ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第23話 プライベートな会長

 会長と約束した週末になった。待ち合わせ場所に行くと、既に彼女が待機していた。スマホで時刻を確認すると、まだ30分前、ま、間違って無いはずだ。

 

 俺の姿を見つけると、彼女は小走りで駆け寄ってきた。……頭上に浮かぶ好感度の「11」という低い数字も、今は軽く流せるようになっていた。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「今日もはりきってますね……」

 

 今の瀬戸会長は、黒髪のウィッグに野球チームのロゴが入ったキャップ、無地のパーカーにショートパンツという地味よりな姿だ。

 

「こうでもしないと、よく男の人に話しかけられるから……」

「それは、大変ですね……」

「お出かけを邪魔されてしまうよりは、全然良いわ」

 

 つまり、ナンパ避けである。学校内でさえ、瀬戸会長は周囲の目を引きまくる美貌を持っているのだ。それが街中で披露したら、大人しく出かける事は難しいだろう。

 

「なんか、お忍びって感じがしますね」

「ふふっ。私は別に、有名人ではないのだけれどね」

 

 学校で見る会長と違って、今の姿は間違いなく1人の可愛らしい女の子である。隣にいる俺は、周囲からどう見られているんだろうか。

 

「……やっぱり、ちょっとこの服装では暑いわね。近々夏用の服も見に行きたいのだけど、良いかしら?」

「ええ、良いですよ」

 

 次の約束をサラッと取り付けられている事に、俺はまだ気づいていなかった。彼女とのお出かけを楽しんでいる身としては、不満など1つもない。

 

 

 滞りなくカフェについた途端、会長は梟たちの元へ一直線に向かっていった。

 

「あら、この子……警戒心が緩いわね。撫でられるのを待ってるわ。あの子は逆に撫でられるのがあまり好きじゃないみたいね。けれど、興味は示してくれている。心を開いてくれるのを、じっくり待ちましょうか」

「お、お客様……? 初めてなのに、どうしてスタッフより詳しいんですか……?」

「あはは……瀬戸会長、本当に研究熱心なんで……」

 

 猛禽類に囲まれてうっとりしつつ、梟ごとの特性を的確に見抜いていく彼女の姿に、店員たちは釘付けになっていた。俺も最初は戸惑ったけど、ようやく慣れてきたところだ。

 

「ふふ……やっぱり可愛いわね」

 

 瀬戸会長、梟たちに注目を浴びて嬉しそうだ。初対面の白い梟を手懐けている姿は、息を飲むほどの美しさが感じられる。

 

 そんな会長の元に、店員さん達がカメラを持って近づいてきた。

 

「ま……まるで絵画みたいに美しい」

「あのお客様……お写真を撮らせてください……。そして当店のSNSに、載せさせていただけないでしょうか……!?」

「え、えぇ……?」

 

 彼女の変装も意味を成さず、結局注目を集めてしまうのだった。

 

 

 時間いっぱい梟たちを愛でた瀬戸会長は、とても満足げだ。学校の無表情な会長とは、まるで別人だ。

 

 そろそろ解散かと思っていた時に、会長は俺に真面目な声で言ってきた。

 

「ねえ、友田君。生徒会の件、考えてくれているかしら?」

「あ、あの話ってまだ有効だったんですか?」

「当然じゃない。ずっと枠は空けてあるわ」

 

 3ヶ月も空きっぱなしなのはどうなんだろうか。正直、会長がそこまで本気だとは思っていなかった。

 

「いえ、きっと俺なんかよりもいい人が……」

 

 だから、こう返してしまった。俺の脳裏には、青野の顔が浮かぶ。直接言われたわけじゃないのに、これ以上は俺のものだ、と忠告されているような気持ちになってしまう。

 

「いないわ、そんな人」

「えっ」

 

 俺のモヤモヤを断ち切るかのように、彼女はバッサリと言い放った。

 

「ただ純粋に手伝いを申し出てくれたのは、貴方だけよ」

「会長……」

「あとは、友田君の意志だけ。……どう?」

 

 そう言いながら微笑みを見せてくれる瀬戸会長。けれど、俺は彼女に対してうしろめたさを感じている。俺が会長に一歩踏み込んだのは、青野からの頼みと、その頭上の数字を見るためだったからだ。そうでなかったら、きっとこうして関わることは無かっただろうから。

 

「……あの」

「大丈夫よ、友田君。無理強いはしないから」

「すみません、会長」

 

 俺が答えを出せずに俯いていると、会長は俺の後頭部に手を置いた。そして、ゆっくりと俺を撫でてくれている。彼女の優しさが、胸にしみる。……ただ、一個だけツッコミを入れたくなってしまう。

 

「……あの、俺は梟じゃないですよ」

「あら、ごめんなさい」

 

 梟を撫でるときと同じように、手の甲でそっと撫でられていた。これはこれでドキドキはしたのだけれど、いろんな意味で貴重な体験だった。

 

 ふと、彼女の手が離れる。名残惜しさを感じつつも頭を上げると、会長は少しムスッとした顔を俺に向けていた。

 

「……前から気になっていたのだけれど、学校の外では会長じゃないわ」

「え……。瀬戸、先輩?」

 

 彼女は小さく首を振った。どうやら違うらしい。彼女が何を求めていたのか。もしも、俺の思い上がりじゃないのなら。きっとこう呼ぶべきなのだろうか。

 

「氷織、先輩?」

「っ!?」

 

 名前を呼んだ瞬間、先輩が固まった。そして顔が赤くなっていく。手でパタパタと顔を仰ぎだした。これは、踏み込みすぎただろうか。

 

「きょ、今日は暑くなってきたから、ここまでにしましょうか」

「は、はい……」

 

 会長の判断で、ここでお出かけは解散となった。会長の夏服を買いに行く日付だけ決めて、会長は早歩きで帰っていった。

 

 嫌われてはいない、と思うけど……次会った時、なんて呼んだらいいんだろう。彼女の頭上にある11を見つめたところで、答えは返ってこなかった。

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