ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第19話 味見だけじゃ終わらない

 優紀と約束をした翌朝、教室に訪れた彼女は俺に耳打ちをしてきた。

 

「……じゃあ、お昼にね」

「うん、わかった」

 

 優紀はそれだけ言って、そさくさと教室から出ていった。もう料理を作ってきたのか、と彼女の行動力に感心した。俺の横で一部始終を見ていた青野は、状況が掴めずポカンとしていた。

 

「……おい友田、今のなんだ?」

「今のって、ゆ……名波さんとの話か?」

 

 昨日、本人から名前呼びが許可されているものの、「なんか恥ずかしいから、2人の時だけにして」と優紀からお願いされていた。ちょっと言いかけてしまったけれど、青野は気づいていないようだ。

 

「当たり前だろ! 俺の知らない間に、一体何の約束をしてるんだよ?」

 

 あっさりと返した俺の反応が気に食わなかったのか、声を荒げてきた。クラスメイト達の注目を浴びてしまうから、落ち着いてほしい。

 

「何のって、バスケ部の手伝いだよ。前からちょくちょくやってたやつ」

「……そういえばやってたな。優紀の好感度を確認するためだったか」

「そう、それ」

 

 なんだか俺も、誤魔化すのがうまくなってしまった。優紀はそのうちバスケ部への差し入れも考えていたから、料理の味見は結果的にバスケ部の手伝いと……言えなくも、ない。はず。

 

「なんだ! 俺のためならしょうがないな!」

「そういう事だから、昼は別で食べる事になるよ」

「おう、わかった! そんじゃ俺は、生徒会室に行ってみるぜ!」

 

 どうやら、うまくごまかせたようだ。瀬戸会長にひたすらアタックするのは、逆効果だと何度も言っているのに。聞きやしない青野の事は、もう放っておこう。

 

 

 そして約束の昼になった。購買に寄らず、待ち合わせていたバスケ部の部室で、彼女は先に待っていた。

 

「お待たせ」

「あ、来たわね。はい、ここ座って」

 

 彼女に誘導されるがままに、隣に座った。肩がくっついてしまいそうな距離感に、少し鼓動が早くなる。彼女の膝の上には、風呂敷で包まれた弁当があった。かなり、大きいような気がする。

 

「じゃあ、これと……」

「え、レンゲ?」

 

 弁当を開ける前に、まずお箸じゃなくてレンゲを渡された。なぜ弁当にレンゲなのか。そう聞く前に、開いた弁当箱から答えが出た。

 

 

「はい、食べてみて」

「おぉ……お?」

 

 

 弁当箱の中身は、並々に入った麻婆豆腐だった。しかも真っ赤な色と浮かんでいる唐辛子の本数からして、多分激辛だ。

 

 本格的な香辛料の香りが鼻を抜ける。すごくおいしそうなのだけれど、ちょっと予想外すぎて思考が停止してしまった。初めての弁当にしては、ちょっと攻めすぎな気がする。

 

「や、やっぱり変かしら?」

「ああいや、確かに思ったより赤と白だったけど、問題ないよ。こういう弁当、コンビニで見たことあるし」

「そ、そう? なら良かったわ」

 

 俺が固まっていたのを見て、優紀は不安そうに眉を下げてしまった。慌ててフォローしたら、持ち直してくれた。内心、教室で開けなくてよかったと安堵しつつ、一口食べてみた。

 

「辛っ!? ……あ、でも美味しいな。すごく米が進む味だ」

「本当に!? 良かったー……」

 

 優紀は頬を緩めながら白米が詰まったもう1つの弁当箱を渡してくる。最初こそ戸惑ったけれど、女子からの手作り弁当は嬉しいものだ。

 

 ……いやそれにしても辛すぎる。まだ数口しか食べていないのに、新品のペットボトルのお茶がもう無くなりそうだ。美味しいけど、食べきれるかな。

 

「料理上手なんだね」

 

 何気なく言った一言。しかし、優紀は一瞬固まってから、両手を頬に当てて照れ始めた。

 

「……う、うれしい。家族以外に褒められたの、初めて」

「え、そうなの? 俺はてっきり……」

 

 青野が先だと思っていた。俺がそう言うのを察したのか、優紀は首を横に振った。

 

 

「……昔ね。あいつに約束してたの。私が料理を上達したら、食べてほしいって」

 

 

 幼馴染としての、約束。それは彼女にとって、とても大きなモノなはずだ。だったら、今ここにいるべきなのは、俺じゃなかったのではないか。

 

「そっ、そんなことより! まだたくさんあるんだから、いっぱい食べてよ!」

「あ、うん。それはもちろんだけど……」

「今は義人の感想がもっと聞きたいの!」

「!」

 

 戸惑う俺に構わず、優紀は鼻同士がくっつきそうな距離まで近づいてきた。彼女の真っすぐな目は、心から俺の感想を待っていると告げている。彼女の言葉に青野への未練とか、そういうのは感じられなかった。

 

「あ……ごめんっ! 近すぎたよね……あはは」

 

 ふと自分のしていることに気づいた優紀は、顔を赤くしながらパッと離れた。照れ笑いをする彼女を見て、俺も更に顔が熱くなってしまう。この熱は多分、麻婆豆腐の辛さだけじゃなさそう。

 

「ねえ、明日は何がいい?」

「……明日もいいのか?」

「うん。なんか、おいしそうに食べてくれるから次も作りたくなってきちゃったの!」

 

 彼女の世話焼きモードにエンジンがかかりだしたら、納得するまで止まらない。彼女を知るバスケ部員が、そう言っていたのを思い出した。

 

 優紀との予定が、更に増えることが確定した瞬間だった。その分だけ、青野への隠し事が増えるわけだが。また手料理が食べられるのか、と俺の心は踊っていた。ただ、次は辛くないやつでお願いしたい。

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