ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第35話 日課が崩れた日

 本日の好感度チェックタイムは、開始が少々遅れている。青野がまた、田畑先生の指導に引っかかったためだ。

 

「おい青野! 用も無いのに生徒会室の周りをうろちょろするな! 完全に不審者だぞ!」

「いえ先生! 俺は瀬戸会長にこれを見てもらいたくて……」

「何だこのスマホに打ち込んだ長文は……こんな小っ恥ずかしい事をよくもまあこんなにも」

「ちょっと勝手に読まないでくださいよ! 男に見せるために作ったんじゃないんです!」

「お前が見せてきたんだろうが! いいから指導だ!」

「うわああぁあぁぁ……」

 

 こうして青野は生徒指導室へと連れて行かれた。と、所田さんと光井さんが教えてくれた。……なんで毎回こういう出来事に居合わせているのか、不思議でならない。

 

 今日は放課後の予定が無いので、青野が戻ってくるまで少々待ちぼうけである。

 

「やべ、今日の分まだ書いてなかったな……」

 

 教室に誰もいなくなったのを確認してから、少し表紙が色褪せてきた好感度記録帳を取り出す。書き始めた頃は4人の機嫌や起こったことを事細かに書いていたけれど、あまり意味が無いと感じ始めてからは一言二言ぐらいしか書いていない。

 

 さて、またしても進展のない記録を今日も書くか。そう思っていたのだが、即座に中断せざるを得ない事態が起こった。

 

「友田さん、今日はご予定が無いのですよね?」

「のわぁっ!?」

 

 教室には誰もいないと思っていたのに、背後からよそ行きモード中の唐沢さんがいきなり出現した。

 

 大急ぎで記録帳を鞄にしまう。鍵は後でかければいい。そーっと顔色を伺うと、笑顔でこちらにプレッシャーを放ってくる。俺のスケジュールを当然のように把握してる事には、頭が回らなかった。

 

「あー、えっと。この後青野とちょっと話が……」

「……ね、それ本当に必要なん? トモだって全然乗り気じゃないじゃーん」

 

 小声で図星を突かれた。確かに皆の好感度には全然進展が無いから、正直惰性だと感じてはいる。それに現在30の唐沢さんだって、ひたすら下がり続けた結果なのだ。寧ろ何故今まで高かったのか疑問に思い始めている。

 

「あ、いたいた友田ー……って、唐沢さん!?」

 

 生徒指導から戻ってきた青野は、唐沢さんを見て何故か緊張しだした。サワチーはちぇーと残念がった後、俺から一歩離れて即座に纏う雰囲気を切り替えた。

 

「あら、青野さん。友田さんにご用ですか? でしたら私は……」

「ちょ、ちょっと待って! ……友田来てくれ!」

 

 俺を唐沢さんから引き剥がし、肩を組まれる。唐沢さんに背を向けつつ、俺に小声で懇願してきた。

 

「な、なあ友田! 今日は例のやつ無しでいいからさ、唐沢さんに俺のことを紹介してくれよ!」

「紹介って、クラスメイトなんだから普通に挨拶すればいいんじゃ」

「あんな可愛い子相手じゃ、緊張しちまうだろ!?」

 

 青野に緊張という言葉が存在していた方が驚きである。いつもガンガン攻めているのに、よそ行きモードの良い育ち風オーラに青野もやられているのだろうか。

 

「とにかく唐沢さんには嫌われたくない! だから初対面で失敗しないために頼む!」

 

 残念ながら、その依頼は絶対に成功できない。唐沢さんの正体はサワチーなのだから、そもそも初対面じゃない。それにサワチーはここしばらくアオと遊んでいないと聞いている。

 

 現に唐沢さんの好感度だって……あれ。

 

「とにかく唐沢さん! よかったら俺とデー……ってあれ!? い、いない!?」

 

 唐沢さんは、忽然と教室からいなくなっていた。いつ教室を出ていったのか、俺も気づかなかった。あと青野、いきなりデートは攻めすぎだ。初対面からグイグイ行き過ぎるなという俺が再三した注意は、やっぱり活かされていないらしい。

 

「唐沢さんなら今帰っていったぞー」

「あ、誘田くん」

「なんだ、男か……」

 

 唐沢さんと入れ替わりで教室に来たのは、誘田くんだった。ついでに青野の頭は下心でいっぱいだった。せっかく話しかけてくれたクラスメイトに失礼すぎる。

 

「唐沢さんって、ちょっと近づきがたいよなー。友田はいつも何を話してるんだー?」

「え? ま、まあちょっと雑談ぐらい、かな……」

「そっかー。やっぱ友田の交友関係って広くてすげえよなー」

 

 なんて笑っているけれど、俺からしたら誘田くんの方がすごいと思う。……俺は、誰かを自分のやりたいことに誘う事ができない小心者だから。あまり唐沢さんの話を掘り下げられても困るし、話題を変えよう。

 

「そういえば誘田くんって、あまり男女とか気にせずに遊びに誘ってるよね」

「んー? そうだなー、楽しけりゃ誰でも歓迎ーって感じだし」

 

 誰と、というよりも楽しさを重視する性格らしい。けれど、人をないがしろにしないところがクラスで好かれている理由だ。

 

「にしても誘田くんってすごい行動力だよね。毎日誰かしら誘ってる気がするよ」

「そりゃあ楽しい事は毎日だってやりたいっしょ!」

 

 楽しいことはついやってしまう。それが実行できる人って案外多くないんじゃないだろうか。隣で興味なさそうにしている青野も、そういう意味ではすごいと思う。

 

「……俺は誰もついてきてくれないからな。世の中って不公平だろ」

「おいおい青野ー、そんな姿勢じゃついてこないぞー。あくまで皆の時間をもらってるんだから、楽しんでもらう事も大事なんだよ」

 

 意外にも、誘田くんはかなり大人な考え方を持っていた。相手の事を考えつつ巻き込んでいく。人としての器が、俺よりも遥かに大きいんだろうな。

 

「一回でもいいからさ、クラス皆で遊びに行くってのもやりたいんだよなー」

 

 誘田くんがそう呟いたタイミングで、俺のスマホがズボンのポケットの中で振動した。

 

 

『その集まり、うちはパスで』

 

 

 ちょっと待て、君さっき帰ったんじゃなかったか。教室の扉付近や窓を見渡しても人影はない。奇妙な視線をどこかから感じていると、誘田くんが青野を見てあ、と声を漏らした。

 

「そういや青野とはまだ遊びに行けてなかったよなー、カラオケとかいかねー?」

「いや、俺は男の誘いには……」

「待て、青野」

 

 誘田くんのコミュニケーション力や人を巻き込む才能は、青野に必要なものだ。これはもしかしたら良い機会かもしれない、そう思い青野に耳打ちをする。

 

「青野、誘田くんと遊びに行ってみるといいと思うぞ。女子との話し方を学べば、好感度を上げられるかもしれないだろ」

「……な、なるほど。気は進まないけど、行ってみるか」 

「友田はどーよ?」

「あ、俺は……」

 

 答える前に、俺のスマホが何度も鳴る。

 

『トモ行かないよね?』

『この後はうちが先だったよね?』

 

 なんか、少し前から圧を感じるようになった。前に心配をかけてしまった一件が影響しているのだろうか。そこまで心配されるほどじゃないと思うんだけどな。

 

「友田人気者だし、やっぱ予約取っとかないとダメだよなー。じゃあ今日は青野、俺と行こうぜー!」

「わ、わかった」

「楽しんでこいよー」

 

 こうして青野は誘田くんに引っ張られて教室を出ていった。青野からの依頼が始まって以来、初めて好感度チェックをしない日になったのだった。

 

「話し終わったんだよね? ……じゃ、帰りはうちのガジェット選びに付き合ってもらうよん」

 

 予定が無くなったので帰ろうとしたら、いつの間にか戻ってきていたサワチーに連行されたのだった。

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