承知しました!「─」を取り除き、各シーンの繋ぎ目に自然な一文を補いながら1話にまとめます。
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**14話**
次の朝は、あっという間にやってきた。
眠ったのかどうかもわからない。ただ、目を閉じていた時間が終わり、薄い光がカーテンの隙間から差し込んでいる。それだけで「朝」だと告げられる。
依頼に行く気分ではなかった。
ずっとこうしていたい。
動きたくない。
世界が私を置いて進むなら、せめてこの部屋の中だけは止まっていてほしい。
枕に顔を押しつけると、かすかに自分の髪の匂いがした。昨日よりも濃い。寝返りを打つたびに、香りが布に移っていったのだろう。
目を閉じたまま、布団の上で横になる。
落ち着く気配はない。
むしろ、静かだからこそ、余計に考えてしまう。
——どうして。
その一言が、頭の中を巡る。
兄様なら、どう答えるの。
強い背中。迷いのない言葉。
きっと「次に活かせばいい」とか、「必要なものが足りなかっただけだ」とか、そういうふうに整理してくれるのだろう。
姉様は違う。
小さい頃に、
「わかるものから学べばいい」
そう言っていた。
だから、私は魔法があればいい。
悪い魔物を倒せる力があれば。
私は、その通りだと思っていた。
筆記試験の問題を思い浮かべる。
パーティーと魔物の対峙したとき、対処法。
ちゃんと答えた。迷いもなかった。
そのあと、ミアレがぽつりとこぼした言葉。
「難しかった」
あの時の彼女の顔。
少しだけ眉を寄せて、それでもどこか納得しているような横顔。
私は難しいなんて思わなかった。
モンスターを倒して、気をつけることを書くだけ。
ちゃんと問題の答えも出していた。
それなのに。
結果は、Eランクのまま。
布団の中で、指先をぎゅっと握る。
きっと、誰も私のことをわかってくれない。
そんな考えが、胸の奥に沈む。
強いのに。
魔物を倒せるのに。
なのに、どうして評価されないのか。
ただ——泣かなかった。
泣いてしまったら、本当に自分に負けた気がする。
悔しいと認めることが、弱さを認めることのようで。
それだけは、したくなかった。
音のない部屋。
まぶたの裏は暗く、考えごとだけが渦を巻く。
シーツだけが、私を優しく包んでいる。
その静寂を、乱暴に叩き割る音が響いた。
ドンッ。
心臓が跳ねる。
体が反射的に起き上がる。視線は扉へ。
誰だろう。
宿のおばさんは、あんな叩き方をしない。もっと遠慮がちで、二回ほど控えめにノックする。
じゃあ、ミアレ?
姉様?
わからない。
でも、もしミアレだったら。
顔を合わせる勇気がない。
あの優しい目で見られたら、余計に惨めになる気がする。
それなのに、半分は——
そうであってほしい、と思っている自分もいる。
矛盾に気づいて、視線を落とす。
ベッドの縁に座り、そっと床に足をつける。
体重を乗せると、床板がわずかに軋んだ。
ドンッ。
また一つ。
そして間を置かず、両手で叩くような連打。
バン、バン、バンッ。
流石に煩い。
眉をひそめながら、忍び足で扉へ近づく。
杖は持たない。ただ、息を殺す。
扉の前に立ち、ノブを握る手が震える。
深呼吸を一つ。
ゆっくりと、ギィ、と音を立てて扉を開けた。
そこに立っていたのは、知らない少女だった。
くすんだ金髪。少し跳ねた前髪。
くたびれた袖の服に、レザーの胸当て。
首から下げた真新しい冒険者証が、朝の光を受けて小さく光る。
年は、私とそう変わらない。
でも、その目は。
「出てきた」
真っ直ぐだった。
まるで迷いを知らないみたいに、私を見ている。
その瞳に映る自分の顔は、きっとひどい顔をしているのだろう。
「ねぇ、おばさんから聞いたけど、あなた冒険者なんでしょ!」
明るい声。
間髪入れず、続ける。
「一緒に行こうよ!」
——一緒に?
思考が一瞬止まる。
部屋の前に立って、いきなりそんなことを言うなんて。
戸惑いと、苛立ちと、ほんの少しの驚き。
彼女は私の事情を知らない。
Eランクのままだということも、昨日の試験のことも。
それなのに。
まるで私が当然、外へ出る前提で話している。
胸の奥が、わずかに揺れた。
動きたくないと思っていたはずなのに。
布団の中で、世界から隠れていたかったはずなのに。
目の前の少女の真っ直ぐな瞳が、それを許さない。
私は、何かを言おうとして、口を開く。
声が出るまで、ほんの少し時間がかかった。
手を引かれ、そのまま一歩踏み出す。
部屋の敷居を越えた、それだけのこと。
世界が変わるわけじゃない。昨日の試験結果が覆るわけでも、胸の奥に残る引っかかりが消えるわけでもない。
それでも。
この一歩は、ようやく踏み出せた一歩のような気がした。
「いつまでも黙ってないで話してよ」
振り返った少女が、明るく言う。
「私ね、エルネ。昨日から冒険者になって、ここに泊まることにしたの。見て、これ。冒険者証!」
誇らしげに、首から下げた冒険者証を指でつまみ、私の目の前に掲げる。まだ傷一つないその表面が、朝の光を受けてかすかに光った。
ニッコリと歯を見せる笑顔。
ズキン、と胸が痛む。
少し前——いや、昨日までの私が、そこにいる。
期待と、希望と、自分はきっとやれるという疑いのない顔。
ああ、この子は知らない。
私が今、どんな気持ちでいるのか。
胸の奥に沈んだ重さも、Eランクの文字を見たときの息苦しさも。
でも、それをわざわざ口に出すことでもない。
「私は……リュシア、です」
絞り出すような声。自分でも驚くほど覇気がない。
「ねぇ、冒険者ランクは?」
無邪気な問い。
その一言に、喉が詰まる。
呼吸が、一瞬止まる。
目を逸らし、唇を開く。
「E、ランク」
短い言葉なのに、やけに重かった。
「へぇ〜! 試験にいなかったから? じゃあ先輩だ!」
エルネはぱっと顔を輝かせる。
「リュシア先輩って呼んでいいです?」
先輩?
私が?
昨日、自分の未熟さを突きつけられたばかりの私が。
こそばゆいような、居心地の悪いような感覚が胸をかすめる。
「いい、ですけど……」
「うん、決まり!」
その勢いに押されるように、私たちは通路を抜け、宿のカウンターへ出た。
「おはよう」
宿のおばさんが、気さくに声をかけてくる。
「おはようございます」
返事は、思ったより普通に出た。
部屋の外に出てしまえば、意外と呼吸はできる。気持ちが晴れたわけじゃない。ただ、誰かと一緒にいると、思考が一点に沈まずに済む。
「朝ごはんにするかい? ちゃんと宿泊代金を払ってる子には出すようにしてるんだからね」
おばさんは、テーブルに突っ伏して眠る、いつもの酔っぱらいのおじさんを横目で見る。どうやらまだ夢の中らしい。
「やったー。食べまーす!」
エルネが元気よく返事をする。
ほどなくして、テーブルに並んだのは、いつもの朝食。
黒パン。
塩辛いベーコンと目玉焼き。
豆入りのスープ。
特別でもなんでもない、見慣れた光景。
「黒パン……」
隣から、少し落胆した声が漏れる。
その気持ちはわかる。黒パンは固くて、味気ない。焼きたてでもなければ、特別美味しいものでもない。
けれど私は、昨日の昼にジュースを飲んでから何も口にしていなかった。
手が、自然と動く。
黒パンはスープに浸して、少し柔らかくしてから口へ運ぶ。
目玉焼きは、塩気の強いベーコンと一緒に食べると、ちょうどいい。
黙って食べる私を横目に、エルネも慌てたように食べ始める。
最初の一口は不満そうだったけれど、空腹には勝てないらしい。次第にペースが上がっていく。
温かいスープが胃に落ちる。
それだけで、胸の奥の固まりが少し緩む気がした。
「おばさん。ありがとうございます。私、この子と一緒にギルドに行ってきます」
言葉が、自然と出た。
自分でも少し驚く。
お腹が満たされると、心にも余裕が生まれるらしい。
視界が広がる。周囲の音が戻る。
エルネはその言葉を聞いて、さらに急いで食べ終える。
「私、準備してきます! 待っててください!」
ぱたぱたと駆け足で去っていく。
その背中を見送りながら、私は静かに息を吐いた。
少しだけ、笑いそうになる。
あんなふうに、何も迷わず前を向けるのは、どんな気持ちなのだろう。
私も、昨日までは——。
考えかけて、やめる。
私は立ち上がり、部屋へ戻る。
レザー装備を身につけ、ポーチの中身を確認する。杖を手に取ると、冷たい感触が掌に馴染む。
軽く深呼吸。
部屋を出る。
カウンター席で待っていたエルネが、ぱっと顔を上げる。
「それじゃあ、行こ! 私、まだ全然わからないことが多いから、一人で行くには心細かったの」
その言葉に、胸の奥が小さく揺れる。
心細いのは、私のほうかもしれない。
「ほら、黒パン、持っておいき」
おばさんが、布に包んだ黒パンを差し出す。
「ありがとうございます」
ポーチにしまい、エルネの隣へ並ぶ。
宿の扉を押し開ける。
朝の光が、まぶしい。
昨日と同じはずの街並み。
同じ石畳。
同じ空。
何も変わっていない。
それでも。
隣にいるこの子の足取りは軽く、私の歩幅を引き上げる。
世界は変わらない。
でも、歩く方向は、自分で決められる。
Eランクのままでも。
迷いを抱えたままでも。
私は、歩いている。
その事実だけが、今は少しだけ救いだった。
エルネは軽やかな足取りで石畳を踏みしめ、朝の街に乾いたリズムを刻んでいた。
その背を、私は少し遅れて追う。
朝焼けに染まる街並みは、見慣れたはずなのにどこか遠い。露店はまだ布をかけられ、通りを行き交う人影もまばらだ。冷たい空気が肺に入り、頭をわずかに冴えさせる。
視線でエルネを追っていたが、ふと彼女は道を外れた。
……おかしい。そっちにギルドはない。
胸の奥に小さな違和感が走り、私は駆け足になる。石畳を踏む音が、等間隔に響いた。
追いついた先で、エルネは小さな木の椅子に腰掛け、こちらに手を振っていた。
「リュシア先輩、ほらここ! 冒険者に必要なもの、ここで売ってるんだって。雑貨屋さん!」
人差し指で示された先には、古びた看板を掲げた小さな店。外壁は色あせ、窓も曇っていて、目立たない。魔道具屋と大差ない、地味な店構えだった。
冒険者用の雑貨屋。
ポーション、保存食、罠解除用の道具、ロープ、携帯用ランタン——。
一瞬、胸が小さく高鳴る。冒険者として必要なものが揃っている場所。けれど同時に、現実が頭をもたげる。
私は今、杖のためにお金を貯めている。余計な出費はできない。
店内を覗くと、薄暗く静まり返っている。
「朝早くて営業してないみたい」
エルネは少し残念そうに言った。
「帰りに、また寄ってみる?」
私がそう尋ねると、彼女はすぐに「うん」と頷く。
ギルドにも併設の店はある。でも、私はほとんど立ち寄らない。見れば欲しくなる。今は我慢だ。
「ギルドに行こう」
開かない扉から視線を外し、前を向く。
歩きながら、私は問いかけた。
「ギルドの雑貨屋は?」
エルネは首を振る。
「値段比べたけど、高いもん」
その一言で、なんとなく分かる。彼女はただ明るいだけじゃない。ちゃんと見て、考えている。
ギルドが近づくにつれ、胸の奥が重くなる。
見慣れた道なのに、足取りが鈍る。昨日、逃げるように駆けた道。その石畳が、今日は妙に硬い。
息をゆっくり吐く。
足取りが鈍る。
歩幅が狭くなる。
息が浅い。
「ねぇ、ほら、ギルドだよ!」
エルネは一人で駆け出し、扉を押しのけて中へ入っていった。
私は取り残されたように立ち尽くす。
昨日、逃げた場所。
一体、何が怖い?
ミアレに会うのが?
それとも、Eランクの自分をまた思い知らされるのが?
——認められなかった自分を見るのが、怖いのか。
その考えに触れた瞬間、胸がひりつく。
そのとき、ギィ、と音を立てて扉が開き、二人の男が出てきた。驚いた拍子に身体が硬直する。
ぶつかってもいないのに、足の力が抜けた。
視界が揺れ、尻もちをつく。
「わりぃ、ぶつかったか?」
差し出された手を取る。
「すみません」
男たちは笑いながら去っていく。
「ぶつかった感覚すらねぇのお前おかしいだろ? ははは」
——誰も、私を見ていない。
怖がっているのは、私だけだ。
その背中を見送り、私は扉に向き直った。
息が止まる。
周囲の音が、遠のく。
視界にあるのは、ただその扉だけ。
手を伸ばす。
重く感じる取っ手を押し、ゆっくりと中へ踏み込む。
変わらない光景。
受付のお姉さん。掲示板の前に立つ冒険者。汗と酒の混ざった匂い。
ミアレはいない。
当然だ。家の用事があると言っていた。
そこでようやく、肺に溜め込んでいた息を吐き出した。
肩の力が抜ける。
気を張っていたのが、馬鹿みたいだ。
視線を巡らせると、エルネが掲示板の前で真剣な顔をして依頼を眺めている。
きっと、どれがいいのか分からないのだ。
私はその隣に立つ。
「ねぇ、先輩、簡単なやつからしましょ」
掲示板には、見慣れた依頼が並んでいた。
ホーンラビットの討伐。
薬草採取。
ベリーナッツの収集。
変わらない、Eランクの並び。
私はベリーナッツの依頼札を手に取る。森の浅い場所で採れる、安全な依頼。
それを見て、エルネも薬草採取を選ぶ。
「これにする〜」
依頼書を掲げ、内容を確認しながら、少し唇を尖らせる。
「ん〜……ねぇ、全部、報酬少ないね」
「Eランクの依頼だから、仕方ないよ」
自分で言いながら、胸が少しだけ痛む
私は依頼書を握り直す。
隣に、エルネがいる。
まだ不安は消えない。Eランクのまま。評価も変わらない。
でも、足は止まっていない。
受付へ向かう。
一歩一歩。
昨日は逃げた場所へ、今日は歩いて行く。
それだけで、今は十分だった。
依頼書に受領印が押される乾いた音が、やけに大きく聞こえた。
ベリーナッツの収集と、薬草集め。
どちらもEランクらしい、地味で確実な依頼。
紙を受け取りながら、私はもう一度内容を目でなぞる。
薬草の特徴。葉の形。茎の色。採取方法。
——根は残す。乱獲はしないようにと。
ミアレに教わったのは、それくらいしか覚えていない。葉の縁が波打つとか、匂いが違うとか、説明は受けたはずなのに、肝心なところが曖昧だ。
視線を上げた瞬間、ぐい、と顔のすぐ前に影が差した。
「先輩、さっきから顔色悪いよ?」
エルネが覗き込むように距離を詰めている。
どきり、と胸が跳ねた。
手のひらにじわりと汗が滲む。乾いた喉を、唾を飲み込んで誤魔化す。
「……大丈夫です。外、出れば平気なので」
「ほんと?」
疑うような、でも責めるわけではない声音。
返事を待つより早く、エルネはくるりと踵を返して扉へ駆け出した。
「はやくはやく〜」
その背中を追いかけた瞬間、ギルドの扉が内側から開く。
黒い影。
エルネが小さな声を上げ、どん、と鈍い音とともに尻もちをついた。
一瞬、空気が張り詰める。
罵声は飛んでこない。
見上げると、そこに立っていたのは見覚えのある男だった。
Dランクの冒険者、ガルド。
「あ……ごめんなさい」
エルネは慌てて謝る。
ガルドは無言で手を差し出し、引き起こした。
「見ない顔だな」
低い声。
一瞬だけ私と目が合う。すぐに逸らされ、エルネへ落ちる視線。
その大きな手が、ぽん、とエルネの頭に乗った。軽く押され、彼女は半歩後ろへ下がる。
「前は見ろ」
それだけ言って、ガルドはいつもの隅の椅子へと歩いていく。
怒っているわけでもない。優しいわけでもない。
ただ、それだけ。
私は立ち尽くすエルネの背をそっと押した。
「行こ、エルネさん」
扉を抜けると、朝の光が差し込んだ。
石畳を二人分の足音が刻む。
「ねぇ、見てた? 私ちゃんと謝ったのに、あのおじさん素っ気なくて感じ悪かった」
少し頬を膨らませるエルネ。
私は曖昧に笑う。
ガルドと深く話したことはない。でも、一度だけ助けられたことがある。危うく囲まれかけたとき、魔物を叩き伏せてくれた曖昧な記憶。
そのことを、今ここで言う必要はない。
「ねぇ、先輩、あの人知ってるの?」
「少しだけ」
息を吸って、吐く。
「Dランクのガルドさんだって。冒険者の中では有名な人みたいです」
「Dランク? ふぅん」
エルネはすぐに表情を切り替える。
「じゃあ、私もすぐDランクになって、我が物顔でギルドにいれるように頑張ろ。冴えないおじさんみたいじゃなくて、キラキラの冒険者に!」
無邪気な宣言。
その足取りは軽く、私との足音のリズムがズレた気がした。
Dランク。
その響きが胸に刺さる。
Dランクにすらなれなかった私。
筆記で落ちた。実技はなく、紙の上の問題で。
強ければいい。
勝てばいい。
成果を出して、誰かが「強い」と言ってくれた。
そう思っていた。
でも、ギルドは違う。
何を評価したいのか、まだ分からない。
——でも、また受ければいい。
そう思う。
隣を見る。
エルネは未来しか見ていない。
次の昇格試験。
もし私がまた落ちたら。
そのとき、エルネはDランクになっているかもしれない。
じゃあ、私は?
視線が自然と地面へ落ちる。
「リュシア先輩」
ぐい、と手が引かれる。
「下を見ないで前を見ましょう!」
反射的に顔を上げる。
目の前には城門。
その向こう、陽光に照らされた街道が続いている。
風が吹き抜ける。
外の空気は、ギルドの中よりずっと軽い。
前を見ろ。
さっきのガルドの言葉が、遅れて胸に落ちてくる。
前を見ないでぶつかったのはエルネ。
でも、本当に前を見ていなかったのは、私の方。
ランク。
評価。
過去。
全部、足元ばかり。
エルネが笑う。
「行きましょ、先輩!」
引かれるまま、一歩踏み出す。
城門を抜けると、光が視界いっぱいに広がった。
何も変わっていない。
それでも。
私は顔を上げたまま、陽の差す先へと駆け出した。
前を向く理由は、まだはっきりしない。
けれど隣にいる誰かが、そう言ってくれるなら。
それだけで、足は止まらなかった。