ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第20話 ヒロインを知る第三者の意見

 激辛麻婆豆腐をどうにか食べ終えた俺は、優紀とは別に教室へと戻った。

 

「友田君。優紀ちゃんの事でちょっと、いいかな?」

 

 控えめに片手を上げつつ話しかけてきたのは、所田愛香さん。優紀とは中学からの親友で、「優紀ちゃんについて、知らないことは1つもないよ!」と豪語している。

 

 少々内弁慶だけど、親しい相手には普通に接している。青野や俺は、優紀が仲良くしているという事で信用してくれているらしい。

 

「名波さんがどうかしたの?」

「ふっふっふ、隠さなくていいんだよ友田君。優紀ちゃんの事、名前で呼ぶのを認められたんでしょ?」

「……知ってたのか」

 

 当然だよ、と胸を張りながらニヤニヤしている。優紀は既に、所田さんには話していたらしい。秘密を共有できる信頼関係は、少しうらやましいと思える。

 

 反面、2人だけの秘密かと思っていたので、ちょっと残念にも感じた。

 

「ま、本当は私がくすぐり攻撃で聞き出したんだけどねー」

「おい」

 

 全然信頼関係とかじゃなかった。親友に攻撃とかするんじゃないよ。

 

「いやー、優紀ちゃんって隠し事下手だよねー。あと可愛いし。くすぐってる時のあの表情を見たら、新しい扉が開きかける所だったよー、うへへ」

「その話を俺はどんな顔して聞いてればいいんだ……?」

 

 ちょっと涎を垂らしている所田さんに引きつつも、俺は話を戻すことにした。

 

「それで、何の話がしたかったんだ?」

「そう! ぶっちゃけ、友田君は優紀ちゃんとどこまで進んだの!?」

「進んだって、何がだ?」

 

 一体何の話をしているのだろうか。わからずにいると、所田さんはじれったそうに俺への追求を続ける。

 

「だってさ、今までは青野君の面倒ばっかり見てたんだよ? それが今じゃ、友田君一筋になってるじゃん! 絶対何かあったでしょ!」

 

 彼女の力説にまさかそんな、と言い返すため口を開く。けれど、喉の手前で詰まって出てこなかった。

 

 お昼の時に優紀は、俺が家族以外で初めて手料理を食べた人だと言った。それはつまり、青野よりも先という事だ。

 

「確かに、前よりは信頼してくれるようになったとは思うけど……」

「いや、絶対それだけじゃないよ! 親友の勘がそう言ってるの!」

 

 彼女の気持ちの強さを目の前にすると、親友の勘という言葉に重みがあるように思えてくる。まだ納得していない俺に、所田さんは更に畳み掛けてくる。

 

「じゃあ見ててよ、これが以前の優紀ちゃんね」

『はぁー、しょうがないわねー』

「待って声真似上手くない?」

 

 所田さんの突然の特技披露に、思考が一瞬止まりかけた。

 

「で、これが今の優紀ちゃん」

『はぁ……しょうがないわね』

「再現度が高すぎる」

 

 その完成度の高さのせいで、逆に話が頭に入ってこない。

 

「どう? 違いわかった?」

「いや、似すぎていて、本人かと思った」

「そこじゃなくて! 優紀のビフォーアフターの方! 違いあったでしょ?」

「うーん……」

 

 所田さんに2つのパターンをもう一度やってもらい、自分なりに違いを考えてみた。

 

「なんか暗いというか。諦めが混ざっているような……?」

「でしょ? 青野君への期待が無くなりつつあるの。対して友田君には、どんどん心を許していってる」

 

 青野への好感度が下がっていってるのは、俺も数字を見てきたから知っている。けれど、数字に気を取られていたせいか、彼女が俺に心を許しているかどうかは、あまり気にしてこなかった。

 

 青野の好感度が下がり、逆にもしも俺への好感度が上がっていたのだとしたら。

 

 

「つまり、2人の立ち位置が逆転しちゃってるんだよ!」

 

 

 俺の考えを汲んだかのように、所田さんは核心を突いた結論を出してきた。

 

 返す言葉が浮かばない。そうかもしれない、と自分でも思ってしまったからだ。

 

「あれ、友田君どうしたの?」

「あ、いや。……俺、どうしたら良いと思う?」

「え、悩むところある? 好かれてるんだから別にどうもしなくていいんじゃない?」

「そうじゃなくて、えっと……」

 

 次を言おうとして、止める。ここから先は、俺の能力について話さないといけなくなるからだ。誰かに言った所で、俺の欲しい答えなんて知れるわけもない。

 

 苦し紛れになんでもないと言ったら、所田さんはこれ以上追及してこなかった。

 

 

「それにしても、昨日はびっくりしたよー。優紀ちゃん、ニヤニヤしながら中華鍋ガンガン振ってたんだもの」

「それはびっくりするな、確かに……」

 

 女子高生が笑いながら中華鍋を振るっている所を想像したら、なんだか笑えてしまう。彼女の料理の腕は、一体どの方向に向かっていくのだろうか。

 

「あれ、友田君のためだったんだなぁ……そしていつかお嫁に行っちゃうんだね。よよょ……」

「お母さんみたいな事言ってる……」

 

 ウソ泣きの演技まで見せる所田さん。本当に内弁慶なのか疑問に感じていたら、バンと机を叩いて俺に向きなおって告げてきた。

 

 

「優紀ちゃんの事、幸せにしてあげてね? 泣かせたら許さないから」

「だからお母さんかって。気持ちが重いから抑えてくれ」

 

 所田さんに謎の許しをもらえた所で、話は終わった。けれど、これから優紀とどう接していけばいいのだろうか、その答えはわからずじまいとなった。

 

 

 ちなみに、所田さんの青野への好感度は、驚異の10。触れたら自分も凍りつきそうな深く暗い青だった。

 

 彼女の中で、優紀を悲しませた青野の罪は重かったのだろう。しかし、0にさえならなければまだ逆転は可能だ、頑張れ青野。

 

 それはそれとして、自分はこれほどの冷たい数字を向けられないように気を付けよう。身震いしながら、そう決心した。

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