ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
誘田くんの誘いに渋々のった青野は、どうやら色々と学んできたらしい。それから数日、青野とその周辺には劇的な変化が起きていた。
これまでクラスに馴染んでこなかった青野が、クラスメイトたちと楽しく過ごしている。
そう、なんと彼は……モテ始めたのだ。
……男に。
「おい友田! 俺が思っていたのと違うぞ!?」
クラスの男友達から引っ張りだこになった青野だが、納得がいかないと俺に訴えてきた。青野の少々ズレつつも真っ直ぐな性格は、思いの外男子たちにハマったらしい。
「クラスメイトと仲良くするのは大事だろ。なんか楽しそうだし」
「いや、楽しいけどさぁ……」
ならいいじゃん、と思うのだが青野はまだ腑に落ちない様子。交友関係は多少広がったものの、女子との接点は全く増えていないらしい。
「おい青野ー、次のボウリングも楽しみにしてるぜー!」
「ははっ、最低記録の更新よろしくなー!」
先週一緒に出かけたらしい男子たちが青野に声をかける。彼らは少し性格が荒くて声も無駄に大きい。俺はちょっと苦手な部類である。
しかし彼らの悪ノリを上回るテンションで、青野は切り替えした。
「おいおい、次の俺は一味違うぞ。……最近はずっとプロボウラーの動画で学んでるからな!」
「あははこいつマジかよ!」
「動画撮る準備しとかねーとな!」
青野はどうやら、あの悪ノリ関係に向いているようだ。無理しているとかでもなく、本当に合っているように見える。
俺は青野たちが大きな声で喋っている輪を、少し離れて見ていた。
一方的に1人を好きにイジるだけの関係。俺はあれを、友人関係とは呼びたくない。
誰かがイジられて、1人がそれに応え続ける。イジる人たちは自分達が場を盛り上げていると思っているが、その実頑張って疲弊しているのは、ほぼイジられている1人なのだ。
俺の望んでいる友人関係は、持ちつ持たれつなものであってほしい。人と言う字みたいな片方が寄りかかる形じゃなくて、本当の意味で支え合うような、そんな関係が良い。
「ねえ義人、ぼーっと窓の外なんか見てどうしたのよ?」
「ああ、漢字の成り立ちについて考えてた」
「えぇ? 今日は国語の授業無かったわよね……?」
そういえば優紀は、いつの間にか人前でも名前で呼んでくるようになっていた。何があったのかは特に聞いていないけれど、とりあえず俺も合わせている。
「私、ああいう男子のノリ苦手だわ。なんかちょっと子供っぽすぎるっていうか……」
輪の中心にいるのは、イキイキとしている青野。優紀はそれらをまるで別世界を見るような遠い目で語った。
「ま、元の春吉に戻ったような気もするけど」
「そうなのか?」
「男同士でバカ騒ぎしてるのが、なんかあいつらしいのよね」
お、好感度が40から41になった。青野はもしかすると、過度なアプローチを仕掛けるより自然体の方がウケるのかもしれない。
「見ろ! これが俺の新投法――いってぇ!?」
勢いよくボールを投げる動きをして、近くの机に思い切り手をぶつけてしまっていた。悶絶する青野と大笑いする男子たちがとてもうるさい。
「……まあ、ああなると思ってたわ」
優紀の好感度が40に戻った。自然体でもダメだったので、もう救いはないのかもしれない。
「ふん、だからお嬢様はあんな猿共と触れ合う必要なんか無いんだ」
「あれ、倉敷さん?」
俺の横から倉敷さんが会話に割り込んできた。確か一ノ瀬さんは家の用事で休みだったはずだ。
一ノ瀬さんと一緒にいない倉敷さんは珍しい。というか制服姿を初めて見た。なんというか、違和感がすごい。
「……本当に、学生だったんですね」
「お前まだ信じてなかったのか」
正直、今もただの口が悪いコスプレ趣味のボディーガードだと思っている。あのー、と優紀が俺に目を向けてくる。
「えっと、誰?」
「ああ、一ノ瀬さんのボディガードで……」
「えっと、誰?」
あ、そっちもか。優紀からしたら一ノ瀬さんも知らないんだった。俺と倉敷さんを交互に見た後、優紀はポツリと言った。
「……ねえ、もしかして友田って節操なし?」
「なんてこと言うの」
倉敷さんがぷっと噴き出したのを聞き逃さなかった。ふとスマホが鳴る。
『ちょっと同意ー』
こら。当たり前のように俺の後ろの席で盗み聞きするんじゃない。
『だって会話聞こえてきちゃうんだもーん、不可抗力よねー』
そんで心も読むんじゃない。俺1文字も打ってないのになんでわかるんだ。
「ふーん、サワチーね……」
「っ!?」
「あだ名よね、それ。仲良さそうだけど、誰なの?」
優紀にチャット画面を見られてしまった。全身に緊張が走る。本名で登録していなかったのが幸いだった。後ろの唐沢さんはよそ行きモードを装っているが、1つ大きな粒の冷や汗が垂れていた。
「あんたのプライベートだから詮索はしないけどさ……その子、私より料理出来る?」
「え? どーだろ……料理してるイメージはないな」
正体は隠しつつ、質問には答えておく。俺のなかでサワチーは、かなりズボラなイメージである。ぶっちゃけバランス栄養食とかで済ませてそう。なんて考えていたら、優紀はニヤリと笑った。
「そう? ならいいわ!」
「何が?」
優紀は何故か嬉しそうになっていた。自分の得意分野で勝てそうだと思ったからだろうか。いや、なんで張り合ってるんだか。
「……だって、胃袋を掴んでいる方が強いじゃない」
小声で何かを呟いた優紀。なんか掴むって言ってたような気がする。なにそれこわい。
「……へぇー」
少し冷えた声が後ろから聞こえた。危ないよ唐沢さん、サワチー出ちゃってるから。一体何があったんだ。
2人を見て何かを察した倉敷さんが、俺の肩に手を置いた。
「ま、頑張れよ友田(笑)」
「よくわかんないけど一番腹立つ……」
どうやら俺は、なんか頑張らないといけないらしい。いや、何をだ。