ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
第48話 審判の日?
青野、衝撃の放置発言があった翌日。俺はその日の授業が全然頭に入らなかった。時々唐沢さんが肩をつついてくるものの、俺は曖昧な返事しか出来なかった。
本当に、どうしたものか。正直、無理だと叫びたい。
放課後になると青野は、俺に一方的なアイコンタクトを送って教室を出ていく。いつもなら好感度チェックのために教室に残っていたというのに、本気で放置するつもりらしい。
「あ、いたいた……」
教室に優紀が入ってくる声がした。そういえば今日は彼女と一緒に帰る約束だったか。思考が上手くまとまらないまま帰り支度を進める。
「名波さん。……友田さんの事で少々お話が——」
あれ、唐沢さんが優紀に話しかけている。想定外の状況に顔を後ろに向けるが、コソコソと話した後2人とも頷いて、そのまま教室を出ていった。
そして教室には、誰もいなくなった。あまりの静寂っぷりに、俺もようやく頭が回り始めた。
「え? もしかして放置って、俺がされる方?」
前言撤回、まだ頭が上手く回っていなかった。完全に話しかけられるのを待っていた俺は、肩透かしついでにいらん結論を出してしまった。
しかし、優紀は一体どうしたのだろうか。そもそも唐沢さんと2人で話すような仲でもなかったはず。帰り支度途中で硬直してしまっていた俺を、解除するかのようにスマホが鳴った。
『大事な話があるから、生徒会室に来て』
妙な胸騒ぎがした。どうして優紀が生徒会室に俺を呼ぶのか。唐沢さんとどういう話をしてそうなったのか。そもそも会長はどこにいるんだ。頭の中が疑問だらけで破裂しそうだ。
「……行く、か」
重い腰を上げる。これからの話が、なにか大きな分岐点となる。そんな予感が俺を不安の渦へと追い詰めていた。
生徒会室の扉を開けると、優紀では無く会長の声がした。
「来たわね、友田君」
「は、はい。……あれ、4人?」
今日は珍しく、生徒会室の椅子が埋まっていた。会長に優紀、唐沢さんと一ノ瀬さん。なんと青野の言うヒロインが全員集まっていた。
「おい、私もいるからな」
「あ、そうですか」
一ノ瀬さんの後ろには、倉敷さんが立っていた。今日はボディガードの服装なのね。ただ申し訳ないけど、今は本当に倉敷さんどころじゃない。彼女たちの神妙な顔持ちが、俺に何を伝えようとしているのかが全く読めない。
「あの、皆どうしたの……?」
意を決して、語りかける。少々の沈黙の後、唐沢さんが口を開く。
「私が皆さんを集めたんです。とある事情があったものですから」
「ええ。皆様とはほぼ初対面ではありますが……共通点がおありでしたので」
共通点。それはきっと、青野がらみの話だ。彼が神から攻略せよと名指しされたヒロインたち。実際には攻略どころか、全員から嫌われてしまっているけれど。
待て。じゃあ何故青野じゃなくて、俺が呼ばれたんだ。
悪い想像がどんどん膨らんでいく。もしかして、全てバレてしまったのか。俺が彼女たちの好感度をつけているとか、そのために関わるようになったとか。
思えば俺の行動は、知られたら嫌われる要素ばっかりだ。一気に込み上げてきた罪悪感が、俺の肺や心臓をキュッと縛られた気分になる。冷や汗が止まらない。
「すみません、友田さん。私、全て聞いてしまいました」
「え、……何を?」
そうか、唐沢さんか。最近、俺の話がやけに聞かれる事が多いと感じていた。いつもどうやっているのかはわからないけれど、妙にバッチリなタイミングでメッセージが飛んでくるのだ。であれば、次の言葉は……。
「友田さんが、青野さんに無茶な要求をされていて。……私たちの好感度を上げておいてほしい、と」
ああ、これは終わった。全身の力が抜けて、今にも崩れ落ちそうだ。手に持っていた鞄が、すり抜けて落ちる。
……と、とりあえず謝ろう。膝を床について、両手は、肩幅だっけ。土下座とか、初めてやるなぁ……。
「よ、義人君!? 何をしているの!?」
「義人様!? どうしてそのような……!?」
あれ、先輩と一ノ瀬さん。その呼び方って2人きりの時だけじゃなかったっけ。それにもう、呼ばれる資格無いと思うんだけど。
「ちょちょちょ!? トモ最後まで聞いてってば!?」
「私たち別に義人を責めるつもりじゃ……っていうか唐沢さんなんか言葉遣いが——」
唐沢さん、もといサワチーと優紀もパニックになっている。なんか、さっきまでと空気が違うんだけど。もしかして、俺何か間違えてるのかな。
「……とりあえず落ち着け。それはしなくていい」
倉敷さんが俺の両肩を掴んで、引き戻してくれた。恐る恐る顔を上げると、初めて皆の顔が見えた。……確かに、俺を責める目とは違いそうだ。
「え……じゃあ、どういうこと?」
全然理解できていない俺と、申し訳なさそうにしているヒロインたち。そして後ろでクソデカため息をつく倉敷さん。今日の放課後は、長くなりそうだった。