんじゃない」

「あれ、名波さん?」

 

 青野の幼馴染ヒロインである、名波さんだった。以前は青野と一緒に帰っていたはずなのだけれど、教室に何か忘れ物でもしたのだろうか。

 

「どうしてここに? 何か忘れ物でもしたのか?」

「それはこっちのセリフよ。今日は用事無いんでしょ?」

「あ、あぁ。生徒会も休みだし、例の手伝いも今日は無しって連絡が来た」

「ふーん、やっぱりあんたってお人好しよねー」

 

 瀬戸会長の手伝いや、一ノ瀬さんの練習相手は、今も続いている。その事は、名波さんも既に知っている。初めは好感度を確認するために接していた。けれど俺は能力とか関係なく、彼女たちとの関係を続けていきたいと心から思っている。

 

 

 まだ帰ろうとしない俺を見て、名波さんは俺の席へグイグイと近づいてくる。そして俺の腕を掴んで持ち上げてきた。

 

「ほら、一緒に帰るわよ」

「え? まさか、そのために俺を探してたのか?」

「……そうだけど、何か悪い?」

「なんでちょっと怒ってるんだ……?」

 

 最近、名波さんが俺を誘いに来る機会が増えた。誘われるのは嬉しいし、好感度の確認もできるから一石二鳥ではある。ただ、青野よりも俺が優先されているような気がしている。それだけじゃない。今も違和感をヒシヒシと感じている点がある。

 

「……あの、名波さん?」

「どうしたの?」

「なんで俺の手を握ってるんだ?」

 

 俺の問いに、名波さんはしばらく黙りこんでから、そっぽを向きながら呟いた。

 

「…………別にいいじゃない」

「いやいやいや」

 

 名波さんは俺の手を掴みながら、少し早歩きで歩き出した。表情が見えないから、彼女の考えがわからない。

 

 

「私にもわかんないんだもん。気づいたらもう、手を握っていたっていうか……」

 

 

 彼女の呟きは、強く響く足音にかき消されてしまった。俺の視界には、46という数字。この数字をどうにか上げたいという気持ちは、風前の灯火のように消えかかっていた。

 

 ふと、思う。俺は今、名波さんにとってどのくらいなのだろうか。その答えを、自身の能力は答えてくれそうにない。

 

「ほら、早く行くわよ。()()!」

 

 夕日に染まった彼女の眩しい笑顔が、俺に向けられた。少なくとも、嫌われてはいないと思う。多分。

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