ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第49話 優しいけじめ

 とりあえず、全員から謝らなくて良いと言われた。言われるがまま用意された席につく。そして説明された。別に怒っているわけではなく、俺が困っているのを助けたかっただけだと。

 

 状況がまだ飲み込めない俺を見てか、優紀が俺の目をハッキリと見てこう告げた。

 

「大丈夫、ちょっと確認したいだけだから。ね?」

 

 そして彼女は、俺の鞄を手に取った。

 

 

 ——もしも俺が彼女たちの事をノートに記録していたと知られたら、きっと嫌われるだろうと思っていた。だから、本人たちからは罵倒されて、クラス中から犯罪者のように扱われる可能性まで考えた。

 

 ペラ……、ペラ……。

 

 だから、買う時に鍵付きのノートにした。そして誰にも見られないよう、開くタイミングも制限した。自分が学校生活を無事に乗り切るために。

 

 ペラ……、ふぅーん……。

 

 それが、ついにバレてしまった。下手すれば学校に来られなくなる、とまで覚悟していた。

 

 ペラ……、へぇー……。 

 

 そう、覚悟、して……いたのだけれど。

 

 

「うん、私が春吉のどこに怒ってたのかバッチリ押さえてるわ。流石よねー。自分の事には疎いのに……」

「私の雑談力が上がったことを、自分事のように喜んでくれていたのね……嬉しいわ」

「ってかトモ、付き合い良いってレベルじゃないっしょこれ……なんか誘うの申し訳なくなってきたんだけど」

「私が傷つかないよう、アドバイスの加減も配慮してくださっていたなんて……その社交性、見習わせていただきますわ」

 

 

 記録帳を回し読みしながら褒めちぎられる覚悟は、流石にしていなかった。好感度の数字や俺の感想なども全部、最初から隅々まで読まれていて全身がムズムズする。

 

「あの……もう勘弁して……」

「へへーん。トモの本音を知れるチャンスを逃す手はないじゃんねー?」

「マジすか……」

 

 想像していたのと逆の方向でこの場に居づらい。もう恥ずかしいし申し訳ないしで、心がグチャグチャである。しかし俺の訴えは全然届かない。

 

「安心しろ友田。私はだいぶ引いてるぞ」

「あ、そうですか」

「皆何故受け入れられるんだ……? あまつさえお嬢様までその1人に……」

 

 倉敷さんの言う通り、俺も全員から引かれると思っていた。皆、心が広すぎやしないだろうか。

 

「あの、皆嫌じゃないの? 勝手に記録なんか付けてたんだぞ……?」

 

 本当に自分で言うのもなんだけど。俺の言葉に優紀が少しだけページを捲る手を止める。

 

「そりゃあ、名前と数字だけ書かれてたらキモチワルかっただろうけど」

「うっ……」

「でも、アドバイスから貴方の優しさが伝わってくるわ。言われて嫌な事は、1つも書いていないのだし」

 

 氷織先輩のフォローが逆にしんどい。けど、様子からして嘘を言っているようには見えない。ずっと興味津々にノートを見続けている一ノ瀬さんが、ここでようやく顔を上げた。

 

「これって、数字はどのように決めているのですか?」

「えーと、なんとなく……かな」

「なんとなくって割には的確なのよねー……」

 

 本当は今も頭上に10以下の寒々しい数字が見えているのだけれど、これは流石に信じてもらえないだろう。

 

「でもさー、これもうやんなくていいっしょ?」

「え?」

 

 唐沢さ……もといサワチーがサラッと言った。

 

「だって肝心の春吉がほったらかしにし始めたんでしょ?」

「貴方だけが頑張り続けたって、意味がないと思うのだけれど」

「それは……まあ」

 

 優紀と氷織先輩の言うことは最もだ。けれど俺にとっては、今まで彼女たちの繋がりを表したものだ。手放すのはかなり怖い。

 

「ですので義人様、こちらは私たちで預からせていただきますね?」

「えっ」

 

 そう言って一ノ瀬さんは、倉敷さんに手渡す……ちょっと倉敷さん、なんで急に軍手つけたんですか。ノートは一応綺麗に扱っていたと思うんだけど。

 

 ノートを持った倉敷さんは、生徒会室から出ていった。あれが手元になくなると、突然使命を取られてしまったようで、なんとも言えない不安に包まれる。俺の心境が顔に出ていたのか、サワチーが様子を伺ってきた。

 

「あの、もしかしてさ。あれが無かったらウチらと一緒に居る気無い……なんて、言わないよね?」

「そんなわけない!」

 

 俺もそんな事は望んじゃいない。最初こそ青野から頼まれた事がきっかけだったけれど、彼女たちと一緒にいる事を望んだのは、俺自身だ。わざわざ手放すような真似なんか、したくないに決まっている。

 

 俺の答えを聞いた4人は、ほっと安堵の笑みを見せる。

 

「なら問題ないわね」

「ええ、今後ともお付き合いくださいね?」

「あ、はい」

 

 俺の想像していた最悪の未来は、全く起こらなかった。それどころか、彼女たちは俺の抱いていた不安すらも吹き飛ばしてくれた。……よかった、皆に突き放されなくて。

 

 

「そういえば、よそ行きモードはいいのか?」

「あー、なんか皆に即見抜かれちゃったんだよね。だからここではいいやーって事で」

 

 何だか、俺が思った以上に皆の関係は深まっているようだ。昨日初めて集まったと言っていた気がするけど、早すぎやしないだろうか。

 

 ね、とサワチーが話を振ると、さっき戻ってきた倉敷さんも含めて皆軽く頷いた。

 

「私に媚びてくる人がたくさんいたから、なんとなく肌でわかるようになってたわ」

「相手が建前か本音か、お母様に鍛えられていますから」

「ボディガードとしては当然だな」

 

 それぞれ見抜いた理由を話す。俺は全然わからなかったのに、皆すごいな。……ただ1人、あれ、という顔をしている。

 

「……えっ、もしかして気づいてなかったの私だけ!?」

「大丈夫だ優紀。皆がちょっと特殊なだけだから」

 

 人の本当の性格とか、わからないほうが普通だと思う。好感度が見えていたって、わからないことの方が多い。てっきり嫌われると思ったのに、結果は全然そうじゃなかった。……俺はまだ、皆の事を全然理解出来ていなかったらしい。

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