ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
ヒロインズが我が家に集った翌日の休み時間。そんな事を知る由もない青野は男たちと教室を出ていく。
その直後、珍しい人影が入ってきた。先輩が教室に入ることで、少しざわつ……かない。そして俺の前に仁王立ちをする。
「なあ友田、倉敷先輩はどこのクラスにいるか知らないか?」
「え?」
なんと、副会長が倉敷さんを探すため俺を訪ねてきた。廊下以外で会うのは初めてな気がする。なんだったらそれがいつだったかも覚えてない。
「倉敷さんなら、一ノ瀬さんのボディガードですしそっちのほうが知ってるんじゃ……?」
「おいおい、あの一ノ瀬さんに男が近づけるわけが無いだろう」
「……そうでした」
自分が普通に会えているから、すっかり忘れていた。実は今日、一ノ瀬さんが自力で俺の教室まで行こうとしていたのだけれど、リタイアしたそうな。
「なら、そうだな……どのクラスなのかだけでも知りたいんだ」
「あ、それなら確か、会長と隣のクラスだって言ってた気がします」
「おお! そうなのか!」
眼鏡越しに目を光らせた副会長。会長という言葉には全然反応しなかった。多分だけど、彼は本気で倉敷さんの方を意識しているみたいだ。
「なんかすみません、これぐらいしか知らなくて……」
「そこまで絞れたら上々だ。感謝するぞ」
「いえいえ」
そう言って、副会長は颯爽と教室を出て……いかない。まだ言い残したことでもあるのかな。
「ところで友田。俺の名は浮かんでるか?」
「……」
「くっ、やっぱりか!? ……道理で目線が合わないと思ったぞ!」
残念、誤魔化しきれなかった。しかし、名前を覚えてないというのは失礼だ。いい加減思い出してあげたい。
「……長考してもいいですか?」
「休み時間はもう残り5分しか無いぞ!?」
制限時間も残りわずか。そういえば、3文字だったはず。なんとか、き、副会長まで出てきた。よし、あと少し……これだ。
「……唾液、副会長?」
「その間違い方は初めてだなぁ!? 佐伯だ佐伯!」
「あぁ、そうでしたそうでした」
いやあ惜しかった。頭を下げると俺のスマホに着信が来た。
「こらこらトモー、猿渡副会長の事忘れちゃダメっしょー」
いや誰だよ猿渡副会長。今俺の後ろでコッソリ聞いてたばっかりなのに忘れるってどういうこと。
「おっと、倉敷先輩を探しに行かねば! では!」
猿渡じゃない副会長は、爽やかな笑顔で教室を出ていった。
「あれ? トモー、あの人って会長推しじゃなかったっけー?」
「あ、確かに」
副会長はかつて、俺に会長の隣を争うと宣言していた。けれど今の副会長からはそんな話が一切出てこなかった。
もしかしたら、彼は本気なのかもしれない。一瞬だけライバルだったわけだし、応援してあげよう。
「でさ、猿渡副会長って誰?」
「それはこっちが聞きたいのよ」
その人はサワチーが生み出したんだから、最後まで責任持って育てて欲しい。
それにしても、副会長のあの存在感の薄さはハッキリいって異常だ。もしかしたら、俺と同じように望まない能力を与えられているのかもしれない。
神様は、一体何のために青野に役割を与えたのだろうか。その上、俺に変な能力まで植え付けてきたのだ。せめて一言ぐらいあってほしいのだけれど、会える兆しは一向に無い。
もし会えたら、文句を言ってやりたい。あとついでに、副会長の事もどうにかしてあげてほしい。
「友田、お嬢様からの伝言だ」
「おわっ!?」
神様について考えていたために、近くに来ていた倉敷さんに気付かなかった。
「人の顔を見て驚くとは、失礼なやつだな」
「なんというか、色々タイミングが凄くて……」
副会長が探しに行った直後に来たということは、2人ががっつりすれ違ったわけだ。……副会長、本当に不憫な人だ。
「それで、一ノ瀬さんはなんて?」
「次こそは、貴方の教室まで辿り着いてみせます、とのことだ……ぐうっ、お嬢様、何と健気な……」
倉敷さんはハンカチを取り出し、俺の前で男泣きを始めた。副会長、ちょっと考え直した方がいいと思います。この人絶対お嬢様にしか興味無いもの。
「でもさー、実は意外と相性良かったりすんじゃない?」
確かに人の相性はどうなるかわからない。かといっていらんフラグを立てて良いとも言ってない。2人はどうなっちゃうんだろう。
「あ、ついでに次会うときは名前で呼んでほしいらしいぞ」
「そっちのほうが断然重要な話じゃないですか!?」
副会長、やっぱり考え直した方がいいと思います。