ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第36話 青野がモテる!?

 誘田くんの誘いに渋々のった青野は、どうやら色々と学んできたらしい。それから数日、青野とその周辺には劇的な変化が起きていた。

 

 これまでクラスに馴染んでこなかった青野が、クラスメイトたちと楽しく過ごしている。

 

 そう、なんと彼は……モテ始めたのだ。

 

 

 ……男に。

 

 

「おい友田! 俺が思っていたのと違うぞ!?」

 

 クラスの男友達から引っ張りだこになった青野だが、納得がいかないと俺に訴えてきた。青野の少々ズレつつも真っ直ぐな性格は、思いの外男子たちにハマったらしい。

 

「クラスメイトと仲良くするのは大事だろ。なんか楽しそうだし」

「いや、楽しいけどさぁ……」

 

 ならいいじゃん、と思うのだが青野はまだ腑に落ちない様子。交友関係は多少広がったものの、女子との接点は全く増えていないらしい。

 

「おい青野ー、次のボウリングも楽しみにしてるぜー!」

「ははっ、最低記録の更新よろしくなー!」

 

 先週一緒に出かけたらしい男子たちが青野に声をかける。彼らは少し性格が荒くて声も無駄に大きい。俺はちょっと苦手な部類である。

 

 しかし彼らの悪ノリを上回るテンションで、青野は切り替えした。

 

「おいおい、次の俺は一味違うぞ。……最近はずっとプロボウラーの動画で学んでるからな!」

「あははこいつマジかよ!」

「動画撮る準備しとかねーとな!」

 

 青野はどうやら、あの悪ノリ関係に向いているようだ。無理しているとかでもなく、本当に合っているように見える。

 

 俺は青野たちが大きな声で喋っている輪を、少し離れて見ていた。

 

 

 一方的に1人を好きにイジるだけの関係。俺はあれを、友人関係とは呼びたくない。

 

 

 誰かがイジられて、1人がそれに応え続ける。イジる人たちは自分達が場を盛り上げていると思っているが、その実頑張って疲弊しているのは、ほぼイジられている1人なのだ。

 

 俺の望んでいる友人関係は、持ちつ持たれつなものであってほしい。人と言う字みたいな片方が寄りかかる形じゃなくて、本当の意味で支え合うような、そんな関係が良い。

 

「ねえ義人、ぼーっと窓の外なんか見てどうしたのよ?」

「ああ、漢字の成り立ちについて考えてた」

「えぇ? 今日は国語の授業無かったわよね……?」

 

 そういえば優紀は、いつの間にか人前でも名前で呼んでくるようになっていた。何があったのかは特に聞いていないけれど、とりあえず俺も合わせている。

 

「私、ああいう男子のノリ苦手だわ。なんかちょっと子供っぽすぎるっていうか……」

 

 輪の中心にいるのは、イキイキとしている青野。優紀はそれらをまるで別世界を見るような遠い目で語った。

 

「ま、元の春吉に戻ったような気もするけど」

「そうなのか?」

「男同士でバカ騒ぎしてるのが、なんかあいつらしいのよね」

 

 お、好感度が40から41になった。青野はもしかすると、過度なアプローチを仕掛けるより自然体の方がウケるのかもしれない。

 

「見ろ! これが俺の新投法――いってぇ!?」

 

 勢いよくボールを投げる動きをして、近くの机に思い切り手をぶつけてしまっていた。悶絶する青野と大笑いする男子たちがとてもうるさい。

 

「……まあ、ああなると思ってたわ」

 

 優紀の好感度が40に戻った。自然体でもダメだったので、もう救いはないのかもしれない。

 

 

「ふん、だからお嬢様はあんな猿共と触れ合う必要なんか無いんだ」

「あれ、倉敷さん?」

 

 俺の横から倉敷さんが会話に割り込んできた。確か一ノ瀬さんは家の用事で休みだったはずだ。

 

 一ノ瀬さんと一緒にいない倉敷さんは珍しい。というか制服姿を初めて見た。なんというか、違和感がすごい。

 

「……本当に、学生だったんですね」

「お前まだ信じてなかったのか」

 

 正直、今もただの口が悪いコスプレ趣味のボディーガードだと思っている。あのー、と優紀が俺に目を向けてくる。

 

「えっと、誰?」

「ああ、一ノ瀬さんのボディガードで……」

「えっと、誰?」

 

 あ、そっちもか。優紀からしたら一ノ瀬さんも知らないんだった。俺と倉敷さんを交互に見た後、優紀はポツリと言った。

 

「……ねえ、もしかして友田って節操なし?」

「なんてこと言うの」

 

 倉敷さんがぷっと噴き出したのを聞き逃さなかった。ふとスマホが鳴る。

 

『ちょっと同意ー』

 

 こら。当たり前のように俺の後ろの席で盗み聞きするんじゃない。

 

『だって会話聞こえてきちゃうんだもーん、不可抗力よねー』

 

 そんで心も読むんじゃない。俺1文字も打ってないのになんでわかるんだ。

 

「ふーん、サワチーね……」

「っ!?」

「あだ名よね、それ。仲良さそうだけど、誰なの?」

 

 優紀にチャット画面を見られてしまった。全身に緊張が走る。本名で登録していなかったのが幸いだった。後ろの唐沢さんはよそ行きモードを装っているが、1つ大きな粒の冷や汗が垂れていた。

 

「あんたのプライベートだから詮索はしないけどさ……その子、私より料理出来る?」

「え? どーだろ……料理してるイメージはないな」

 

 正体は隠しつつ、質問には答えておく。俺のなかでサワチーは、かなりズボラなイメージである。ぶっちゃけバランス栄養食とかで済ませてそう。なんて考えていたら、優紀はニヤリと笑った。

 

「そう? ならいいわ!」

「何が?」

 

 優紀は何故か嬉しそうになっていた。自分の得意分野で勝てそうだと思ったからだろうか。いや、なんで張り合ってるんだか。

 

「……だって、胃袋を掴んでいる方が強いじゃない」

 

 小声で何かを呟いた優紀。なんか掴むって言ってたような気がする。なにそれこわい。

 

「……へぇー」

 

 少し冷えた声が後ろから聞こえた。危ないよ唐沢さん、サワチー出ちゃってるから。一体何があったんだ。

 

 2人を見て何かを察した倉敷さんが、俺の肩に手を置いた。

 

「ま、頑張れよ友田(笑)」

「よくわかんないけど一番腹立つ……」

 

 どうやら俺は、なんか頑張らないといけないらしい。いや、何をだ。

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