【悲報】美少女にTS転生して愛され系ダンジョン探索配信者デビューしたつもりが、何故か危ないヤツ認定された件~可愛い顔して重量武器を振り回す女の子に『萌え』or『ドン引き』!?~   作:水瓶シロン

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第22話 Sランク探索者との邂逅

 Bランクダンジョンゲート前――――

 

「すみません、瑠奈先輩……お姉ちゃん時間にルーズで……」

「ううん。全然大丈夫だよ~」

 

 今日は放課後に鈴音と待ち合わせして西部第六地区の喫茶店に行ってから、Cランクダンジョンに一時間ほど潜り、鉄平に会ってから現在に至っている。

 

 そのため時刻は午後九時を過ぎており、いくら日が長い季節になったとは言え、既に夜空には月が浮かんでいた。

 

 ちなみに、鈴音が自身の姉にしてSランク探索者である凪沙に連絡を取って決めた集合時間が午後九時丁度なので、もう二十分は遅刻していることになる。

 

「というか、別に鈴音ちゃんまで付き合ってくれなくても良かったんだよ? 明日も学校あるし、早く帰って寝た方が……」

 

 これは瑠奈が鉄平に認められるための試練のようなもの。

 凪沙は万が一のために護衛として同行するのはわかるが、鈴音まで付いてくる理由はない。

 

 しかし、鈴音は「いえ!」ときっぱり言い放った。

 

「多少睡眠時間が短くなるくらい大丈夫です。その……心配なので是非とも同行させてください……」

「心配?」

「は、はい。何と言えばいいか……瑠奈先輩とお姉ちゃんって混ぜるな危険な感じがして二人きりにするのは――って、あ! 来ました来ました!」

 

 どういうことだろう、と瑠奈の疑問が解消される前に鈴音が大きく手を持ち上げて、到着した凪沙に声を掛ける。

 

「お姉ちゃんこっちこっち!」

 

 鈴音の呼び掛けにピクリと反応を示した一人の少女がこちらに歩いてくる。

 

 身長は百六十半ばほどあると思われ、女性にしては背が高い。

 モデル顔負けの均整の取れたプロポーションをしており、やはりどこか鈴音と似ている顔は楚々と整っており非常に美しい。

 また、ストレートロングの黒髪は毛先に向かうにつれて白くなっており、妙に神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 

「もぉ、遅いよお姉ちゃん。二十分遅刻だよ?」

「……ん、ごめん」

 

 遅刻し、謝罪を口にしているものの、その少女の足取りはゆっくり。

 

 だが、瑠奈はとても咎める気にはなれなかった。

 足取りが遅い理由に察しがついたからだ。

 

 その少女――凪沙は、杖をついていた。

 ただの杖ではない。

 白杖だ。

 

 また、思わず見惚れるほど美しい顔にあるはずの瞳は、目蓋によって静かに隠されている。

 

 それでは多少遅刻してくるのも仕方がない――と、瑠奈は自分の中で納得しようとしていたのだが、それを遮るように凪沙が口を開いた。

 

「道の途中で路上ライブやってたみたいで……」

「えっ?」

「お、お姉ちゃん……」

 

 不覚にも間抜けな声を漏らしてしまった瑠奈と、その横で呆れてため息を吐く鈴音。

 

 しかし、凪沙はそんな二人に構うことなく話を続ける。

 

「可もなく不可もない……これ以上ないくらいに普通を極めた……達人? みたいな……」

 

 本人にそのつもりがないことは表情や仕草を見れば一目瞭然なのだが、これは普通にディスっていた。

 

 瑠奈が見た凪沙の第一印象。

 それは――――

 

「(す、鈴音ちゃんのお姉さんって……ちょっと変わってる?)」

「(すみません……ちょっとじゃないです……)」

 

 瑠奈が失礼を承知で素直な印象を鈴音に耳打ちすると、鈴音は首を振ってそう答えた。

 

「ところで……その女の子が、今から探索するっていう……?」

 

 凪沙が小首を傾げながら尋ねてきたので、瑠奈は気持ちを切り替える。

 

「はいっ、早乙女瑠奈です。今日はよろしくお願いします」

「ん、よろしく。ウチは護衛? をすることになった凪沙……向坂凪沙……」

 

 瑠奈は表面上笑顔を保っていたが、正直心配していた。

 

 いくらSランク探索者といっても、盲目。

 目が見えない状態で、一体どうやってダンジョンを探索していくのか。まして、誰かを護衛することなど出来るのだろうか。

 

 ――と、そう思っていることをどうやら凪沙に見抜かれたらしい。

 

 凪沙が淡々とした口調で言う。

 

「昔、モンスターの毒で目をやられて……見ての通りの状態だけど、安心していい――」

 

 ゆっくりとその目蓋が持ち上がり、光を灯さぬ銀色の瞳が真っ直ぐ瑠奈に向けられた。

 

「今、ダンジョン・フロートでウチに勝てる人……二人? しかいないぐらいには強いから……」

「――っ!?」

 

 別に殺気を向けられたわけじゃない。

 急に気温が下がったわけでもない。

 

 それでも、瑠奈は鳥肌を立ててしまっていた。

 

 ただ当たり前のことを世間話でもするかのように、普通に、淡々と語られただけ。

 

 だが、瑠奈は確かに感じ取ったのだ。

 まだ自分では到底辿り着けていない遥かなる高みに、目の前の少女は立っているのだということを。

 

「さぁ、行こうか……Bランクダンジョンの一番奥まで……」

 

 カツッ、と白杖を突いてのんびり歩き出す凪沙の背中を、瑠奈と鈴音は少しの間呆然と見詰めてからあとを追った――――

 

 

◇◆◇

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……これがBランクダンジョン……!」

 

 ゲートを潜ってからしばらく。

 瑠奈は石柱が立ち並ぶ岩と水晶で創られた神殿のようなダンジョンで、次から次へとやって来るモンスターと交戦していた。

 

 今まで潜っていたのはCランクダンジョン――つまり、出現するモンスターの中で一番強いのがCランクモンスターということになる。

 

 だが、ここはBランクダンジョン。

 Cランクモンスターなど、雑魚敵感覚でわさわさ出てくる。

 

 呼吸を整えるため一度後退した瑠奈の前に立ちはだかるのは、五体のCランクモンスター【ナイト・ゴーレム】。

 名前の通り、神殿を守らんとする騎士の風貌をした石の彫刻だ。

 

 だが、ただの石の塊と侮れない。

 持っている武器が長剣、槍、弓と様々なうえ、Cランクモンスターともなればある程度の連携を見せてくる。

 

 連携を掻い潜り、所持する武器によって対処法を変えながら戦わなければならない。

 

「お、お姉ちゃん……瑠奈先輩が……!」

 

 少し離れたところでそんな瑠奈の様子を見ていた鈴音が、自身の傍らに立つ凪沙に助けを求めるが、凪沙はピクリとも動かない。

 

「ウチは……護衛を頼まれただけで、手助けは頼まれてない……」

「そ、そんな……!」

 

 これは瑠奈が一人で突破しなければならない試練。

 ゆえに、鈴音は加勢することが出来ない。

 だが、それがもどかしくて仕方ない。

 

 今すぐにでも【魔法師】として援護したいがその気持ちをグッと堪える鈴音。

 

 そんな様子を感じ取った凪沙が、静かに口を開いた。

 

「鈴音、心配しなくて良い……万が一のときは、ウチが動く……けど――」

 

 凪沙がそう語る頃、同時に瑠奈も大鎌を構えて駆け出していた。

 

「――まだ、その必要はなさそう」

 

 ガシャァアアアン!!

 

 弓を構えていた二体の【ナイト・ゴーレム】の石の身体が、粉砕された。

 

 瑠奈だ。

 前衛で剣や槍を構える【ナイト・ゴーレム】の間隙を縫うように疾走し、後ろで矢を引き絞っていた二体を大鎌で薙ぎ払ったのだ。

 

「はぁ、はぁ……はは……あっはははははッ!!」

 

 砕け散った石の破片の真ん中で、高らかな笑い声を奏でる瑠奈。

 

「これでもう面倒な矢は飛んでこない……あとは、ワタシの間合いッ!」

 

 ダッ、と瑠奈が地面を蹴り出し、長剣を大上段に構えていた【ナイト・ゴーレム】に迫る。

 

 振り下ろされる長剣を擦れ擦れの半身で躱すと、その場で軸足を起点に一回転し、遠心力を乗せた大鎌を一閃。

 

 ドガァアアン! と【ナイト・ゴーレム】の上半身と下半身が今生の別れを遂げた。

 

 倒れたモンスターにもはや興味はないと言った風に、瑠奈の足はすぐに次の【ナイト・ゴーレム】へ。

 

 勢いよく突き出される槍。

 接近して低くしゃがみ込み、頭上に躱す瑠奈。

 

「あはぁっ!」

 

 キラリ、と瑠奈の金色の瞳に宿った鋭利な眼光が輝いた次の瞬間には、大鎌が横薙ぎに振り払われていた。

 

 膝下を切断された【ナイト・ゴーレム】はまだ絶命には至らないものの、瑠奈の足元でうつ伏せに倒れた状態でいる。

 

 しかし、流石はモンスター。

 戦意が失せることはなく、何とか起き上がって瑠奈に一矢報いようとするが――――

 

「残り一体、ね」

 

 ザクッ…………

 

 何の躊躇もなく、必死に起き上がろうとする【ナイト・ゴーレム】の背中に大鎌の刃を突き立て、トドメを刺した。

 

 視線は既に、最後の一体へ向いている。

 

 凪沙はそんな瑠奈を見ながら――いや、視覚を失っているので実際に見えているわけではないが――呟いた。

 

「……鈴音、あの人……名前、何だっけ……?」

「え? あぁ、瑠奈先輩だよ。早乙女瑠奈先輩」

「そう……さおと? 長いね。瑠奈でいいや……」

 

 適当な口振りでポツポツと言葉を溢すような喋り方をする凪沙。

 

 鈴音からすれば凪沙の性格から来るそんな態度は見慣れたものだ。今更何か口出しすることもない。

 

 凪沙は基本、他人に興味がない。

 初対面の人の名前を覚えるなど、もってのほかだ。

 

 だが、鈴音は聞き逃さなかった。見落とさなかった。

 

 凪沙の口元がほんの僅かに弧を描いていたのを。

 そして、ほんの微かに空気を揺らしただろうかというくらいの囁きのような言葉を。

 

「……覚えておこう」

 

 最後の【ナイト・ゴーレム】が砕け散る音もあり、そんな呟きは決して瑠奈の耳には届かなかった――――

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