ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
生徒会室に迷いなく入っていく俺は、別に生徒会の役員ではない。だが先に室内で作業をしていた生徒会長は、俺を迎え入れてくれた。
「友田君、今日も来てくれて助かるわ」
というか、会長の手伝いとして呼ばれていた。
「今日も2人から告白されたわ。でも、雑談力が付いたおかげで後腐れ無く断れた。これも友田君のお陰ね」
「いえいえ。……卒業までに全ての男子生徒を斬った生徒会長、という伝説ができちゃいそうですね」
「止めてちょうだい。そうなったら私、これからどんな気持ちで朝礼台に立てばいいのかわからないわ……」
実は瀬戸先輩、この3か月で雑談が格段にうまくなっていた。今や俺の冗談にもすかさずのってくれるレベルだ。
最初は1ページだった彼女のメモは、今やびっしりと埋まったメモ帳と化していた。瀬戸会長が周囲から信頼される理由は、きっとこういうところにあるのだろう。
「それに、あなたの事はフッていないのだし」
それもそうか、と納得する。だからと言って、ここで告白するなんて無粋な事はしない。……何やら、会長がちょっと不満そうに見えるのはきっと気のせいだ。
「いつも思うんですけど、他の役員の人はどうしてるんですか?」
「私が呼んでいないから、来ることは無いわ」
「それでいいんですか??」
副会長とか書記とかいた気がするのだけれど、何度も手伝いをしに来ているのに、一度も会ったことが無いのは問題があると思う。
「良くはないのだけど……皆、私とお近づきになりたいって言い寄ってくる人ばかりだから。頼み事をするのが、なんだか悪い気がして」
彼女は周囲を突き放しているのではなく、ただ遠慮しているだけなのだ。会長が何か言おうにも、周囲は勝手に邪推して、過剰に反応してしまう。そんな状況では、例え俺でも意思疎通は難しいと思う。
「気にしなくていいんじゃないですか? 相手の勝手な都合なんですから」
「……そう、なのかしら」
「むしろ、こき使ってやりましょう」
「ふふっ。それだと私、本当に雪女になってしまいそうね」
会長は雑談がうまくなっただけでなく、自分が何と呼ばれているか、それすらも受け入れてネタにする余裕まで生まれていた。
「友田君。今週末に行きたいところがあるのだけれど……」
「もしかして、また猛禽類カフェですか」
「……えぇ」
実は彼女、かなりの猛禽類好きである。会長が開いた地図アプリには、周辺の梟カフェ全てに来店済みと表示されている。
「あの、もうこの近辺の店、全部行きつくしませんでしたっけ?」
「いいえ、隣町に新装開店したらしいの」
そして最新の情報もすぐに取り入れている。瀬戸先輩と出会わなかったら、俺は猛禽類カフェのはしごなんて一生やらなかっただろうな。
「……同じような場所に連れ回して、ごめんなさいね。これまでは行くのを控えていたのだけれど、その必要が無くなったから、つい」
彼女の赤面は、全男子がときめいてしまいそうな魅力がある。上目遣いで見つめられて、俺は心からそう感じた。
会長は以前からフクロウが好きだったけれど、自分が行くとみんな警戒のポーズをしてしまっていた。店に迷惑がかかると思い、行くのを控えていた。
……全てのフクロウが警戒して体を細くしているカフェ、逆に見てみたいかもしれない。
「友田君の都合がよければ、次の休日にいきましょうか。久しぶりに行けるから、楽しみね」
「あれ。会長、もしかして俺の予定が空くのを待ってたんですか?」
「そうよ。友田君が横にいるときは、警戒されないみたいだから」
「え、……なんでですかね?」
俺が行くと警戒されない、とは一体どういうことなのだろう。わからずに首をかしげていると、会長が何故か、優しい目でこちらを見つめてきた。
「……まあ、理由はなんとなくわかっているのだけれど、ね」
会長は俺を見ながら小さく、そう呟いた。俺が原因、一体なんだろう。
「俺、もしかして梟達に舐められてたりします?」
俺の言葉に瀬戸会長はふっ、と噴き出した。何かおかしなことを言ってしまったのだろうか。
「やっぱりあなた、変なところで鈍いのね」
いつも無表情の彼女が、少しだけ笑顔になる。そんな時間が、俺にとって癒しの時間になっていたのだった。
この時、頭上の18という数字は全く気にならなくなっていた。今楽しく話せている彼女と冷たい数字は、俺に直接関係がないものだ。打ち解けてくれた彼女が、そう言ってくれている気がしていたのだから。