ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
会長の縄張りが決まったところで、皆が俺のベッドに座る事でようやく落ち着いた。床クッションから4人が揃っているのを見ると、なんだか壮観である。次集まる時までには、人数分のクッションとか用意した方が良さそうだ。
「それじゃあ、義人が何を抱えているかを聞かせてもらったことだし」
「次はうちらが話す番だねぃ」
俺の記憶では、自分から話した覚えは全く無いのだけれど。ツッコんでいても話が進まないので、ここは流すことにした。
「えっと、どこからお話すればよろしいのでしょう?」
「そうね……そもそも私たちが一緒にいるところから知らなかったんじゃないかしら?」
氷織先輩の言葉に1つ頷く。彼女たちは別に知り合っていなかったはず。サワチーが皆に情報を伝えただけだと、4人が団結して動く事にはならないだろう。
「それじゃ、この資料をご覧くださーい」
「ええ、義人君のチャットに送るわね」
「え、資料?」
ちょっと何言ってるかわからないまま、回想タイムが始まった。
時は青野が放置宣言をした辺りまで遡る。教室の外で盗み聞きをしていた彼女たちは、青野の言葉を飲み込むのに若干の時間を要した。
「——今の話でおわかりかと思いますが……私たちは皆、青野さんに目をつけられていた、という事になります」
唐沢さんによって共有された、青野の目的と友田の状況。自分たちが攻略対象になっていたという事実に、皆頭を悩ませていた。
「なんか、話が飛びすぎてて頭が追いつかないわ。春吉のやつ、そんな事を企んでたわけ……?」
長年の幼馴染ですら、脳が理解を拒んでいる。自分だけでなく彼女たちも自分に惚れてもらいたい色ボケになっていた、そんな事実を受け止めるのは非常に困難だった。
「……これなら、真っ直ぐに告白してきただけの男達の方がまだマシね」
彼に負担をかけさせた上、自分はただ強引に何度も迫ってくるという迷惑行為を働く男。氷織としては良い迷惑でしかなかった。
「何度か志穂が投げ飛ばした厄介男がいる、と聞いてはいました。けれど、想像以上におかしな方なのですね……」
元より男が苦手である夏蓮だが、青野はそれ以前の問題だと断定した。そもそも前に会った時の印象も最悪だったため、好感度など有って無いに等しいと言えるだろう。
「……実は彼とは前からネット上では知り合っていたのですが、彼の本性を知ってからは関係を絶たせていただいております」
「え、そうだったの?」
千紗も自分の事情をやんわりと説明する。リアルでの付き合いに警戒心が人一倍強い彼女は、結局青野にサワチーである事は隠し通せている。ただし、代わりに唐沢さんとして再びマークされたのは本人も想定外だった。
「……成る程。つまり、ここにいる全員が似た状況に置かれている、という訳ね」
「そういう事です」
氷織の一言で、皆理解した。自分たちは青野に勝手にヒロイン扱いされた上、友田を使って自分が付け入ろうとしているのだと。
「そして、友田様がかなり良くない状況に置かれている、のですね」
全員が教室を覗き見ると、青野が出ていった後に残された友田が1人で頭を抱えている。
「いや、義人もなんで引き受けちゃうのよ……」
「彼は優しすぎるから、人の頼みを断れないのね……」
「私の練習も、断られた事がありません。少々、心配に思っていたところでしたわ」
優紀の言葉に、友田が断れない人間だと知っている彼女たちは歯がゆい気持ちを抱えた。サワチーも口には出さないが、散々自分の都合でクエストに連れ回しまくった事を後悔している。
「では、ここからが本題です。……私は、友田さんを助けたいと思います。皆さんはどうでしょうか?」
そう、ヒロイン達の中で口火を切ったのは、唐沢さんだ。彼女の発言は、ただ彼を助ける以上の意味を含んでいる。そう全員が理解していた。
「当然!」
「ええ。」
「私も同意見です」
彼女たちは迷わず、賛同した。これまで友田に自分の悩みを助けてもらった。今度は自分が助ける番だと、皆の意思が完全に一致した。
それから彼女たちはできる限り情報を共有し、友田の悩みを解決するため動くことを決意したのだった。
「……あの、なんでこんな小説仕立てなんだ?」
俺がここまで見ていたのは、氷織先輩から俺のスマホに送られてきた力作のメッセージだった。よもやここまでの経緯を文章で見せられるとは思わなかった。
ちなみにメッセージの一番下に「脚本:光井」と書かれていた。あんたの仕業かい。
「そういうことだから、今度は私たちが義人の悩みを解決する番ってわけ!」
「拒否権は無いぞー」
「えー……」
なんか、色々わかったけどわからん、というのが正直な感想だ。俺にそこまでしてもらうほど、彼女たちに恩があるとは思えない。
「……まずは彼の自信の無さをどうにかする必要があるわね」
「ええ。私たちがどれだけ助けていただいてきたかを理解していただきましょう」
この日はとりあえず解散となったけれど、明日からどうなるのかがわからない。少なくとも、悪いようにはされないだろう、多分。