ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第22話 余計な助言だけしてくる奴

 今日も瀬戸会長の手伝いをしに、生徒会室の前へ来た。扉に手をかけようとした時、突然俺に声がかけられた。

 

「おい、そこの後輩。君も会長狙いで来たのか?」

「え?」

 

 扉の横に、四角い白縁メガネをかけた茶髪の男が立っていた。俺を訝しげに見上げてくるこの先輩、見覚えがあるような、無いような。

 

「誰でしたっけ?」

「生徒会副会長の佐伯だ! 前にも名乗っただろう!」

 

 現れたのは、副会長の佐伯悠斗だった。言われてみれば、会長の横にいたような気がしてきた。

 

「くそう、誰も俺の名前を覚えてくれない……」

 

 なんだか哀愁のある背中だ。この先輩からは不憫なオーラがあふれ出ている。

 

「こほん。会長へ告白をしに来たのなら止めておく事だ」

「告白、ですか」

「ああ。俺は会長にアタックして散っていった男を数多く見てきたんだ。……数日前には生徒会室へ突撃してきた奴もいたな」

「突撃って……」

 

 そういえば、その数日前に青野が生徒指導の田畑先生にこっぴどく叱られていた。……果たして、偶然だろうか。

 

「恥ずかしい事に、かつては俺もその内の一人だった」

「え、副会長も突撃を?」

「違うわ! ……普通にフラれたんだよ」

 

 常識はある人のようで、少し安心した。副会長曰く、熱烈なラブレターを用意したものの、読んでもらう事すら出来なかったらしい。

 

「ショックだったよ。『……誰? いつからそこにいたの?』と言われたあの時はね」

「告白以前の問題では?」

 

 そもそも認知すらされていなかったようだ。せっかく勇気を出したのにひどい、と思うかもしれない。けれど副会長は、何故か本当に存在感が薄い。本当に申し訳ないけど、既に彼の名前が思い出せない。

 

 密かに抱えてしまった罪悪感はさておき、彼の独白は続く。

 

「あの時はまだ、俺は若かった。彼女とお近づきになりたい気持ちが高ぶりすぎて、つい焦ってしまったんだ」

 

 何やら悟ったような目をしているけれど、副会長は2年生だから長くてもまだ1年しか経っていない。あまり深みを感じないまま、彼の語りは佳境を迎えた。

 

「だから攻め方を変えた。副会長となり、彼女の手足となる。そしていつの間にか、瀬戸会長にとって必要不可欠な存在になるんだ!」

「なるほど……それは、いい心がけですね」

「そうだろう! 君は話がわかる後輩で何よりだ!」

 

 ただ聞き流していただけだったのだけれど、褒められてしまった。彼は真っ当なやり方で、地道にアプローチをしていたようだ。どこかの突撃男とはえらい違いである。

 

「だと言うのに、全然頼ってくれないんだ……。全て1人でこなしてしまうから、俺の出番が回ってこない……」

「あぁ……」

 

 瀬戸会長はただ遠慮して頼らずにいるだけなのだが、副会長からしたら戦力外と見なされていると感じたのだろう。この悲しいすれ違いを、ここで正すべきだろうか。そう思ったものの、口に出せず終わってしまった。

 

「今朝それを言いに行ったら『えっと、あなた誰だったかしら……?』って! 俺副会長なのに!」

「まだ覚えられてないじゃないですか!?」

 

 副会長。やっぱり、存在感をもうちょっとどうにかしたほうが良いと思います。

 

「はぁ……と、とにかくだ。俺は少なくとも、あの瀬戸会長が誰かと親しく話しているのを見たことが無い。だから、変な期待などしないほうが身のためだぞ」

「えっ?」

「何だ?」

 

 副会長の言葉を聞いて、俺の中に2つの疑問が浮かんだ。

 

 1つは、親しく話しているのを見たことがないという点について。雑談力を身につけた今の会長なら、周囲と打ち解けられるはずだ。しかし彼女は、交友関係を広げたりはしていないらしい。

 

「誰とも、ですか?」

「ああ。俺が見ていた限りじゃ、誰もいなかったぞ」

 

 そしてもう1つ。俺、結構心を開かれてる気がするんだけど。どうしよう。もし会長のあの笑顔が実は愛想笑いだったとか言われたら、人間不信になっちゃいそう。

 

「……しかし、最近妙な噂があってな。どうも校内に、会長が唯一心を許している男がいるらしい。ははっ、そんなやつがいたら顔を見てみたいな!」

 

 ……すみません、それ多分俺です。

 

 校内では生徒会室でしか会っていない。他の人に見られたことはないから、もしかすると校外で目撃された可能性がある。変に目立ちたくはないから、次からは気をつけよう。

 

 いろいろと考えながら聞いていたら、副会長はいつの間にか、俺を見定める目で見てくるようになっていた。

 

「……ふむ。俺にここまで言われても、まだ諦めないというのか。どうやら、君の気持ちも本物のようだ」

「いや、そこまで言ってないと思うんですけど」

「よろしい。ならば、俺と勝負だ! 瀬戸会長の隣は、俺がいただく!」

「あ、はい」

 

 何だか、副会長が勝手に話を決めてしまった。どうやら俺は、瀬戸会長の隣を巡るライバルになったらしい。そんな事を勝手に決められても、会長を困らせてしまうだけな気がする。

 

 けれど、今の満足気な副会長を見たら、訂正するのは憚られた。まあ、会長に迷惑がかからなければ、好きにする権利があるだろうと思い直した。

 

 ……やっぱり、男には好感度の表示が無いな。

 

「1年の友田だったな、しかと覚えておくぞ!」

「あ、はい。さえ……何とか先輩」

「何でそこまで言えてたのに諦めたんだ!? ……しかし、お前が最高記録だ! 次は佐伯先輩、まで頼むぞ!」

「えぇ……」

 

 こうして、俺の大幅リードで勝負が始まったのだった。ひたむきに努力している副会長は、何らかの形で報われて欲しいものだ。

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