ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第44話 攻めの一手

「友田さん、あまり緊張なさらないでください」

「いや、そんなこと言われても……」

 

 俺は今、誰もいなくなった教室で唐沢さんと腕を組んでいる。どうしてこうなったのか、数分前に遡る。

 

 

「この後青野が来るわけだけど、結局秘策って何なの?」

「ふふーん、それはねー……」

 

 不適な笑いを浮かべながら、彼女は突然俺の腕を取った。そして自分の腕を脇に通してきたのだ。

 

「な、なんで腕組んだの!?」

「えー? きまってんじゃん。ウチとトモの間に入る余地なんてゼロだぞーってことを示してやるんだよー」

「いやいや、それにしてもちょっと近すぎじゃ……」

 

 これじゃあまるで俺達が付き合っているみたいだ。俺は所詮ゲーム友達であって、そういう関係では……。

 

「いんや、これぐらいしてないとウチの秘策が成功しないんだからさ。このままで頼むよー」

 

 本当にどんな秘策なんだろう。これで2人はゲーム友達です、と言ってもなんか違う気がする。

 

 答えがわからないまま、今に至る。悶々とする俺をさておき、サワチーはよそ行きモードに入る。まもなくして、青野が教室に入ってきた。

 

「唐沢さんおまた……せ……? な、なんで友田とそんなに近……」

 

 俺達を見て、硬直した。頭の上にロード中の輪っかが見えた気がした。ロードが終わらない中、唐沢さんはいきなりトドメと言わんばかりに口を開いた。

 

 

「はい。実は私、彼と婚約をしている仲なんです」

「はぁーっ!?!?」

「えぇーっ!?!?」

 

 衝撃の告白。なんと唐沢さんと俺は婚約していたらしい。青野が俺を凝視してくるけど、俺も心当たりが無い。

 

「なんで友田も驚いてるんだよ!?」

「いや俺も初めて聞いムグッ」

 

 唐沢さんに素早く口を塞がれる。そして耳元でサワチーが囁いてくる。

 

「話合わせてよー。それにウチら、ちゃーんとそういう契約したじゃん」

「あ、あれはかどつよの話じゃ……」

 

 彼女の発言は、一応事実である。前にカップル限定クエストとかいうトンチキイベントの中で、婚約を誓わないと先に進めない箇所があったのだ。

 

 『……素材足んないからもっかいよろー』と言われて、何度誓うはめになったかは覚えていない。

 

 けど、結局あの素材俺の方だとダダ余りしたんだよな。何にそんなに必要だったのやら。聞いてもはぐらかされるから、迷宮入りとなっていた。

 

「いーの、嘘は事実と絡めて話すのがコツっしょー」

 

 何のコツだよ。そう返そうと思ったのだけれど、これ以上コソコソ話していると青野に疑われてしまいそうだ。そっと青野の様子を伺ってみる。

 

「そ、そんな……流石にNTRはマズいよな……いやしかし……」

 

 なんかとんでもない葛藤し始めたぞ。婚約者の横取りとかアウトでしかないだろ。青野の小声は他の人の普通の声と同じぐらいなので全部聞こえている。

 

「うーわ、リアルでNTRとか言ってんの初めて見た。……ブロックしといてよかったわー」

 

 こっちはちゃんと小声なので、横にいる俺にだけ聞こえた。俺も正直、彼女と同意見だ。

 

 

 思えば、青野の言動はどこかおかしいのだ。ヒロインたちと仲良くしたいという割に、気にするのは俺から聞く数字ばかり。

 

 ブロックされるほど嫌われてもどうにかなると思い込み、NTRなんて言葉を平気で使う。そう、それはまるで。

 

 

「……ウチはゲームのキャラじゃないってーの」

 

 

 サワチーのボヤキが、俺の中でカッチリとハマった。人を好感度だけで見ているから、婚約者がいても可能性があると思ってしまう。

 

 いや、今の唐沢さんの好感度8を見たら普通は諦めると思うけど。とにかく青野の考え方がズレているのだけは確かだ。

 

「挨拶も済みましたので、私どもはこれで失礼致しますね」

「あ、はい……」

 

 流石にここで攻める気は起きなかったのか、腕を組んだまま出ていく俺達に、青野はついてこなかった。

 

 元いた教室が見えなくなった辺りで、唐沢さんのよそ行きモードが解かれた。

 

「あの様子じゃなーんか諦めきって無かったっぽいなー。もっと見せつけておくべきだったかー?」

「あの、せめて先に言っておいて欲しかったんだけど。それに噂になったら唐沢さんが大変じゃ……」

 

 せっかくクラスではおしとやかでひっそりとしているイメージの唐沢さんなのに、婚約者がいるとなると話題の中心になって困るんじゃないか。そんな俺の心配は、だいじょーぶっしょと軽く流された。

 

「だってアイツに言いふらす友達とかいないじゃーん」

「いや、最近は男友達増えてるけど」

「……あ」

 

 サワチーは失念していた。青野は今日、男にはモテ始めていることを。さっきまでとはうってかわって、顔が青ざめていく。

 

「……ごめん。迷惑、だった? 迷惑だよね、やっぱ……」

 

 最近の唐沢さんは、グイグイ来たと思えば急に引いたりする。1度ネガティブに入ると、優紀より沈んでしまったりする。

 

 なんと声をかけたらいいか、しばし悩んでから口を開く。

 

「ま、俺に婚約者とかいたってあんまり話題になんないだろうし。唐沢さんも触れて欲しくない感じを出してれば、大丈夫じゃないかな」

 

 自分で言っててちょっと悲しくなるけど、自身の経験則だ。誕生日の話とかしたけど、覚えられてた試し無いし。そんなもんだ。

 

 俺の話が効いたのかはわからないけど、サワチーの顔色が少し戻った。

 

「……迷惑じゃ、ない? ……い、いやー。ちといきなり攻めすぎちったかなー」

 

 まだぎこちない笑顔だけど、調子が戻ってくれてよかった。この後は誰かと会うこともなく、無事に帰ることとなった。

 

 ……唐沢さんがギリギリまで腕を離してくれなかったおかげで、俺の制服が右側だけしわくちゃになったのだった。

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