ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
会長の慈愛の笑みと、好感度9という底冷えするような青い数字。俺の目の前にはギャップが深すぎる光景が繰り広げられている。絵面的には、俺が保護されている感じだ。
「貴方を困らせる人がいたら、いつでも頼っていいのよ」
「でも……迷惑かけちゃうんじゃ」
「いつも私の趣味や都合に付き合わせてしまっているのだから、気にしなくていいわ」
主に梟とか梟とか、たまに鷲や鷹とかである。会長と何度も触れ合いに行った結果、それなりに猛禽類に詳しくなった気がしている。
「それに、私も気分が悪かったから思い切り突き放せてスッキリしたわ」
「そ、そうですか……」
青野という存在が、彼女にそれほどの不快感を与えている。好感度が低いことを数字以外でも証明されてしまった。もううつ手立ては無いのだろうか。
彼女の手が離れる。少し名残惜しさを覚えつつ、会長の言葉が続く。
「それに、結局義人君の合意無く生徒会に入れてしまったから……」
どうやら俺の加入が決まったことに、少し後ろめたさを感じていたらしい。そういう理由で助けてくれたのだと思ったら、どこか納得がいった。
「そんなの、全然気にしなくていいですよ」
「……私が言うのもなんだけれど、もう少し自分の都合を優先してもいいのよ?」
会長が話し上手になってからというもの、会話のペースは常に握られっぱなしになっている。
「そうね、代わりに今度は義人君の趣味に私が付き合ってもいいかしら?」
「俺の趣味、ですか?」
「ええ。いつも私の行きたい所ばかりだったから。今度は貴方の趣味が知りたくなったの」
そう言われると、これまで会長が決めた場所にしか行ったことが無い。次は俺に行き先を決めてほしいということなのだろう。それなら俺のやりたいことを思い浮かべて……。
「あれ、俺趣味が無い……?」
何も思い浮かばなかった。
「あら、そうなの? ……なんだか意外ね。貴方はいつも誰かしらに連れ回されているイメージだったから、てっきり多趣味なのかと思ってたわ」
「おすすめされたことはひとまずやってみてますね。けどどれも続かずでして……」
いつも相手に合わせるばかりだったから、自分の趣味と言えるものが無い事に気がついてしまった。最近活発になっているフクロウカフェ巡りやかどつよのプレイも、楽しんではいるものの自分の趣味とは言い難い。
趣味を持っている人って、いいなあ。自分の趣味を語っている人は皆目が輝いている。俺にはそんな自慢げに語れるような物が無い。これじゃあ誘えないな、と謝ろうと口を開く直前。
「なら、……私を趣味にするのはどうかしら?」
「えっ」
言った直後に会長はどんどん顔が赤くなり、生徒会室の隅に縮こまってしまった。
「ご、ごめんなさい。今のはちょっと攻めすぎたわ……忘れてちょうだい」
「は、はぁ……」
最近、会長のトークレベルについていけないときがある。今まさにそんなかんじだ。俺がよくわかっていない様子なのを見て、軽く咳払いして戻ってきた。
「趣味が見つからない時は、そうね……適当に街を歩いてみるのもいいと思うわ」
「そうなんですか?」
「ええ。ふと目についた物がヒントになる事もあるみたいなの。本屋とかで目につくタイトルを探すのもいいみたいよ」
「へー……」
確かに何かで聞いたことがある。自分が心の底で欲しているものは、情報を無意識に拾ってくる事があるらしい。恐らくその習性を利用した方法なのだろう。
ただ、自分のスケジュールを考えると1人で自由な時間は意外と無い。自分の趣味を見つけられるのはかなり先になるかもしれない。……なんだか、少し虚しい気持ちになってきた。
「じゃあ、次のお出かけはそれで決まりね。明日から早速実行するわよ」
「って、会長も来てくれるんですか?」
俺のモヤモヤを晴らすように、会長が予定を入れてくれた。その日は既に会長の予定が入っていたのに、良いのだろうか。
「元々そういう話だったでしょう。……今度は
どうしてか、名前の部分を強調されたような。それにどこか不満そうな顔をしている。心当たりが無いと迷っていたら、またしても両手で頬を包まれてしまった。
「ねえ、今は2人しかいないのだけれど? ……義人君?」
「……あ」
そうだった。青野の件があったからその事を忘れていた。
「すみません、氷織先輩」
「……わかればよろしい」
ふっと笑う彼女は、本当に温かい。けれど、どうしても頭上の冷たい数字が視界にチラついてしまう。心から喜べない今の状態が、心底もどかしい。
氷織先輩はどうして、俺の事を知りたいと言ってくれるのか。俺は逆に、その理由が知りたかった。次に出かけるときに、知れたらいいな。