ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第52話 なんだか羨ましくて

 なんてこと無い、平凡な俺の家に着いた。既に来たことのある優紀以外は、まじまじと観察している。

 

「到着ね!」

「よしゃー、リスポーン地点確保ー」

「こらこら」

 

 かどつよじゃないんだから、やられてもここに戻ってくるとかはない。植え込みを勝手にガサゴソするんじゃありません。

 

 鍵を開けて、4人を中へと入れる。最初に氷織先輩が口を開いた。

 

「あまり、物を置いていないのね」

「そうですね。無駄がない、と言うのでしょうか」

「はは。俺も親もあんまり家にいないから、誰もこだわらないんだよなー」

 

 もはや殺風景とも言えるほど、趣味的な物が何も置いていない。最低限の靴や傘ぐらいのものだ。良いことと言えば、掃除が誇りをはらうだけで終わる、ぐらいだろうか。

 

「……キッチン以外はねー」

「あ、あははー……」

 

 一足先に家の中へ入っていた2人の声が聞こえる。明らかに調理器具だけが揃いぶみしているキッチンを、訝しげに見つめるサワチー。これは誰が置いているものなのか、完全にバレている。

 

 そのまま流れで俺の部屋へ。誰も躊躇うこと無く男子の部屋に入っていくのは、ちょっとどうなんだろう。そう疑問をいだいたのは、この空間に俺1人だけだった。

 

「あ、そのパソコン。何につかってるんだろうってずっと気になってたのよねー」

「あー、買ってからずっとかどつよ専用マシンだな……」

「おっ、うちのおすすめしたコントローラーあんじゃーん。あげたマウスパットも、サイズちょうどだね。なによりなによりー」

 

 そう言いながら俺のデスクに居座り始めるサワチーに、今度は一ノ瀬さんが目線を送る。

 

「……唐沢さん、貴女も人の事を言えないのでは?」

「てへ」

 

 てへではない。俺の生活の場に女子達がいるというだけで恥ずかしさがあるというのに、俺が普段やっていることをなぞられていくのは、かなり刺激が強い。

 

 全く、と俺の方を見た一ノ瀬さんが、俺の後ろに積まれている段ボールに気がついた。

 

「あら……。義人様、これはもしかして……」

「ああ。こないだ一ノ瀬って名前でプロテインが大量に贈られてきたんだよね」

 

 そう、先日いただいたプロテインが案外美味しかった。そう宗一さんに伝えたら、ここぞとばかりに大量に送りつけてきたのである。あの人はどうも加減という言葉を知らないらしい。

 

「ああ、やはりパ……宗一さんの仕業ですね」

 

 ため息交じりだけれど、ご当主様呼びよりマシになっている。父の事を許すまではもうちょっとみたいだ。これ以上、盗み聞きとか余計なことしなければいいのだけれど。

 

 

 ところで、さっきから氷織先輩が静かだ。一体何をしているのだろうと思いながら玄関を見に行く。そしたらなんと、玄関の一部がビフォーアフターされていたのである。

 

「な、なんだこりゃ……」

 

 

 靴棚の一角が、小さな木彫りの梟だらけになっていた。しかも全員目の焦点が合っていなくて、見ていると不安になってくる。

 

 

「あの」

「……」

 

 随分と体積が萎んだ鞄を持った会長は、俺から露骨に目をそらした。しかも彼女は、少し不満そうに頬を膨らませている。

 

「先輩。何故こんな奇行を……?」

「……」

「この状況で知らんぷりは流石に無茶ですよ先輩」

 

 知らんぷりしながらも、こっそり梟達の向きを微調整している。俺にはどういうこだわりなのかが全くわからない。

 

「トモどしたんー? ……ってうぇ!?」

「ひゃっ!? なによこれ!?」

「あら、とても可愛らしいですわね!」

 

 サワチーと優紀が驚く中で、一ノ瀬さんだけは趣味が合ったらしい。氷織先輩が一ノ瀬さんに一瞬だけ、期待の眼差しを向ける。しかし直ぐにまたすねたようにそっぽを向いてしまった。

 

「あの、どうしたんですか……?」

「……」

 

 ここまで意固地になっている会長なんて初めて見る。俺が理由を聞くまで動かないと悟った彼女は、少し恥じらいながら俺の裾を摘みながら口を開いた。

 

 

「……皆、彼の家に何か置いているんだもの。私だけ何もないなんて……なんだか、ずるいじゃない」

「あ……」

「だから、私も何か置きたかったのよ……」

 

 

 彼女の可愛らしい嫉妬と、俯いてからの上目遣いの姿に、全員が心を撃ち抜かれた。

 

「あ、あれー……? なんか、会長って私のイメージと全然違うんだけど……」

「なんというギャップ攻撃……。うちらのアドバンテージが一気に持っていかれた気分なんだけど」

「瀬戸会長……やはり見習いたいお方ですわ……」

 

 普段の凛々しい姿からのギャップに、俺の心臓は高鳴った。……のだけれど、大量の梟達と目があってしまい直ぐに収まった。

 

「……会長。流石に一匹だけにしてください」

「……仕方ないわね」

「なんで俺が譲られる側なんですか……」

 

 子供が犬や猫を拾ってきた時の親の気持ちって、こんな感じなのかもしれない。渋々鞄に梟を戻していく先輩の姿を見て、そんな事を思ったのだった。

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