ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
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第31話 普通な人って案外いない
季節がすぎると、交友関係も変わっていく。それは自分の知らない所でも起こっていく。関わりのなかった友人同士が仲良くなっていると、少し嬉しかったりする。
ただ、自分といるときよりも楽しそうにしていると、それはそれで少し寂しくなる。別に自分を優先してほしいとは、言わないけれど。
「青野君ってさ、ふてぶてしい元カレみたいだよね」
「急に何言い出してんの」
自分の席で関係について考えていた俺のアンニュイな気分を、所田さんが全てぶち壊してきた。彼女が向けた視線の先には、教室から出ていく青野の背中がチラリと見えた。
「ねね、友田君はアレどう思う? ……そろそろ授業始まるのに、どこに行く気なのかな?」
「あー……優紀が機嫌悪そうだったから、なだめに行くとか言ってた気がするよ」
言ってたというか、俺がそうしたほうが良いとアドバイスしたんだけど。青野はここ数日、俺のアドバイスを素直に聞いてくれている。あまりの好感度の上がらなさに、心変わりでもしたのだろうか。
「そういえば優紀ちゃん、今日はこっちに来てないね」
「今朝の出来事がよっぽどショックだったんだろうな……」
ちなみに優紀が不機嫌な理由は、料理中にフライパンの取っ手が壊れて一品台無しになってしまったからである。朝一で俺に電話してきたから、どれだけ不機嫌かはよく伝わってきた。
「そっかそっかー。……ちなみに友田君、私その話初耳だよ?」
「あれ、そうなのか?」
「そうだよー、すっかり優紀ちゃんに愛されちゃってー……羨ましいなー」
「ちょっと目が怖いんだけど」
どうやら親友であるはずの所田さんにはまだ言ってなかったようだ。こういう出来事話は先にしているものだと思ったのだけれど。ただそれよりも所田さんの目があまり冗談で済んでない感じなの止めてほしい。
「あれ? でも、優紀ちゃんのいるクラスって……逆方向だよね?」
「そうなんだよな……」
「うわー……」
青野、優紀がどのクラスなのか把握していなかった。幼馴染のクラスを知らずにここまで過ごしていたなんて、俺も流石に想定外だ。
所田さんも衝撃の事実に引いている。いつも優紀の方から来る事が当たり前だと胡座をかいていたのも問題だが、青野が持つ謎の自信は基本全てハズレてしまうのもひどい。
所田さんの頭上の数字は、3から2に変わっていた。これもうダメかもしれないと思わせる変化だった。
「優紀ちゃんを振り向かせたいのはわかるけど、私から見れば自分の都合の良い時だけ求めてくるダメ男なんだよねー」
「ひどい言われようだ……」
「わかるわ所田さん。寂しくなったからよりを戻そうとして来る自己中なチャラ男のパターンよね」
「わあ、光井さんにも変なスイッチ入っちゃった」
創作好きの光井さんが突如話に入ってきた。しかもただならぬ熱量を持ち込んきている。光井さんの頭上の数字は……あれ、50って高いな、なんでだろう。
「光井さんって青野と仲良いんだっけ?」
「いえ、全然。関わろうとも思ってないわ」
「え、じゃあなんで……」
好感度が高いんだ、うっかり言いかけてすんでの所で踏みとどまった。変な所で言葉を止めてしまったけれど、光井さんは何かを察したようにああ、と答えてくれた。
「彼の事は、あくまで一人のキャラクターとして見ているだけよ。私の想像を良い意味で下回ってくれるから、観察していると創作のネタになるの」
「あ、そういう……」
光井さんは青野を創作キャラという目線で見ていたのである。自分の生み出したキャラは好きになるというし、高い好感度はそれが理由なのだろう。
「今は友田君、私はあなたを主人公の参考として見させてもらっているから」
「え、主人公?」
「青野君よりも友田君のほうが、よっぽど主人公らしいと思うわ。それだけ周囲に好かれているのがその証拠」
「いやいや、そんなまさか……」
そんな事を言われたのは生まれて初めてだった。ついこないだ青野からも友人キャラだと言われたばかりだったから、喜びよりも戸惑いのほうが強かった。
光井さんの言葉は本心なのか、それとも創作上の話なのか。そう疑ってしまう自分が、奥底にいた。
自信満々に語る光井さんに、目を輝かせながら聞いていた所田さんが乗っかった。
「やっぱりそうだよね光井さん! あなたとは気が合いそうだなーと思ってたんだ!」
「ええ、語り合いましょ。ドロドロな人間関係について」
「うん! 喜んで!」
「教室の真ん中でそんな話ししないで?」
こうして俺の両隣で新たな友情が芽生えた。良い関係が増えるのは嬉しい気分になるけれど、内容がちょっと手放しで喜びづらい。話の続きは俺の席から離れた所でやってほしいかもしれない。
ふと、俺のスマホが振動した。ポケットから取り出して確認すると、俺の後ろに座っている唐沢さんからだった。
『うちのクラスって意外と個性的だよねー』
『サワチーほどでは無いと思う』
『なにをーう』
個性的じゃない人はよそ行きモードとかないから。このやり取りもクラスじゃ見せられないし。そう思っていたら、急に肩を誰かに叩かれた。
「愛香ったら変な友達が出来ちゃったわね……」
「おわっ!?」
サワチーとのやり取りに気を取られていて、優紀が後ろにいたことに気が付かなかった。俺のスマホ画面を覗き込まれそうだったのですぐに閉じた。
「って、そんなに慌てる事ないじゃん。見られたくないものでも見てたの?」
「あはは……まあちょっと」
やりとりしていた相手があれなもので、とは言えない。チラッと唐沢さんの方を見ると、真顔でこちらを見つめている。何を考えているのかわからなくてちょっと怖い。
よく見ると、唐沢さんの目線は俺の肩に置かれた優紀の手に向けられていると分かった。青野と距離を置き始めた彼女は、最近こうして俺に触れる事が多くなった気がする。
優紀の疑いの目と唐沢さんからの真顔に、冷や汗がすごいことになった。
「ねえ唐沢さん!」
「はぇ!? ……コホン。な、何でしょう?」
俺が優紀に気を取られている間に、唐沢さんが所田さんと光井さんに挟まれていた。突然話しかけられたせいか、ちょっとよそ行きモードが剥がれかけていた。
以前『陽キャのノリってむずすぎるー無理ー』と言っていたから、ちょっと心配だ。
「いきなりごめんね。ちょっと唐沢さんの意見も聞いてみたいなーって」
「い、いえ。私はあまりおもしろい話が出来ないものですから……」
「えー? そんなことないと思うけどなー。前から唐沢さんがどんな人なのか気になってたんだー」
「それ、私も聞いてみたい」
「光井さんまで……」
唐沢さんは所田さんと光井さんのグイグイくる距離感に戸惑っているようだ。また俺のスマホの通知音が鳴る。
『ヘルプミー』
今どうやってメッセージ送ったんだ。文字を打つ動作はおろか、スマホを取り出したかどうかすらわからなかったんだけど。
『こんな時のためにトモ向けの定型文を用意してあるのだ』
何故か俺を頼ることが前提になっていた。ただ、俺には女子3人の話に割り入る度胸はなかった。
「……また私に見せないようにやり取りしてるし。相手は誰なの……?」
結局、次の移動教室までの数分間だけサワチーには耐えてもらうこととなった。その夜、かどつよで初見お断りレベルの激ムズクエストに連れ回されたのは語るまでもない。……明日が休みでよかった。
気づけばストックが無くなっててさあ大変。
週2ペースを乱したくないのだ頑張ります。