ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
青野がまた行動を変えた。というか自分で動かなくなったことは、一部の知り合いに伝わった。
「優紀ちゃんを放置するとか、ほーんとロクでもない幼馴染み様だよね」
「所田さん朝からブチギレないで」
声の方を見たら、いきなりクライマックスだった。一見笑顔に見えるけど、ハッキリと青筋が見えている。青野への好感度もとうとう1になっていた。もし0になったら一体どうなっちゃうんだろう。
「愛香ったら、昨夜あの話をしたらもうずっとこの調子で……困ったわ」
優紀が大好きな所田さんとはいえ、一晩中怒りが続くことってあるんだね。どう接したもんかと考えていたら、彼女は大きくため息をついた。
「はぁ……幼馴染みって、なんなんだろうね」
「うわぁ、急に語りモード入らないで」
俺の机に肘をついて、急にバーの常連みたいな空気を出してきた。情緒どうなってるんだろう。
「ほんと、ただ昔からの付き合いってだけなのよね。それなのに、周囲からは仲良しみたいに扱われるし」
なんか優紀がちょっと乗っかった。俺の隣から同じくバーの客みたいに愚痴り始める。だよねー、と所田さんは相槌を決める。
「本人の意思関係ないもんねー。変に囃し立てられそうで嫌だなー」
「……一時期は、そういうことを考えたこともあったけど、やっぱ無し無し。ありえないわ」
俺が最初に見た優紀の高い好感度は、一時の迷いだったらしい。……もう、8になっちゃってるもんな。60とかだった頃が懐かしい。
「どうやら青野君は、噛ませ犬にすら及ばなかったみたいね」
「しれっと入ってきたね光井さん」
同じく2人と同じ目線の高さで、水筒をグラスみたいに持って現れた光井さん。少し離れたところで誘田君が呆れた目で傍観している。
「それにしても……友田くん。やはり貴方は私と同類だったようね」
「え?」
何の話だろう。俺は別に創作好きではないんだけど。どこに同類の要素があったのか。バーの設定から抜け出した光井さんが俺ににじり寄ってくる。何怖い。
そして次の光井さんの言葉に、衝撃が走った。
「人の好感度が、見えるのよね?」
「なっ!?」
「ええ。……私には、わかったわ」
それは、ヒロイン達にすら打ち明けていないはずの、神から与えられた能力の話だった。光井さんにはそもそも記録帳とかの話も伝わっていないはず。
しかし彼女の自信。そして無邪気な笑みからは、悪意を感じない。もしかしたら、もしかするのかもしれない。
「ま、まさか……光井さんも?」
「ええ、そうよ」
これは、同じ悩みを持つ仲間が増えるのか。そんな希望の光が俺の心に差し込んだ気がした。
「光井さんも、頭上に——」
「人間観察をしすぎたあまり、その人の仕草や表情から全てを理解できるようになってしまった。そう、いわば同志! 存分に創作しろという天からの使命!」
「ごめん多分違うわ」
なんというか、能力は能力でも質が違っていた。光井さんのは単に極めすぎて身に付いたやつだ。俺のは神からポンと授けられたやつだから、これ違うな、うん。
「友田ー、そのモードになった光井は笑って流すのがいいぞー」
「誰が得意な話題になると急に捲し立てて喋りだして、後で思い返しては1人反省会をしてしまう前髪目隠れ陰キャ眼鏡なのよ!」
「誰もそこまで言ってないぞー」
誘田くんの言い様に、光井さんが噛みつく。ついでに言うと、光井さんは前髪長くないし、眼鏡もかけていないのである。……確かに、誘田君くらいの受け流し方がいいみたいだ。
「……ねえ光井さん、いつまで義人の手を握ってるわけ?」
「あら、ごめんなさい」
いつの間にか掴んできていた手がパッと離れる。というか、結構痛かった。光井さんの握力が強すぎて、俺の手が真っ赤になっていた。
「うわ、いたそー……」
優紀が俺の手を取って、不安そうに様子を見る。痛みは引いたから大丈夫だと言っても、優紀の手は何故か離れる気配がない。
「え、どしたの?」
「……上書き」
声が小さすぎて聞き取れなかった。聞き直そうとしても、優紀は俯いたままになってしまう。やっぱり手は離れない。
「あぁー嫉妬する優紀ちゃんだぁー……」
蕩けるような声が横から聞こえてきた。見ると、何故か所田さんの機嫌が直っていた。なんでかわからんけど、機嫌良いなら良いか。
「……今の呟き、ヒロイン力高すぎるわね」
そんで何で俺より離れている光井さんが優紀の呟きを聞き取れてるんだ。本当に何らかの能力あるんじゃないかと思えてきた。