ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
ここまで3人の好感度は、正直ボロボロといってもいいだろう。ヒロイン語りで力を使い切った青野は、もう限界寸前な様子。けど始めたのはそっちなのだから、俺は構わず4人目の評価に移る。
「ラストは一ノ瀬さんな」
「あぁ……」
4人目のヒロインは、箱入り娘で男が大の苦手な1年生、一ノ瀬夏蓮。一ノ瀬グループと言えば、国民の2人に1人は知っているほどの大企業だ。今俺が手にしているノートも一ノ瀬印がついていたりと、とにかく活躍の幅が広い。
そんな企業の社長である父親は、かなり近寄りがたい厳格な顔立ちをしている。そしてその友人たちもかなり厳つい人たちが多い。その影響だろうか、娘である彼女は男に対して強い苦手意識を持ってしまったとのことだ。
「一ノ瀬さんはずっと変わらず、30だ。結局、まだまともに話せてないんだったか?」
「ああ。姿を見かけても、すぐにいなくなっちゃうんだ。全く追いつけないし、黒服たちのガードも強くてさ……」
数字は30と低め。しかし彼女の場合は、青野の事をほぼ認知していない。そのためか、色は雪のように白かった。まだ赤か青のどちらにも傾きようがない、という表しなのかもしれない。
青野は一ノ瀬さんの姿は知っている。しかし、クラスが違ったり通学が黒塗りの車だったりと、接する機会が本当にないのである。確かに彼女は浮世離れしたヒロインのようだが、青野が狙うのは相当厳しいだろう。
「そんなにガード凄いのか?」
「あぁ。クラスメイトの男子でも近づく事すらできないらしい。女子たちに可愛がられているから、防壁みたいになってるみたいだ」
「過保護すぎるだろ……」
それほどまでに男が苦手な一ノ瀬さんは、なぜ共学である桜花高校に通っているのか。それは、本人の希望らしい。
『まだ怖いけど……、パパやママに、迷惑かけっぱなしは、嫌だからっ』
彼女は男への免疫を付けるため、あえて男がいる環境に身を投じたのだ。その覚悟は立派だと思うけれど、青野の話を聞いた限りだと、あまり成果は出せないと思う。だってガード体制が完璧すぎて、男子と全く接触出来てないんだもの。
「なあ友田? なにか友人らしいアドバイスは無いのか?」
「そうだなー……、男が苦手ってところを助けられたら良いと思うんだけど、まず男って時点で近づけなさそうなのが問題だし……」
「よし、なら女装でもするか?」
「待て待て」
絶対に止めた方がいいと思う。もし仮に女装が上手くいったとしても、実は男性でしたとバラした時のリスクが大きすぎる。失敗すれば彼女のトラウマはより深いものとなってしまうだろう。
「まずは、黒服たちに信頼してもらうのが先じゃないか?」
「そりゃ無理だ。会うたび『お前は女の敵だ!』って投げ飛ばされるからな」
「何やらかしたらそうなるんだよ……」
これはもう手遅れなんじゃ、と思わず天を仰いだ。俺の知らない間に青野は、黒服たちから敵認定されていたようだ。ちなみに、黒服たちは全員女性である。
俺のアドバイスに不満だったのか、青野はじれったそうに、頭をかきながら俺に言った。
「そういうのじゃなくてさ。もっとこう、夏蓮ちゃんのトラウマがなんなのかとかを知りたいんだよ」
黒服たちが青野を弾いている理由は、なんとなくわかる。青野は、距離の詰め方がおかしい。まだ話したことも無いのに異性を名前呼びしたり、勝手に人のトラウマを探ろうとする。少なくとも、他人の事情に踏み込まないのが信条の俺からしたら、まるで理解できない行動だ。
「……いや、俺も知らないな」
「なんだよー、友人キャラならヒントぐらいくれると思ったんだけどなー。またこの後も突撃してみるしかないな!」
「……」
もし俺が友人キャラなどという役割でなく、親友と呼べる間柄だったなら。青野の言動を嗜めたりするのだろうか。『突撃なんかしちゃ駄目だろ』『人のトラウマを勝手に聞き出そうとするな』等、言った方が良いと思う言葉は、いくつも頭に浮かぶ。まあ、口に出す度胸は、無いのだけれど。
それに俺は、これ以上一ノ瀬さんの事を喋るわけにはいかない。何故なら、一ノ瀬さんの父と会った時、ハッキリと忠告されているからだ。『娘に何かあったら承知せんからな!』という重すぎる親心に、今思い出しても胃もたれがしそうだ。