ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第27話 想定外に攻めるお嬢様

『約束守れんやつと、関係を続ける義理なんかあらへんよ』

 

 先日、ズミさんが言っていた言葉を思い出した。本当にその通りだと、俺も思う。だとすると、リアルバレしたくないというサワチーとの約束を守れない青野との関係は、続けなくて良いという事になる。

 

 それは最早、好感度とかそういうレベルの話じゃない。青野にアドバイス? ……もう、やる気が出ないな。

 

 

「あの、友田さん? どうかされたのですか……?」

 

 気持ちが沈んでいた俺に声をかけてくれたのは、ボディガードの倉敷志穂さんの陰にいる、一ノ瀬さんだった。時計は既に、彼女との約束していた時刻を指していた。

 

「あ、あぁ。ごめん一ノ瀬さん。気にしないで」

「そうですか? 顔色が優れないように見えましたけれど……」

 

 彼女は男性に対しての苦手意識が強いため、直接話すのが難しい。しかし、それを克服するため、こうしてなんとか俺と会う練習を続けている。

 

「やはりお嬢様はお優しい……ふう、満足。よし友田、具合が悪いのならもう帰っていいぞ」

「志穂っ!?」

 

 倉敷さんは一ノ瀬さんの事が大好きであり、出来れば男を近づけたくないと思っている。というかちょっと過保護すぎる。

 

「一ノ瀬さん、俺は問題ないよ。今日もやるんだよね?」

「は、はい。……よろしくお願いいたします」

 

 令嬢の寸分違わぬカーテシーに、思わず息を飲む。改めて、一般市民の俺がこうして話せてるのは奇跡なのだと思いなおす。倉敷さん、今いいところなんで舌打ちやめてください。

 

「友田。何度も言うが、約束は厳守だぞ」

「はい。()()()()()()()()()()()()()()、ですよね?」

「ああ」

 

 倉敷さんが何本目かわからない釘を刺してくる。これは、彼女を傷つけないために必要なことだ。俺と倉敷さんのやり取りを見ていた一ノ瀬さんは、少し申し訳なさそうな、悲しそうな顔をしているように見えた。

 

 きっと青野は、こういうのも守らないだろうな。なんて呆れ笑いをこらえながら、いつもの空き教室に向かう一ノ瀬さんへついていった。

 

 

 張り詰めた空気の教室。その中で俺は一ノ瀬さんと向かい合って立っていた。横から倉敷さんが固唾を飲んで見守っている。

 

「では、行きます……えいっ!」

 

 ぴとっ、と触れる音がした。触れているのは、両の手の平同士。彼女がこれまで大事にされてきたのがよくわかる、手の柔らかさを感じる。勇気を振り絞っている割には、光景は和やかなものだった。

 

「お、お嬢様……ついに男性と手のひらを合わせられるように……ご立派になられましたね」

「卒業式みたいな泣き方してるよこの人……」

 

 一ノ瀬さんは顔を真っ赤にしながら、合わせている手から震えが伝わってくる。横で倉敷さんは涙を滝のように流しながら拍手喝采。うーん、テンションについていけない。

 

「おい友田、なんだその微妙な顔は。お嬢様の成長ぶりになんとも思わんのか?」

「いや、成長してるのはわかるんですけど……」

 

 最初は人差し指同士だったことを考えると、確かに成長している。今も時々、目が合うようになった。けれど今のところ、俺以外の男は依然としてダメらしい。克服の道のりは、まだまだ遠い。

 

「さて、お嬢様。そろそろ引き上げましょう。友田も、今日はもういいぞ」

「は、はい」

「あっ……」

 

 今回は10分、これもかなり伸びたほうだ。手の暖かさが名残惜しいと思いつつも、彼女の手から離して――。

 

 

 ギュッ。

「えっ」

 

 

 ものの弾みだろうか。俺の指の間に、彼女の指が滑り込んできた。心臓が、一拍遅れて暴れだした。動揺して距離を取ろうとしたけれど、逆に離さないようガッチリと掴まれた。その結果、まるで恋人つなぎのような形になっていた。

 

「い、一ノ瀬さん……?」

「……」

 

 一ノ瀬さんは俺とつないだ手を惚けながら見ている。離れる気配は全くない。握る力を強めては緩めてを繰り返している。彼女の熱が俺の手を通して更に伝わってくる。なんだか俺も熱くなってきた。ちなみに倉敷さんは想定外の出来事すぎたのか、口をあけたままフリーズしている。

 

「…………はっ!?」

 

 しばらくして、一ノ瀬さんがはっと我に返った。バッと手を離すと、あわわと声を漏らしながら扉の方へと後ずさっていく。

 

「もっ、申し訳ありませーんっ!?」

 

 引き戸を思い切り開けた後、脱兎のごとく教室から飛び出していってしまった。今から追いかけた所で、とても追いつけそうにはないだろう。俺もちょっと刺激が強すぎたから、しばらく動けそうにない。

 

 

 さっきまで彼女に触れていた手をボーっと見つめていたら、いつの間にか意識が戻ってきた倉敷さんが俺の肩に手を置いた。

 

「……友田、礼を言う。おかげでまた、新たなお嬢様の一面を見ることができた」

「鼻血えらいことになってますよ」

 

 倉敷さんの鼻から献血かってぐらい赤い液体が流れ落ちていた。普通に心配になる量だから病院に行ってほしい。この後倉敷さんは一ノ瀬さんに追いつくため、俺に一礼をしてから教室を出ていった。……あの、鼻血拭いていってくれないと困るんですけど。

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