ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている 作:こなひー
第61話 友人の前に神登場
目が覚めると、辺り一面が雲に包まれた謎の世界にいた。それはもう、一目で夢だとわかる景色だった。立ち上がった俺の目の前に現れたのは、これまた見るからに、人間離れした存在が立っていた。きっとあれが、先日青野が言っていた神様なのだろう。
ああ。ついに、この時が来たか。
「……ふむ、そなたが友田義人じゃな」
白い老人から放たれる威厳という名のオーラ、たった一言なのに腹の底に響いてくる声。対峙するにはあまりにも大きな存在すぎて息を飲む。人間ではないと言わんばかりの、金色の眼差しに、なんでもできてしまいそうな杖。髪や髭も人の白髪とはどこか違う白で輝いている。
いや、もっと早く来てほしかったけどね。具体的には、俺に能力がついた時辺りとか。
なんて本音を言い出せる雰囲気じゃないので、一つ頷いて次の言葉を座して待つ。何を、言うのだろうか。下手をすれば、次の言葉で神様が敵か味方かがわかってしまうかもしれない。そろそろ神様が口を開く、思わず全身がこわばった。
「……いやはや、どうしてこうなってしまったのか」
「いやこっちのセリフなんですけど」
相手が神様だと忘れて、普通にツッコんでしまった。さっきまでの厳かな雰囲気が一気に崩れさった瞬間だった。
神様がゴホン、と咳払いをしただけで空気が揺れる。相手が神様であると再認識させられつつ、話は戻る。
「——さて、友田義人よ。お主には色々と話さねばならん事がある」
ですよね、というか今までが説明不足すぎるのだから、早く話してほしい。まずどこから説明されるのだろう。
「まず、青野春吉を主人公と設定し、ラブコメを始めさせたのは儂じゃ」
「それは……青野から聞きました」
「そして、誰か1人を友人というアシストキャラに設定できるようにもした。ちゃんと数字は見えておるじゃろう?」
やはり、俺に能力をつけたのは神様だった。納得したのも束の間、俺の中には不満が渦巻き始めた。いきなりなんの説明もなく、しかも俺自身に役立つわけじゃない能力を与えられて、正直困ることしか無かったのだ。神様に不信感を抱いても仕方ないことだと思う。
そんな俺の気持ちを汲んだのか、神様はなんと頭を下げてきた。
「本来ならば、そなたに能力について説明しなければならなかったのだが……申し訳なかった」
神様は、俺の状況に対して悪いとは思ってくれていたようだ。会う前は不安でいっぱいだったけど、今は神様の印象は悪くない。
「……別にいいですよ。それより、ヒロイン全員の好感度が0になっちゃった事の方が気がかりなんですが」
俺が応えると、神様はどこかバツの悪い顔になった。神様にバツが悪いとかあるんだ。
「そこは、そなたは気にしなくても良い。儂の人選ミスだったからな」
「あ、そうなんですか……」
「……どちらかと言えば、そなたが全員から100に近いほど好かれていることの方が不思議なのだがな」
どうやら俺に責任はない、と思ってもらえているようだ。ここで罰とか与えられたらどうしようと思っていたけど、大丈夫そうだ。後半何か言っていた気がするけど、聞き逃してしまった。
そして話は本題へと移る。何故、神様は青野を選んだのか。
「青野春吉は、単純に条件が揃っていた。幼馴染にゲーム友達。そして学校にはお嬢様と生徒会長がいる。舞台が整っているだろう?」
「……そうですね」
恋愛ゲームの主人公には、既に仲の良いキャラや高嶺の花キャラがいる方が展開が起こりやすい。つまり、青野の人柄とかではなく、単純にプロフィールで選ばれたというわけだ。
「しかし、想定外の事態が起こったのだ」
「想定外?」
「そうだ」
神様は頷き、回想へ入った——。
『青野春吉。お主は恋愛シミュレーションの主人公に決まった。これからヒロインとの仲を深めていき——』
『よっしゃあ! 俺の最高の青春が神に約束されたぞ!』
『まあ待て、話を——』
『で、誰なんだ俺のヒロインたちは!? 全員一気に攻略してやるから待ってろよ!』
『だから話を聞けと言うのに……』
——回想終わり。
「青野春吉という男が、ああも話を聞かん人間だとは思わなかったわい」
「神ですらも手に負えなかったってこと……?」
なんと神様相手にも、青野はあの調子だったのである。俺なんか未だに萎縮しちゃっているというのに、度胸があるのか、てんで気にしていないだけなのか。
「そして、その後にもっと重要な話があったのだが……聞く前に夢から醒めていってしまってな」
「重要な話ですか?」
「あぁ……そもそも彼に対して、主人公として振る舞うことは期待していなかった」
主人公に選んでおきながら、主人公として動くことを期待していない。一体、どういうことなのだろうか。その答えは、俺の想像を遥かに超えるものだった。
「青野春吉は本来、別世界にいるプレイヤーという存在に操作されるはずの存在だったのだ」
「えっ、急にわからなくなってきた」
これは俺が思った以上に大きな話だ、ということだけは分かった。けれど、別世界やプレイヤーという言葉に、底しれない不安が押し寄せてきた。神からの説明は、まだ聞くべき重要な事がありそうだった。