ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第32話 ネット付き合いの怖い所

『……さて、お仕置きはこのくらいにしといてやるかー』

「あ、はい……」

 

 サワチーの私怨による高難度クエストマラソンがやっと終わった。スローライフもできるはずのゲームなのに、全く生きた心地がしない5時間だった。

 

「というか、結局何のお仕置きだったんだ……?」

『……別にー』

「いやいやいや」

 

 全然別にーの内容量ではなかった。正直しんどすぎて、このゲームを何度か止めたくなった。けれどもクリア出来た時の達成感のおかげで、変な快感に目覚めかけるところだった。

 

『ってごめん、流石に嫌になったかね。……かどつよ止めるー、とか言い出したりしない、よね?』

 

 疲労感でぐったりとしていると、いつもより気が弱くなったようなサワチーの声がした。

 

『なんていうかさ、普通のネット友達だと次会えなくなるかもしれないじゃん? だから、結構遠慮とかするんよ。けど、トモとはリアルでも会えると思って、つい……』

「つい……?」

 

 正直な所、あの鬼のようなクエスト連投をつい、でやってきた事の方が怖い。かつては青野とこのぐらいプレイしていたのだろうか。好感度が30まで下がった今は、もうやっていないのだろうけれど。

 

『……あの、本当に謝るから。かどつよやめるとか、言わないでね……?』

 

 初めて聞いた、彼女の縋るような声。自分との繋がりをここまで願われたのは、初めてだった。こんな状況で申し訳ないけど、内心では嬉しい気持ちが浮かんできていた。

 

「……おかげで装備がガチガチに揃ったことだし、次はもっと楽にクリアできそうだな」

『……! と、当然ウチの目論見通りだからね!』

 

 元々小心者なだけに、人の頼みを断る勇気は持てない。ただそれとは関係なく、今のサワチーからのお願いを断るつもりは全然なかった。

 

『なんや、まーた2人でクエストやってたんかいなー』

「あ、ズミさんだ」

『……どもー』

 

 ぷはー、とズミさんがいつものやつを呑んでいる声が聞こえた。なんか明らかにサワチーのテンションが下がったんだけど、気のせいかな。

 

「あれ、ズミさん。今日は休肝日って言ってませんでした?」

『色々悩んだんやけどなー。今日は肝臓を休ませる事を休む日にしたんよ』

「ちょっと何言ってるかわかんないです」

 

 元より月一の休肝日を守っているのを見たことがないんだけどね。酔っ払っている人の言う事をまともに聞いちゃいけないんだなあ、と思った。

 

『うちから楽しみを奪うなんて真似、何人たりとも許されへんよー。……ま、もしうちが入ってこなくなったら、異世界で無双しとる頃やろうから、気にせんでもええからなー』

『……あの、そういうのシャレにならないんで止めてもらえますー?』

 

 ズミさんは軽く言うけれど、正直そういうブラックジョークは笑いづらい。サワチーも割と本気で心配しているのだけれど、伝わっていなさそうだ。

 

『さて、この後はどこに行くつもりだったんやー? 抜け駆けは許さへんで〜?』

『あ、うちらそろそろ終わろうかと思ってましてー』

『えーまたぁ!? もう数え切れんほど断られてるんやけどー!?』

「毎回ズミさんが俺達の寝る時間に入ってくるからでは……?」

 

 サワチーはよそ行きモードを崩さないため、夜ふかしはできる限りしないと決めている。俺も夜遅くまではやらないので、社会人のズミさんとはそもそも時間帯が合わないのである。

 

「……ん、電話か?」

 

 俺のスマホに電話の着信があった。優紀からだった。かどつよも一区切りついたし、そろそろゲームを終わることにした。

 

「じゃあ俺はそろそろ寝ますねー」

『ほーい。またよろしくー』 

『サワチ〜置いてかんといてぇ〜! 後生やからぁ〜!』

『あーはいはい、ちょっとだけ付き合いますから』

 

 サワチーは少しだけ酔っ払いギルマスに付き合ってあげるらしい。俺は呼ばれていないとわかったので、安心してパソコンの通話を切る。そのまま膝下で鳴り続けていたスマホの通話に出た。

 

『あ、遅くにごめんね? ちょっと色々聞いてほしくて……』

 

 これはきっと青野絡みだろう、と声でわかる。夜はもう少しだけ続くらしい。

 

  

『……まさか、春吉が私のクラスも知らなかったなんて思わなかったわ』

「はは……」

 

 俺が青野に、優紀が落ち込んでいるから慰めに行けとアドバイスした。アドバイスというか、警告に近かったかもしれない。

 

 何せ、青野はその事を全く知らなかったのだ。つまりそれは彼女にとって、青野の存在が限りなく小さくなっているという証拠だからだ。

 

 流石に青野もそれを感じたのか、すぐに優紀のもとへと向かった。しかし結果はまたしても予想の斜め下だった。最早優紀の好感度が上がることはないのだろうか。

 

『……まあ、気にかけてくれた事はちょっとありがたいけど』

 

 と思いきや、好感度が40から41に上がった。こうして上がったの見たのは初めてで、眠気が少し覚めるほどの衝撃だった。

 

「おぉ……こんな感じなのか」

『何が?』

「いや、なんでもない」

 

 これまで下がった分を考えると、あまりにも少ない進歩だ。ただ、青野の行動が初めてプラスになった。これは非常に大きい。

 

 もしかしたら、ここから青野が挽回していくのかもしれない。熱意だけは大きいから、可能性はある。

 

 

 そう思ったら、何故か少しだけ俺の心が痛んだ気がした。

 

 

 意外と短めに終わった優紀との通話が終わり、背伸びをする。パソコンの画面をまだ切っていなかった事に気づき、マウスに手をつける。

 

 すると、何十件もかどつよに未読のメッセージが表示された。

 

『トモー、ログアウトし忘れてるぞー』

『あれ、既読つかない。寝たんかな』

『え、ちょっと大丈夫なん?』

『もしかして倒れた? 一旦返事ちょーだいよ』

 

 スマホを見ると、不在着信2件。いつもらしからぬ、サワチーからのメッセージ連投。どうやら、かなり心配かけてしまったみたいだ。すぐに返事を書いて送った。

 

「ごめんごめん、切り忘れたまま寝てたよ」

 

 送った直後に既読が付き、返信が来た。

 

『もー脅かすなよー』

 

 と、それだけ帰ってきた後は特に動きがなかった。しかし直後、ズミさんから個人でメッセージが飛んできた。

 

『サワチーを泣かした罪は重いで』

「えっ」

 

 なんと、サワチーを泣くほど心配させてしまったらしかった。彼女からのコメントからはわからなかったけれど、まだ一緒に通話しながらクエストを続けていた自称サワチーガチ勢のズミさんが言うのだから、間違いないだろう。

 

 泣かせてしまって申し訳ないと、罪悪感が一気に込み上げてきた。次に会った時、謝っておこう。

 

『次泣かしたら、飲ますからな』

「何を???」

 

 ネット付き合いっていろんな意味で怖い。……そう思わされた夜だった。




なんか突然大勢の方に見てもらえて、とても嬉しいです。
今のところは続きを書く意欲につながっています。
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