ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている   作:こなひー

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第60話 皆で始める

 いつの間にかかなり仲良くなっていたヒロイン4人。サワチーの提案で、皆でかどつよを始めようという流れになった。かどつよはアクション要素だけでなく、スローライフや交流の場としても使えるゲームだ。集まる場所に困っていた彼女たちにとっては良い手段だと思う。

 

「えっと……ここでのお名前ですね。何にしましょうか……」

「夏蓮って名前をもじるのが定番よねー」

「……私も何か考えておかないといけないわね」

「千紗の言ってたユッキー、案外良いかも……?」

 

 かどつよの経験があるのは俺とサワチーだけ。まずは3人のユーザー登録から始めている。のだけれど、一つ気になることがあった。

 

 

「……いや、俺の家に全員集まってたら意味無くない?」

 

 

 せっかくオンラインでできるというのに、何故俺の広くない部屋に集合しているのやら。俺の言葉には、優紀とサワチーが返してくる。

 

「だって、いきなり一から1人でってちょっと不安だし」

「そゆことー。慣れないうちは手取り足取りが必要っしょ」

 

 言われてみれば、俺も最初は青野に手伝ってもらったんだった。オンラインゲームって、誰かの助けがないと始めづらいよね。

 

 

 さて、皆で始めると言ったものの、この部屋には俺のパソコンしかない。ユーザー登録は1人ずつ行うことになった。

 

「えーっと、次に進むってどのボタン?」

「おぉふ、そっからか。Enterキーだよん」

「え、えんたー?」

 

 普段ゲームをしない優紀は、初めてのことばかりでかなり苦戦している様子。キーボードの配置に目を回している。……我が家のキッチンの配置だったら、目隠ししてても使いこなしそうだけど。

 

「そういえばこのゲームって、料理っていう機能あったわよね? どうやるのか教えて!」

「あー、一応あるにはあるけど……」

 

 サワチーの歯切れの悪い返事に、首をかしげる優紀。キッチンでのチュートリアルの案内に従って進めると、説明用に素材を渡された。

 

「この台にレシピと食材置くと……はい、終わりでーす」

「……こんなの料理じゃない!!」

 

 ですよねー。調理とか一切しないものね。残念ながら優紀の求めている料理の要素は、ここには存在しなかった。

 

 

 次は夏蓮。パソコンの操作は多少経験があるようで、チュートリアルは問題なく進んでいった。そして少し軽く歩き回らせた所で、問題は起こった。

 

「あの、ここに並んでいるジェム、というのを一通り買えばよろしいのでしょうか?」

「待って待って」

 

 夏蓮が開始直後から重課金ユーザーになろうとしていた。表示されている物を全部買ったら、一気に何万も吹っ飛んでしまう。お得セットとお得じゃないセットをセットで買おうとする人初めて見た。

 

「ですが、このワンちゃんを飼うためには所持金が足りないもので……」

「ゲーム内通貨で買えるやつだからさ、頑張ってためよーぜー」

 

 最初に装備じゃなくてペットを見ていた夏蓮に、サワチーはまーまー、と必要なものから揃えることを進める。

 

「なるほど、所持金が足りずに我慢……初めての体験ですわ!」

「わぁ凄いこと言ってる」

「一ノ瀬グループはんぱねぇー」

 

 改めてお嬢様って俺達とは違う世界の住人なんだな、と痛感した。

 

 

 そして最後に氷織先輩、なのだけれど妙に静かだ。あれ、もしかしてまた家のどこかに梟を仕込まれたんじゃ。そう思ったけれど彼女は部屋の隅でじっとスマホを見ていた。

 

 何だろうと思って画面を見ると、なんとかどつよの利用規約を9割読み終えたところだった。

 

「あの氷織先輩、そんながっつり利用規約読み込まなくていいんですよ?」

「え? ……けれど、何か漏れがあったら大変だわ」

「かいちょー真面目すぎるってー」

 

 先輩は利用規約を前に、生徒会長モードに入ってしまった。そんなに真面目に向き合ったかどつよユーザーは本当にまれだと思う。規約作った人良かったね。

 

 先輩が利用規約に同意したところで、キャラの操作から始めていく。

 

「このキャラ、初対面なのにやけに馴れ馴れしいわね……」

「チュートリアルのNPCですし……説明役なのでしょーがないかと」

「もう説明書で全て頭に入ってるのだけれど……スキップできないのかしら」

 

 氷織先輩の容赦ない切り捨てに、サワチーも苦笑いである。確かに、出会って数秒でこの世界のこと全部喋ってくる奴は、ちょっと距離感おかしいかもしれない。実際にあったら警戒しちゃいそう。

 

 

 色々あったけれど、3人ともかどつよの登録が完了した。サワチーの言った通り、一緒に集まって進めたのは正解だったと思う。

 

「そろそろご飯できるわよー」

「ナイスユッキー、補給助かるぅー」

 

 そして良きタイミングで優紀が夕飯を作ってくれた。5人分ということでとても張り切った結果、テーブルいっぱいにいくつもの大皿が並んでいた。まるで中華料理屋のような豪華な装いに、皆舌を巻いた。

 

「……料理の腕は、勝てそうにないわね」

「一ノ瀬家に料理人としていらしても、遜色無いかもしれません……」

「てゆーかさ、やっぱユッキー前からトモん家通ってるよね? 手際良すぎ」

「あ、バレた……?」

 

 そういえば今日の俺、何もしてないな。皆の行動力のありがたさに感謝しながら、腹いっぱい食べさせてもらったのだった。

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