ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
「瀬戸会長。いかがでしょうか?」
「……認めざるを得ない、のかしら」
校内の男子たちから雪女と称される生徒会長、瀬戸氷織。彼女はとある問題に直面していた。眉間を指でつまむ彼女に詰め寄るのは、悩みのタネそのものであるお嬢様、一ノ瀬夏蓮だ。
2人が向き合う神妙な空気がしばらく続いていたが、乱入者によって遮られることとなる。
「もー、変な所で強情なんだからー。一ノ瀬さんと倉敷さん、生徒会へいらっしゃーい」
「佐藤先生、ありがとうございます!」
「先生、そんな勝手に……」
瀬戸会長も佐藤先生の纏う緩い雰囲気に、あまり強く出られない様子。対して佐藤先生は、既に2人を生徒会へ迎え入れる気満々である。きっと彼女たちが立派な戦力になると見込んでいるのだろう。
「……先日お送りした茶葉、気に入っていただけたみたいですわね」
「ええ、お嬢様。好みが偏っていたので選定はスムーズに進みました」
訂正、佐藤先生ガッツリ買収されていた。どおりでさっきから室内中に上品ないい香りがするわけだよ。一ノ瀬さんと倉敷さんが悪い笑みを浮かべていた。これが金持ちのやり方か……。
「というか会長、何があったんですか?」
「一ノ瀬さんがあまりにも粘るものだから。思い切って、私の仕事を一週間丸投げしてみたのよ」
「思い切りすぎでは」
「断らせる事が目的だったのよ。全てこなしてきたのは想定外だったわ……」
生徒会の仕事ってそんな丸投げとか出来ていいのだろうか。諦めさせるためにふっかけたのに、一ノ瀬さんは涼しい顔で片付けてきたらしい。
「家での仕事に比べれば、大したことありませんでしたわ」
「お嬢様は決して男の前でふにゃふにゃになるだけの可愛い生き物ではない。友田、覚えておけ」
「志穂? 余計なことは言わなくて結構ですわよ?」
「失礼いたしましたっ!」
廊下や教室ではどうしても男が空間にいるため、本来の立ち振舞いが出来ないと言っていた。この生徒会室ではその心配がないみたいだ。ここでの一ノ瀬さんを見ていると、確かに立派なお嬢様なんだなと感じる。
2人の漫才を見ていると、瀬戸会長が隣に来てそっと耳打ちしてきた。
「けれど、おかげでその間は沢山巡れたわね。
「……そうですね、
会長に何度も連れ回されただけでなく、実は呼び方がこっそり変わっていたりする。サラッと呼んでいるように見えるけど、まだ耳は赤くなっている。ごまかすように、会長はフフッと笑う。
「ええ、次は県外ね」
「マジすか」
会長の梟欲は留まることを知らない。正直俺はもう全ての梟を見終えた気分だったのだけれど、会長の笑顔が見られるなら付き合うつもりだ。
「むっ……それで、です。瀬戸会長」
「な、何かしら?」
俺と会長の間を離さんとばかりに、一ノ瀬さんが割り込んでくる。……俺と一ノ瀬さんの肩が少し触れたのだけれど、本人は気づいてなさそうだからセーフ、なのかな。
「1つ、ご享受いただきたいことがあります。……殿方との接し方について、です!」
「接し方……ですって?」
彼女の目的は生徒会に入る事だけでなく、会長からそれを教わることだった。会長が校内ほぼ全ての男子をフったと知り、一ノ瀬さんは有用だと見込んだとのこと。
「その、どうでしょうか?」
「……私は、接し方というより、あしらい方を学んだだけよ」
会長が雑談について学んだ事の発端は、男たちからの告白をかわしたいというものだった。現にフった相手全員と仲良くなっているのを見たことがない。
「それでも良いですわ! ……その場しのぎでも、会話さえできるようになれれば目標は達成と言えるのです」
確かに一ノ瀬さんは父の宗一さんから、男嫌いでなければ女当主も務まるはずだと太鼓判を押していた。……親馬鹿補正がかかっているかもしれない、のは否定しきれないけれど。
「お嬢様、そんなの私に聞いてくだされば……」
「倉敷さんだと投げ飛ばしちゃうじゃないですか」
「駄目なのか!?」
「駄目でしょ」
だってそれ会話じゃなくて制圧してるもの。倉敷さんに任せたら、一ノ瀬さんが間違った方向に強くなってしまうだろう。
「……私も、友田さんと名前で呼び合う仲になりたいですし」
「……2人でいられる時間が減ってしまうのは、やはり許可出来ないわ」
倉敷さんのボケを拾っていたため、2人それぞれの呟きは聞き逃した。会長は断る方向で進むため、険しい表情で佐藤先生に向き直った。
「佐藤先生、やはり生徒会への加入は……」
「……全く関係のない話ですが、一ノ瀬家の庭では梟を飼っております」
「私も賛成です。手続きを進めてもらえますか?」
「おっけー」
倉敷さんが挟んだ言葉にまさかの即落ちだった。梟を引き合いに出された時の会長があまりにもチョロすぎる。倉敷さんに弱点を握られてしまっては、もう抵抗のしようがないのだった。
「これが私の練習を重ねたメモ帳。……ただし見せる代わりに、条件があるわ」
「わかっています。瀬戸様を定期的に我が家へご招待させていただきますわ」
「……あと、友田君も一緒で構わないかしら?」
「ええ! 私もそう言おうと思っておりました!」
なんかしれっと俺の予定も条件にねじ込まれていた。……今思うと、この時点でもう青野が入ってくる隙間なんてこれっぽっちも無くなっていたのかもしれない。