ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
俺に仲介をさせる事で青野の好感度を上げる作戦は、見事に失敗だった。全員が青野に対して明確な拒絶を見せつけた。正直、この状態から挽回するためには、青野が別人に生まれ変わるぐらいしか思いつかない。
「くそっ、全然好感度が上がらないじゃないか! どうしてなんだ……」
「どうしてと言われてもな……」
俺からすれば考えるまでもないのだけれど、青野はどうも理解していないらしい。自分の行動が彼女たちに嫌がられている、とは思っていないのだ。
「いつもどうしたらいいって教えてるじゃないか。それで青野が上手くいかないのは責任持てないぞ」
「ぐっ……友人のくせに突き放すなよ……」
友人のくせに酷い言い様である。本気で友人だと思っているなら、青野のために言ってきた耳が痛いであろう忠告も、少しは聞き入れてほしい。
「もう、皆10以下になっちゃったな……」
「頑張ってるんだけどなぁ……流石にちょっとキツいぜ」
「……あの、俺だってしんどいからな?」
青野にどれだけアドバイスしたか、もう数え切れない。それらも全て無駄にされて俺もかなりメンタルにきている。嫌われる覚悟で絞り出した俺の苦言も、彼にはあまり響いてなさそうだ。
「はぁ……こんな結果もう聞きたくないぞ」
「じゃあ、もう止めるか?」
「……いや、続ける」
なんでだよ。ここまで嫌われているのに、まだ続けようとするのはどうしてなんだ。これ以上、惰性で続けていくのは耐えられない。ここは、思い切って聞いてみよう。
「なあ青野。そもそもさ、なんであの4人がヒロインだーなんて言い出したんだ?」
「それはな……いいか、笑うなよ?」
俺は、ずっとこれが気になっていた。入学初日からヒロインだと決めていたのは、やはりおかしい。前から知り合いだった優紀やサワチーならまだしも、全く知らないはずの氷織会長や男を一切寄せ付けない一ノ瀬さんを対象に入れている。きっと何かあるはずだ。
「……夢で、言われたんだよ。白髭の神様ってやつに」
「……おぉう」
どんな答えが来るのかと身構えていたのに、一気に力が抜けてしまった。なんか思った以上にぶっとんだ答えだった。
「雲の上みたいなところでさ、言われたんだよ。彼女たちを攻略せよーって」
「なんだそりゃ……」
そんな夢を真に受けて、俺は今日まで振り回され続けていたというのだろうか。……呆れる話だけれど、能力の事があるから笑って聞き流すことが出来ない。
「んで友田、お前の助けを借りろって言ってきたんだ」
「俺まで指名してきたの……?」
俺が青野に話しかけて、サポートをすることまで神に仕組まれていたと言う。……神様、だったら俺にも一言ほしかったんだけど。
「……なんて、嘘みたいな話だろ? でもさ、ヒロインを手に入れられるって話なら、乗ったほうが得じゃん?」
なんというか、聞けば聞くほど俺には損しかない話だった。その上青野が上手くいっていないのだから、尚の事協力する気が失せていく。
こんな話を聞かされたら、普通は記録なんて止めるところだろう。けれど、俺は記録を止める事は出来ない。その理由は2つある。
1つ目は、彼女たちとの繋がりがとても心地良いからだ。
『じゃあ次はこの日だから……夜ご飯になるわね。ふふん、だんだん好みの傾向が分かってきたわ! 次は何が良い?』
『次は義人君が行きたい所に連れまわしてくれて構わないわ。……いつも手伝ってもらってばかりじゃ悪いじゃない』
『先日、他のクラスの方からデートに誘われたのですが……婚約者との予定がありますから、と断らせていただきました。……てことでトモ、来てくれるよねー?』
『わ、私の特訓はまだ終わっておりませんわ。……他の男性を克服する予定などありませんし……いえ、何も言っておりませんよ?』
日々話すたび、俺を必要としてくれているような気がして本当に嬉しい。
少なくとも、彼女たちは俺のことをただのクラスメイト以上には思ってくれている、はずだ。好意的に関わろうとしてくれる相手を、誰が手放そうとするだろうか。
……だからこそ、怖い。
彼女たちの好意に、俺は応えようとすると躊躇ってしまう。記録を止められないもう1つの理由は、この関係が青野の好感度を知るために始まったものだからだ。
もしもこの能力が消えたら。或いは記録の手を止めてしまったら。彼女たちの関係も、中学までと同じようにあっさりと無くなってしまうんじゃないか。そんな嫌な予感があるから、いまだに記録帳を手放す事が出来ずにいる。
そろそろ、次のノート買わないとな。ため息交じりにそう思った所で、青野が俺を引き戻すようにバンと机を叩いた。
「——だから友田! 俺の好感度上げといてくれよ!」
「……は、え、はぁ!?」
青野がとんでもない事を言いだした。まさかの丸投げ宣言に、思考が上手くまとまらない。
「だって友田は助けてくれるんだろ? どうも俺が動いても逆効果みたいだしさー」
「いや、それは流石にありえな——」
まさか、最近流行りの放置ゲーと同じ事ができる、なんて考えているのだろうか。そんな事、現実であるわけがない。俺が反論をする前に、青野は教室の時計を見て立ち上がる。
「俺、また男同士で遊ぶ約束してるからさ! 俺が戻るまでに30以上ぐらいにはしといてくれよ、じゃーな!」
一方的に言うだけ言って、席を立ち上がり去ってしまった。全員10近くになってしまった好感度を本人抜きで30だなんて、そんな無理ゲー不可能だ。
「む、無茶苦茶だ……」
やりようのない憤りに、ノートを掴む力が強くなる。相手がただの青野なら、とっくに投げ出している。
けれど、その裏に本当に神様がいるのなら——どうしようもない。明日からが、とても憂鬱になってしまった。
「……春吉のやつ、あんな無茶な要求を押し付けてたのね。夢で言われたからって、意味不明じゃない」
「ええ。前にもここで、偶然聞いてしまいましたので。これは皆様をお呼びして共有しておこうと思いまして……」
「生徒会室でやけに彼を立てようとしていたのは、そういうことだったのね……」
「志穂が彼を危険視していたのは、正しかったのですね……成程、放ってはおけませんわね」
一方その頃、教室の陰でそんな話が交わされていることなど知る由もなかった。