風の氏族の末娘は、冒険者を知らない   作:ほてぽて

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19話前編 掴むもの

 

 

 

 暗い大空洞から外へ出た瞬間、世界はまるで何事もなかったかのように音を取り戻した。

 

 風が木々を揺らし、葉が擦れ合う柔らかな音が耳に届く。どこか遠くで鳥が鳴いている。その一つ一つが、さっきまでいた場所の静寂と断絶しているようで、妙に現実味がなかった。

 

 差し込む陽の光は強く、思わず手をかざす。

 

 ……眩しい。

 

 目を細めながら、私は小さく息を吐いた。

 

 結局、スライムの核は三つだけだった。

 依頼に必要なのは七つ。

 残りは、四つ。

 

 革袋の重みを確かめながら、足りない分の現実を頭の中で反芻する。簡単な計算のはずなのに、それは妙に重く感じられた。

 

 私はランタンの火を消す。

 エルネも松明を地面に叩きつけるように振り回す。火の粉が散り、やがて土を被せられて完全に消えた。

 

 火が消える音を背に、私は口を開く。

 

「残りはあと四つなので、前に薬草を集めた群生地周辺にスライムがいないか探そう」

 

 洞窟以外でスライムがいそうな場所。

 

 湿気。

 陰。

 腐りかけたものがあるところ。

 思い当たる場所は、そう多くない。

 

「ジメジメしたところにいるもんね」

 

 エルネは軽く頷き、自然と私の隣に並んだ。

 

 群生地までは、そう遠くない。

 

 少し歩けばすぐに辿り着く距離だ。洞窟から出てきたスライムが、周辺に留まっていても不思議ではない。

 

 そう考えながら、二人で森の中へと足を進めた。

 

 木陰の下、柔らかな土を踏みしめる。

 

 やがて、湿気を帯びた匂いが鼻に届く。

 薬草の群生地だ。

 洞窟の中ほどではないにせよ、空気にはわずかな粘り気がある。

 

 視線を落とすと、以前刈り取った跡がはっきりと残っている。

 

 けれど、その切り口のすぐ下から、新しい芽が顔を出していた。

 

 ……再生している。

 

 それが当然のようにそこにあることに、少しだけ違和感を覚えた、その時だった。

 

「あ、先輩、あれ!」

 

 エルネの声に、思考を切り替える。

 

 指差す先へ視線を移すと、薬草が不自然に揺れていた。

 

 

 そこに、小さな影。

 

 白く、柔らかな毛並み。

 

 細長く突き出た二つの耳。

 

 ――ホーンラビット。

 間違いない。

 

 こちらに気づいていないのか、夢中で薬草の葉を食んでいる。

 

「ウサギさん、怪我してるのかな? いっぱい食べて元気になってね」

 

 エルネが小さく手を振る。

 

 その気配に気づいたのか、ホーンラビットは顔を上げ、こちらを見た。

 

 一瞬の静止。

 

 けれど、次の動きは奇妙だった。

 

 跳ねることもなく、ただ向きを変え、ゆっくりと歩くように木陰の奥へと消えていく。

 

 ――逃げない。

 いや、逃げているが、あまりにも遅い。

 

 いつもなら白い残像のように駆けていくはずなのに。

 

 違和感はあった。

 けれど今は、スライムの核集めだ。

 

 意識を切り替え、周囲へと視線を巡らせる。

 

 薬草の揺れ。

 木の幹。

 湿った痕跡。

 

 自然と、エルネと互いの姿が見える位置を保ちながら、手分けして探し始めた。

 

 群生地の奥へ、さらにその奥へ。

 

「せんばーい! いましたー?」

 

「見つかりませーん」

 

 軽い声のやり取りが、妙に空しく響く。

 

 緑の影は見えない。

 粘ついた痕もない。

 

 スライムの気配は、どこにも感じられなかった。

 

 ……難航する。

 

 そう思いながら、私はゆっくりと後ろへ下がるように視線を動かす。

 

 上を見て、周囲を見て、そして足元へ。

 

 その瞬間。

 ゴリッ、と。

 靴裏に、硬い感触が走った。

 

 反射的に足を引く。

 もう一歩下がり、足元を見る。

 

 そこにあったのは――

 三つの、硬い塊。

 

 屈み込み、指で拾い上げる。

 石のようでいて、わずかに違う光沢。

 

 手の中で転がし、確信する。

 ――魔石。

 それもスライムの核に、よく似ている。

 

「エルネさーん、来てください!」

 

「見つかったー?」

 

 軽やかな足音が近づき、隣に並ぶ。

 エルネは地面を覗き込み、首を傾げた。

 

「先輩? スライムじゃないの?」

 

「これを見てください。理由はわからないんですけど、魔石が落ちてるんです」

 

「わ〜! すご〜い! 運がいいですね私たち! 誰かの落とし物みたい」

 

 屈み込み、エルネも二つを拾い上げる。

 

 無邪気な声。

 

 けれど、その言葉に引っかかりが残る。

 

 ――落とし物。

 人間なら、拾う。

 では、スライムなら?

 あるいは、あのトカゲ。

 

 ……食べる。

 だとすれば。

 

 これは、排泄物か?

 

 眉間に皺が寄る。

 

 だが、それならおかしい。

 魔石だけが、こうして綺麗に残る理由がない。

 消化されたものと混ざっていないと、筋が通らない。

 

 思考を整理するように、私は革袋を取り出し、中の核と見比べる。

 

 色はわずかにくすんでいる。

 だが、大きさも形も、ほとんど同じ。

 

 ――スライムの核。

 

「先輩! これスライムから取ったものと大きさが似てますね?」

 

「私もそう思います」

 

 即答した。

 

 エルネはぱっと顔を明るくする。

 

「これも一緒に納品したらいいですよね? 倒さなくったって同じもの! ね! 先輩!」

 

 ……言いたいことは、わかる。

 

 難航していたところに現れた、都合のいい解答。

 

 それを掴みたくなる気持ちも。

 

 私は一つを革袋に入れる。

 

 続いて、エルネも二つを落とした。

 

 これで――六つ。

 あと、一つ。

 

 ほんの少しだけ、届かない。

 

 ふと、視線を上げる。

 群生地の奥。

 

 さらにその先、木々の隙間の向こうに、光を鈍く反射する水面が見えた。

 

 水草が揺れ、地面は沈み込むように暗い。

 

 ――沼。

 あるいは、沼沢地。

 

 どう考えてもスライムが、最も好む場所。

 私は無意識に、息を浅くした。

 

 あと一つ。

 

 それを探しに行く先としてはあまりにも、出来すぎている場所だった。

 

 それでも、足は自然と水辺へ向いていた。

 

 足を踏み入れる。

 

 境界のようなものがあるかと思っていたが、空気が変わることもなく、ただ草の感触が靴裏に伝わるだけだった。拍子抜けするほどに、何も起こらない。

 

 そのまま水辺の近くまで歩み寄る。

 

 屈み込み、水面を覗き込んだ。

 

 ……綺麗だ。

 

 濁りはほとんどなく、底まで見える。光が揺れ、水の中で反射しながらゆらゆらと歪んでいる。浅い。泥の沈殿がうっすらと積もり、その上に透明な水が重なっているだけだ。

 

 水の中に魚や虫がいない。

 

 危険な気配は、感じない。

 

「わっ!」

 

 背後からの声に、身体が跳ねた。

 

 反射的に肩が上がり、息が詰まる。

 

「もぅ!」

 

 振り返ると、エルネが笑いながら手を引っ込めていた。

 

「えへへ、ごめんなさい。先輩、ずっと水面見てると落ちちゃいますよ」

 

 ……確かに。

 

 もう少しでバランスを崩していたかもしれない。

 

 小さく息を吐き、慎重に一歩だけ後ろへ下がる。

 

 改めて周囲を見るが、魔物の気配はない。水辺特有の湿気はあるが、それ以上の違和感は感じられなかった。

 

 エルネの方へ視線を向けると、彼女は上を見上げている。木の幹や枝の隙間を探るように、スライムの姿を念入りに探している。

 

 私は軽くため息をついた。

 

 水辺をなぞるように歩く。

 

 そのとき、視界の端で何かが光った。

 

 キラリ、と反射した。

 足を止め、もう一度同じ場所を見る。

 

 水の中。

 

 底の泥の上に、何かが沈んでいる。

 

 光を拾う、硬質なもの。

 

 ……魔石だ。

 

 スライムの核。

 

 しかも一つではない。まとまって、いくつか沈んでいる。

 

 五つほど。

 

 胸の内で計算が弾ける。

 

 これを取れば、納品数は揃う。それどころか、余分が出る。

 

 余分はそのまま報酬になる。

 ……取りに行くべきだ。

 

 だが、水の中。

 

「エルネさん、水の中に魔石が落ちてます!」

 

「ホント〜!?」

 

 声を弾ませて駆け寄ってくる。

 

 水魔法があれば、水流で引き寄せられるだろうか。土魔法なら底を持ち上げて道を作れるかもしれない。

 

 風では、届かない。

 

 できることの差が、妙に現実として胸に残る。

 

「先輩どこどこ。どこですか?」

 

 指を差す。

 

「あそこ、水の中に落ちてる」

 

「わ、ほんと、五個くらい落ちてる」

 

 無防備に身を乗り出すエルネを横目で見る。

 

 その姿に、さっきの仕返しを思いついた。

 

 ほんの、軽い悪戯。

 手が、動く。

 

「わっ!」

 

 両手で肩を掴み、引く。

 

「ヒィャアッッ!!」

 

 大きな悲鳴とともに体が跳ねる。

 

 そのまま後ろへ引き、二人して地面に転がった。

 

「ちょっとぉ、もぉお、びっくりしたぁーー!」

 

 エルネが文句を言う。

 

 その顔が、あまりにも大げさで。

 思わず、笑いが漏れた。

 

 エルネもつられて笑う。

 何が面白いのか分からないまま、二人でしばらく笑い続けた。

 

 仰向けのまま、木陰越しの空を見る。

 葉の隙間からこぼれる光が、ゆらゆらと揺れていた。

 

 ……こんなことをしていて、いいのだろうか。

 そんな疑問が浮かぶ。

 

 けれど、それを咎める者はいない。

 誰もいない。

 

 だから――許されているような気がした。

 

 体を起こす。

 

 靴を脱ぎ、ズボンの裾を引き上げる。杖と手袋、ポーチを横に置く。

 

 やることは単純だ。

 

 入って、取って、戻る。それだけ。

 

 それで終わる。

 

 エルネの視線を感じる。

 

「先輩の足って綺麗」

 

「?」

 

 意味が分からず、首を傾げる。

 

「ありがとう?」と、とりあえず返す。

 

 エルネは満足そうに頷いた。

 

「私が取りに行ってきますね」

 

「あ、はい。お願いします」

 

 水辺へ足を向ける。

 

 家にいた頃、水浴びで足を浸けた感触を思い出す。

 

 

 つま先が水に触れると、ひやりと冷たい。

 足首まで沈むと、一気に熱が奪われる感覚が広がった。

 

 

 そのまま、ゆっくりと足を進める。

 

 水底は柔らかく、沈殿物が足を包み込む。足首まで沈み込むような感触。

 

 もう片方の足も入れる。

 

 一歩。

 また一歩。

 進むたびに泥が舞い、水が濁る。

 だが気にしない。

 

 魔石の位置は、もう分かっている。

 

 やがて、すぐ目の前。

 

「やりましたね! 先輩!」

 岸からエルネの声が飛ぶ。

 振り返ると、笑顔で手を振っていた。

 

 その姿に、ほんの少しだけ安心する。

 

 視線を戻す。

 腰を曲げ、左腕の袖を捲る。

 

 

 腕を伸ばす。

 指先が水に触れる。

 

 冷たい。

 

 そのまま、手を沈める。

 水が腕を包み込み、感覚が鈍る。

 

 

 底へ。

 泥の中へ。

 

 

 指が何かに触れる。

 

 硬い。

 

 それを掴み、握りしめる。

 

 ――その瞬間だった。

 

 

 

 左脇。

 

 すぐ隣で。

 

 バンッ!!

 

 水が弾けた。

 

 

 爆発したような衝撃音。

 

 

 認識するより早く、激痛が走る。

 

 

 左腕。

 

 

 全体を、何かに掴まれた。

 

 

 潰されるような圧力。

 

 視界が揺れる。

 何も見えない。

 判断が追いつかない。

 身体が引かれる。

 

 水の中へ。

 

 足が滑り、体勢が崩れる。

 

 そのまま――水の中へ叩き込まれた。

 

 冷たい。

 重い。

 暗い。

 痛い。

 

 思考が、痛みに塗り潰される。

 

 

 何が起きたのか、分からない。

 分からないまま、

 ただ引きずり込まれる。

 

 

 遠くで、声がした気がした。

 

 

 ――先輩!

 

 

 エルネの声。

 

 それだけが、かろうじて届いた。

 

 正体のわからない何かは、私の左腕を乱暴に掴んだまま、振り回すようにして奥へと引きずり込んだ。

 

 抵抗しようと力を込めた瞬間、骨ごと握り潰されるような圧迫が走る。

 

 

 ――まずい。

 

 

 直感的に理解して、力を抜く。

 

 だがそれでも、掴まれているだけで腕が軋む。引き千切られそうな痛みに、声が喉で潰れた。

 

「……っ、ぅぐ……」

 

 まともに声にもならない。

 

 次の瞬間、顔に冷たい感触が触れる。

 

 

 水。

 

 

 理解するよりも早く、顔がその中へ沈んだ。

 

 

 息を溜める暇もない。

 

 反射的に目を閉じる。水が入り込むのを防ごうとするが、そんな余裕はない。腕の痛みが神経を焼くように強くなり、身体は落ち着くどころか、勝手に呼吸を求めて動こうとする。

 

 

 息が、持たない。

 吐き続けていた空気が尽きていく。

 

 

 

 ――浅瀬。

 

 そうだ、ここは浅いはずだ。

 

 立てばいい。体勢を戻せば、すぐに息ができる。

 そう思って、膝を水底へ引っかけるように動かす。

 

 

 だが、踏めない。

 

 

 底は柔らかく、泥と沈殿物が足を飲み込む。力を入れるほどに、滑って沈み、引きずられる。

 

 

 右手で何かを掴もうとする。

 

 しかし、何もない。

 

 

 支えがない。

 

 引き止めるものがない。

 

 ただ、引かれていく。

 

 

 息が、もう。

 

 思わず顔を上げた。

 水面に触れる。

 

 

 空気に触れた感覚。

 反射的に息を吸う。

 

 吸って、吐く。

 ――なのに。

 おかしい。

 

 

 息をしているのに、息をしている感覚がない。

 胸が満たされない。

 

 呼吸が浅い。

 

 小刻みにしか動かない。

 

 空気が、足りない。

 声を出す余裕もなかった。

 

 

 視線を、左腕へ。

 そこに――黒い影があった。

 

 

 二の腕から前腕にかけて、黒いものに呑み込まれている。

 

 目を凝らす。

 

 

 大きく裂けた口。

 ぬめりを帯びた黒い体表。

 まだらな模様。

 離れた位置にある、小さな目。

 

 ……見覚えがある。

 

 ついさっき、見た。

 

 洞窟の中で。

 

 

 

 ――トカゲ。

 

 

 

 その魔物が、もう一度、私の腕に噛みついたまま大きく揺さぶる。

 

 引きずられ、体勢が崩れる。

 

 

 再び、顔が水の中へ落ちた。

 視界が暗くなる。

 

 

 右手で引き剥がそうとする。

 

 押す。

 

 叩く。

 

 

 だが、体表はぬかるみのように滑り、力が逃げる。

 

 一度。

 二度。

 何度やっても、同じ。

 無駄だと分かっても、やめられない。

 

 

 痛い。

 

 苦しい。

 

 息ができない。

 

 溺れる。

 

 思考が崩れる。

 

 

 

 ――姉さま。

 

 

 

 ふと、浮かぶ。

 

 揺さぶられる勢いの中で、必死に顔を上げる。

 

 水面に出る。

 

 ……はずだった。

 

 

 だが。

 空気に触れている感覚が、ない。

 

 その瞬間。

 

 水を、飲み込んだ。

 

 喉に流れ込む。

 

 焼けるような異物感。

 

 むせ返る。

 

 咳が出る。

 だが、息がない。

 

 咳も、呼吸も、どちらもできない。

 

 

 苦しさだけが増えていく。

 

 そのとき。

 右手が強く引かれた。

 

 

 引き上げられ、身体が持ち上がる。

 その反動で、左肩に激痛が走る。

 

 千切れる。

 

 そう錯覚するほどの痛み。

 

 声も出ない。

 息もできない。

 

 ただ、苦しい。

 

 引かれてもまだ水に沈む感覚。

 

 

 

「――ッ、ゲホッ……ゲホ、ゲェ……!」

 

 

 

 水を吐く。

 咳が止まらない。

 

 肺が空気を求めて痙攣する。

 

 無理やり息を吸う。

 

 喉が焼ける。

 

 

「リュシア先輩! 大丈夫ですか!? 今、助けますから……!」

 

 エルネの声。

 

 右手を強く握られている。

 そのまま、さらに引かれる。

 

 同時に、別の音。

 

 バシャンッ――!

 

 水を叩きつける音。

 

 もう一度。

 

 さらに一度。

 

 何度か繰り返される。

 やがて、左腕の拘束が、ふっと消えた。

 

 引かれる力がなくなる。

 

 エルネに引き上げられるまま、水から引き離される。

 

 泥の上を引きずられ、岸へ。

 

 ようやく、完全に水から離れた。

 

 そこで、やっと、呼吸が戻る。

 咳き込みながら、何度も空気を吸い込む。

 

 胸が痛い。

 

 喉が痛い。

 

 腕が、痛い。

 

 ……生きている。

 

 その実感が、遅れてやってくる。

 

 荒い呼吸のまま、ぼやけた視線を動かす。

 

「エルネ、さん……私を襲ったのって……何か分かりますか……?」

 

 途切れる息の合間に、問いかける。

 

 エルネは一瞬言葉に詰まり、けれどすぐに掠れた声で答えた。

 

「あ、あの……先輩。さっきの洞窟で見かけたトカゲと同じ見た目を、その、してたと思う」

 

 

 ……やっぱり。

 思った通りだった。

 

 洞窟の中で見た、あの魔物。

 近づいても、こちらに興味を示さなかった存在。

 無害だと。関心がないのだと。

 

 そう、思っていた。

 ――違った。

 

 なぜ襲われたのか。

 

 どうしてここで。

 

 水に入ったから?

 スライムの体液に触れたから?

 餌だと思われた?

 

 答えはまだ分からない。

 

 ゆっくりと、左手を開く。

 震える指の中に。

 五つの、小さな魔石。

 

 それは確かに、そこにあった。

 

 

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