ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
ヒロイン全員の好感度が0になったら、その場でバッドエンド。世界が暗転して、入学式まで時間が巻き戻り、青野のラブコメはまた最初からやり直しとなる。
……もしもこの世界がゲームだったらそうなるのかもしれないが、そんな事はまずありえない。誰かが結ばれても、当たって砕けた後でも、日常は寿命のある限り続いていくのだ。
「なーんだ、私も唐沢さんにざまぁされる瞬間見たかったなぁー」
「私も後学のために見ておきたかったわ……」
「何の学びになるんだよ……」
3時間目後の休み時間、所田さんと光井さんのコンビは今日も絶好調である。ついでに所田さんも好感度0になっているのだけれど、右下にちっちゃく「絶許」という文字があった。なんでヒロイン達より怨念強いんだよ。
「おい青野どうしたー? やけにテンション低いじゃねーか」
「あ、あぁ。ちょっとな……」
教室の隅に縮こまっているのは、彼女たちから好かれる可能性が無くなってしまった青野。あまりのショックで不登校……にはならず、登校は変わらずしていた。ただ、俺や優紀と話す事は全く無くなっていた。時々唐沢さんの方を未練がましく見るも、感情の無い笑みで返されて怯むだけで終わる。
「ならよー、今日もサボっちまおうぜー?」
「……だな!」
そのせいか青野は、不真面目な生徒になってしまった。まだ昼前にも関わらず、悪いクラスメイト達に同調して教室を出ていく。もう何度目かも数えていない。
「ほう……俺の前でサボり宣言とはいい度胸してるな?」
「げっ田畑だ!」
「逃げるぞ!」
「今日こそは逃さんぞお前らーっ!」
この光景も何度か見ているから、クラスでは最早ミニゲームのような扱いだった。なんだまたあいつらか、と生徒全員が軽く流している。
「……あいつ、何もしなくても自滅していきそうね」
「だよねー。気にするだけ無駄無駄ー」
後ろの2人は、一切同情する様子もない。かつて青野と繋がりがあったとは思えないほど、完璧に冷めていた。優紀もサワチーも、眉一つ動くことはなかった。
「ちょっと待った」
「愛香、急にどうしたの?」
手をビシッと掲げてきた所田さんが、何故かムスッとしている。今の会話に、何かおかしなところでもあったのだろうか。
「優紀ちゃんと唐沢さん、いつの間に仲良くなったの!? 私が先に唐沢さんの攻略を始めてたのにどうなってるの!」
「攻略て」
そういえば所田さん、サワチーのよそ行きモードを看破するため何度もアタックしてたんだった。優紀に先を越された、とショックを受けている。
「あー、なんと説明したら良いのやら……」
優紀が言葉に詰まっている。確かに、自分の知らない間に青野もとい神に選ばれていたヒロイン同士です、というのはおかしすぎる。
「ねえ待って。その関係、私のデータに無かったのだけれど……」
横で聞いていた光井さんも混乱中のようだ。急にデータキャラっぽくメガネを光らせてるけど、何もわかっていなさそうな冷や汗も額で光っている。
「お前何のデータならあるんだよー。昔からデータに無いことばっかりじゃーん」
「やかましいわよ誘田。……ちょっとデータ捨ててあいつぶち転がしてくるわね」
「待って待って」
遠くで聞いていた誘田君がヤジを飛ばすと、光井さんがいつの間にか持っていたノートと眼鏡を俺の机に置いて、あんまり無い力こぶを出しながら突進し始めた。所田さんの制止も虚しく、教室の真ん中でプロレスごっこが始まった。
「……あれ、止めた方がいいのかしら?」
「大丈夫だと思うよ。いつもの事だし、どっちもあんまり力無いし」
別のクラスにいる優紀は知らないけれど、あの2人は週一回はああなるので、基本放置で良い。それに擬音をつけるとしたら、ポコスカという弱っちい音だ。怪我の心配は皆無である。
「トモどーする? うちは光井さんが勝つ方に1000ジェムね」
「かどつよ通貨で賭けしないで」
クラスメイトで賭けをしてはいけません、道徳の授業に追加しておいてもらいたい。あとジェムって課金の通貨だから本当にダメである。
「ねえ、そのかどつよって何なの? トモも頻繁にやってるみたいだけど……」
「おっ、ユッキーも興味ある感じ? 後でやり方教えたげるよん」
「ゆ、ユッキー……?」
どうやらサワチーは彼女を自分の領域に入れることを認めたようだ。知り合い同士が仲良くなるのは、こちらも嬉しくなる。
「……あれ、この際かどつよで今後集まればいーんじゃない?」
「それいいわね! じゃあ、氷織会長と夏蓮さんも誘おっか!」
「ってそこも結構仲良くなってる!?」
場所も取らないし、それぞれの都合に会わせてあえるから、いい案かもしれない。こうして、ヒロインズの次の集合場所が決まったのだった。
ちなみにプロレスごっこの結果は、止めに入ったはずの所田さんが一人勝ちしていた。なんでだよ。