ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第2話 幼馴染、名波優紀

 俺は鞄から、少しだけボロが目立つようになった水色のノートを取り出す。その名も『好感度記録帳』。ノートには3桁の暗証番号を正しく入れないと開かない鍵が付いている。理由は簡単で、こんな怪しいノートの中を他人に見られるわけにはいかないからだ。

 

「昨日は頑張ったからな、流石にちょっとぐらいは上がってるだろ」

「何を頑張ったのか知らないけど、その代償が腕だったわけか」

「へっ、まあな……うぐぅっ」

 

 青野は何故か自信ありげに、力こぶをつくって見せる。そして筋肉痛に響いて唸りながらうずくまった。アホかこいつ、と少々呆れながら、付箋の付いたページを開く。

 

 そこには女子生徒4人の名前が書いてあった。名前の横には数字、下には俺の所感でコメントを記載している。当然、対象の4人はこんなことを書かれているなんて知らない。

 

 改めて思うが、これってかなりキモい事をしているのではないだろうか。そんな疑問を持ったものの、この事を咎めてくる者は今この教室にはいない。寧ろ目の前には、()()()()()()()()()()()()()しかいない。

 

 ()()()()()()()という名の、青野春吉がヒロインにどのくらい好かれているかを確認する時間が、今日も始まった。

 

 

 

「じゃあ、いつも通り上から順に見ていくからな」

「おうよ!」

 

 まず1人目。名波優紀(ななみゆうき)。彼女は青野と幼稚園時代からの幼馴染である。少し癖っ毛の茶髪が彼女の明るい性格をそのまま表している。平均よりも少しだけ身長が高いのもあって、注目を浴びやすい女の子だ。

 

 俺から見た感じ、2人の仲はそれなりに深い付き合いの女友達、という印象だ。俺達とクラスは違うものの、うちの教室へと遊びに来ては、俺も含めた3人で話すことが多い。他の人に対しても気さくに接することができるタイプだ。

 

 そんな彼女の、青野に対する好感度は――。

 

 

「名波さん、好感度は46だぞ」

「マジかよ……昨日は52じゃなかったか?」

「そうだな」

「そうだな、じゃねえよ! なんで入学してからずーっと、緩やかに下がり続けているんだ!?」

 

 

 好感度の数字は100点満点で、80以上なら恋愛対象と言える。青野はここを目指しているわけなのだが、現実は50を下回っている。つまり、名波さんにとって青野は恋愛どころか親友ですらなくなってしまったのだ。

 

「なんてこった……俺は今、親友ですら無くなっちまってるのか……?」

「普通の親友は約束をすっぽかさないんだよなあ……。放課後一緒に帰るって決めていたのにって、名波さん怒ってたぞ」

 

『もう地べたに頭つけて謝ったって、絶対許さないんだから!』

 これが、今朝の名波さんの口から出た本音である。

 

「う、それはそうなんだけど……。でもさぁ!」

 

 何か言い訳があるらしく、青野は机をバンと叩く。しかし思った以上に痛かったのか、くあぁっ……と声を漏らしながら、両手を赤く腫らして机に突っ伏してしまう。何してんだよ、と呆れ笑いが出た。

 

 青野は俺が笑ったことにイラッとしつつも、捲し立てるように喋りだした。

 

「生徒会長とのお出かけイベントが急に発生するなんて、聞いてなかったんだ! そんなレアイベントがあるなら、ノーマルイベントよりも優先するに決まってるだろ!?」

「イベントって……」

 

 俺は時々、青野の発言がよくわからないと感じる。幼馴染と一緒に帰ることをノーマルイベントとか、かなり失礼なことを言っている気がする。

 

「いやいや。前からの約束ドタキャンして、他の女子の予定を優先したんだろ? そりゃ怒って当然だ」

「しかしよぉ……会長の好感度を上げるイベントって、本当に少ないんだよ……」

「これで何度目だーって本気で怒っていたからな。ちゃんと謝っておけよ」

 

 まだ何かブツブツ言っているけれど、本当は多分、もうちょっと少ない数字だと思う。幼馴染だからと言って、ないがしろにされたらそりゃあ下がるのも当然だろう。

 

 

 そのせいで今朝の登校中、名波さんからその愚痴を一部始終聞かされて、苦笑いしかできなかった俺の身にもなってほしいものだ。

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