ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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自称主人公の居ぬ間に
第17話 友田の予定は埋まっている


 高校1年の夏。学校にも慣れ始め、段々と皆が自由に遊びだす頃合いだろう。俺もありがたいことに、遊びに誘われることがある。こういう時、交友関係を大事にしていてよかったと痛感する。

 

「なあ友田ー。お前も明日のカラオケ来るかー?」

「ちょっと待ってくれ、えーと……」

 

 こうして急遽誘われる事もあるため、俺は予定帳をつけるのが習慣になっていた。慣れた手つきでスマホの予定アプリを開く。今日の予定は、残念ながら名波さんとの先約がある。

 

「あ、悪い。もう予定が入ってる」

「マジかよー、最近俺達と全然遊んでくんないじゃんかよー」

 

 ぶーぶー、と口をすぼめている彼は、誘田(さそいだ)くん。無造作な金髪でシャツを緩めに着ている彼は人懐っこいタイプで、クラスの中心で皆に可愛がられている。

 

「そういえば、最近よく名波さんに連行されるよね」

「連行って……」

「あの子って、青野君の幼馴染だったよね。なのに今は友田君といる……三角関係、しかも友田君優勢? 何だか、捗りそうね」

「待って待って」

 

 ちょっと尖った物言いの彼女は、光井(みつい)さん。短めの黒いポニーテール、真面目そうな黒縁メガネをかける彼女は、創作活動が趣味らしい。

 

 そんな光井さんは、名波さんが青野より俺を選んでいる、みたいな言い方をしてきた。いやまさか、考えすぎだろう。幼馴染の付き合いに比べたら俺なんか全然なはずだ。

 

「光井落ち着けー。あ、じゃあさ。明日はどうなんだよー?」

「明日は……生徒会の手伝いだな。その後も別の用事が入ってる」

 

 予定帳には、瀬戸会長と一ノ瀬さんの名前が書いてある。一ノ瀬さんとの練習については、周囲に漏らすなとボディガードの倉敷さんに厳命されている。破ったら何をされるかわからないので、内容は伏せておいた。

 

「生徒会の手伝いとか、お前もう毎週やってるじゃんかー。……もう役員より働いてるんじゃね?」

「先週なんか、あの瀬戸会長が直接このクラスまで呼びに来ていたし……これ、実はただならぬ関係とか……」

「あー、また光井が自分の世界に入っちまった……友田、こいつの言うことは気にしなくていいからなー」

「あはは……」

 

 何か色々勘ぐられ始めた。まさか、たまたまだろう。瀬戸会長には雑談相手という重要な役割があるってだけで、生徒会に入っているわけじゃない。

 

「くっそー、じゃあ明後日は」

「オンラインゲームの約束が」

「どんだけ埋まってんだー! 観光地のホテルじゃねえんだぞー!」

「誘田君にしては、絶妙な例えね」

「なんだと光井ー!」

 

 クラスで恒例となった、誘田くんと光井さんの猫パンチ合戦が始まった。

 

 2人をよそに、俺は改めて予定帳に目を向ける。たまたま、予定が埋まっているだけだ。そう反論するために、今月分を見直した。

 

 そして、気づいた。予定帳には、その日会う相手の名前ごとに色分けをしている。白黒な予定帳なのに、ページ全体がびっしりと、カラフルに染まっていた。

 

(って、あれ? 今月の予定……こんなに埋まってたっけ? しかも……)

 

 

 名波さんと出かける約束。瀬戸会長の手伝い。サワチーとのイベント周回。一ノ瀬さんの男嫌い克服練習。いつの間にか、俺の予定はヒロイン4人の名前で埋め尽くされていたのだ。

 

 

 思い返してみれば、彼女たちの動きに予兆はあったのだ。

 

 

 最近、名波さんが青野と話しているのを見かけない。うちの教室に来たら、まず俺に話しかけてくるからだ。

 

「春吉? あいつは別にいいわよ……それより、今日も一緒に帰りましょ。今日は部活の手伝いはしなくて良いのかって? なんか、部員の誰かに、義人を取られるのが嫌で……な、なんでも無いわよっ!」

 

 生徒会室で瀬戸会長と2人きりの時間が増えた。その時間だけは、冷たい雰囲気などどこにも無い。

 

「友田くんのアドバイスのお陰で、雑談が多少は上手くなった気がするわ。告白を断るのも、抵抗が無くなってきたし。……誰かと付き合ったりしないのか? そのつもりは無いわ。少なくとも、私の内面を知らない人とは、ね」

 

 サワチーからも「支援欲しいから頼むわー」とよく誘われる。初心者に毛が生えた程度の俺にも、親切に手ほどきをしてくれるようになった。

 

「え、レベルが足んなくてキツい? なら上げるの手伝うよー。……アオを誘ったほうが効率良い? いやいや、レベル上げも醍醐味っしょ。ほら、引き続き2人でクエスト行こうぜー」

 

 一ノ瀬さんとの練習も本当にちょっとずつだけど、根気よくやっている。口調も、少しだけ解けてきた。

 

「や、やっと殿方に触れることが出来たのです! ……まだ、指先だけですけれど。……辛くないか、ですか? ふふっ、相変わらず、お優しいのですね」

 

 あれ、本当に4人との記憶ばっかりだ。他の友達とも遊んでいるはずなのに、印象が強くて彼女たちとの出来事ばかりが思い浮かぶ。

 

「くっそー、友田を誘うには予約しとかないといけないのかよー」

「残念。友田君の交友関係は、やっぱり興味深いわ。また今度詳しく聞かせて」

「ごめんな、また誘ってくれ」

 

 せっかくの誘いを断るのは心苦しい。けれど、先約を無しにするのはもっと良くない。俺の体は1つしかないから、妥協するしかないのだ。

 

 (青野には、言わないほうがいいだろうな。俺には全く興味無いみたいだけど、皆と仲良くなってる事を嫉妬されても困るし)

 

 

 好感度の確認以外では、全く話さなくなってしまった青野。クラスにも全く馴染んでいない彼は今、どうしてるんだろう。同じクラスなのに、存在がとても遠くに感じた。

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