【悲報】美少女にTS転生して愛され系ダンジョン探索配信者デビューしたつもりが、何故か危ないヤツ認定された件~可愛い顔して重量武器を振り回す女の子に『萌え』or『ドン引き』!?~   作:水瓶シロン

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第34話 フラッグは誰の手に!?

「わざわざフラッグ取ってきてもらって悪いんだけど……それ、ここで置いて行ってもらうぜ?」

 

 Bランクダンジョンのどこにあるかわからないフラッグをわざわざ危険を冒して探すより、フラッグを持ち帰ろうとしているチームから奪った方が早くて楽。

 

 木陰から姿を現した男が長剣を片手にしてニヤリと笑う。

 

 チームメンバーと思しき残り二人も、瑠奈達三人チームを取り囲むように立っていて逃げ場はない。

 

「こ、こんなこと許されるわけないよぉ!」

 

 美穂がそう叫ぶが、男は首を傾げる。

 

「許すも何も、他のチームからフラッグを奪ってはいけませんなんてルールはねぇだろ?」

「そ、そんなの……ルールで決められてなくても普通わかる――」

「――普通? 普通ねぇ?」

 

 男は長剣をプラプラさせて弄びながら、おどけたように言う。

 

「ゲートを潜った先はダンジョン。ここは魑魅魍魎が跋扈する異世界……そんなとこでテメェの普通を持ち出してくんじゃねぇよ」

 

 イカレてる――丸眼鏡の奥で目を鋭くする洋輔も、ギュッと不安げに長杖を握り締める美穂もそう思った。

 

 しかし――――

 

「うんうん、一理あるね~」

 

「えっ、ルーナたん……!?」

「ルーナちゃん!?」

 

 瑠奈は一人、男の意見にコクコクと頷いていた。

 

「そう。ここは私達が普段安穏と生きている世界とは違う。強き者が弱き者を喰らう……非常にシンプルで非情で残酷な世界」

 

 逃げ場はない。

 仕方がない。

 

 瑠奈は納得する。

 まずは武装解除の意味を込めて大鎌を放り投げるようにして手放す。

 宙でグルグルと二、三回転してから刃が適当な木の幹に突き刺さった。

 

 そして、腰に刺していたフラッグを取る。

 

 その様子に男も満足げな笑み。

 

「おうおう、物分かりが良くって助かるぜ?」

「あはは。だってワタシ良い子だもん」

 

 瑠奈も笑って「これで良いんでしょ?」とフラッグを男の方に向かって()()()()()()()()()()()()()()投げた。

 

 情けなくクルクル回りながら宙を飛ぶフラッグ。

 男はやがて自分の手のところに落ちてくるであろうフラッグを見上げて――――

 

「良い子は、悪い子を懲らしめないとね?」

「は?」

 

 今の今まで離れた場所に立っていた瑠奈。

 しかし、男はそんな瑠奈の声を自分のすぐ傍で――懐の内で聞いた。

 

「獲物を前にして視線を逸らすなんて、狩人としては三流だね。あはっ!」

 

 男が宙を飛ぶフラッグに視線を取られている隙に、真っ直ぐ最短距離で接近した瑠奈。

 

 助走による加速力をふんだんに乗せた飛び蹴りを、男の腹部に叩き込んだ。

 

「ぐっはぁ……!?」

 

 男は勘違いしていた。

 瑠奈が大鎌を手放したのは武装解除による降伏ではなく、交戦の意思を隠すためのカモフラージュ。

 潔くフラッグを渡したのも意識を逸らし、油断を誘うため。

 

 そこから生まれる不意の一撃。

 男は身体をくの字に曲げて大きく後ろに吹っ飛び、木の幹に強く打ち付けられた。

 

 そんな男の無様を笑って見詰めながら、瑠奈はやがて落ちてくるフラッグをその手に掴み、腰に刺し戻した。

 

「やろぉ!」

「よくも……!!」

 

 男のチームメンバーである二人が臨戦態勢に入る。

 一人は【魔法師】で、もう一人は槍を持っている。

 

「くたばれっ、【ファイア・アロー】!!」

 

 片手持ちの短い杖を構えた【魔法師】が、自身の周囲に作り上げた燃える矢を一斉に放つ。

 

「させないよぉ!!」

 

 しかし、そんな攻撃を予知していた美穂が冷静に動く。

 炎の矢の射線上に立ち、長杖をドスッと地面に突き刺す。

 

「【アンチマジック・シールド】ぉ~!」

 

 美穂の眼前に薄緑色の光が集まってできたような大きな円形の盾が作り出れ、問題なく【ファイア・アロー】を防ぎ切った。

 

「一応ルーナたん親衛隊の一人……やるじゃないか」

「え、えぇっと……そんな隊に所属した覚えはないんだけどぉ……」

 

 隣でナイフを構える洋輔から贈られる謎の称賛に、美穂は曖昧に笑いながら再び長杖を構えた。

 

 後ろでそんな戦闘が繰り広げられている中で、瑠奈はゆっくりと立ち上がった男の方を見ていた。

 

「どうするぅ? 諦めて他のチーム狙う?」

「ちぃ……クソガキが……!!」

 

 男は表情を歪めて舌打ちし、長剣を木漏れ日に反射させてから突っ込んできた。

 

 その答えに、瑠奈の口角は持ち上がり、金色の瞳は大きく見開かれる。

 

「さっきは不意打ち食らったが、武器のないガキに何が出来る!」

 

 男が叫んだ通り、瑠奈は大鎌を少し離れた位置にある木の幹に突き刺してしまっている。

 

 武器を持つ自分が勝つ。

 男はそう確信していた。

 

 しかし、それでも……それでも妙に不安を感じさせるのが、瑠奈の目。

 

 非武装にもかかわらず自分の敗北を想像すらしていない、純粋に自分の身を置く戦闘を楽しんでいる目。

 

 長剣を片手に走り突っ込んでくる男。

 それを迎え撃たんと、瑠奈も口角を吊り上げて駆ける。

 

 互いが互いに間合いをグングン詰めていき――――

 

「おりゃぁあああああッ!!」

 

 男が鋭く長剣の切っ先を突き出した。

 殺すつもりはないのだろう。狙いは大きく瑠奈の胴体。

 

(さぁ、どう躱す!? 右か左か上か下かッ!?)

 

 瑠奈は武器を持っていない。

 男の一撃と交える刃はない。

 取れる唯一の手段は回避であり、男はそこに合わせてトドメの二撃目を考えていた。

 

 が――――

 

「あはっ!!」

 

 ズシャァッ!!

 

「なぁっ……!?」

 

 男の視界に映ったのは飛び散る鮮血。

 聞こえてくるのは狂気的な甲高い笑い声。

 

 瑠奈が自ら長剣の切っ先に左手を突き出し、貫通させたのだ。

 そのまま勢いに任せて左手を長剣に突き刺したまま刀身をなぞるように持っていき、しっかりと鍔を握り込んだ。

 

「掴まえた……これでもう振れないね、剣」

「テメェ……頭おかしいんじゃねぇか……!?」

 

 自分から左手を貫かれに行くなど、到底考えられない。

 異常な思考だ。

 

 だが、瑠奈は痛みを感じさせない笑顔で言った。

 

「勝つための最適解を取る……それが二流の狩人。一流の狩人は――」

 

 ゴシックドレス風の瑠奈のスカートがバッとひらめき、その下からしなやかな右足が勁捷(けいしょう)に蹴り出される。

 

「――戦いを楽しまなくちゃね」

 

 バシッ! と見事なハイキックが男の側頭部を捉え、そのまま昏倒させた。

 

「さてさて」

 

 もう倒れた相手に用はないと言わんばかりにあっさり視線を逸らした瑠奈は、後ろに振り返って、未だ戦っている洋輔と美穂を見た。

 

「まずは【魔法師】かなぁ……」

 

 瑠奈は自分の左手に突き刺さっていた長剣を引き抜き、右手で逆手に持つと、それを顔の横に持ってくるように構える。

 

 そして、一歩……二歩三歩――と助走をつけながら、

 

「美穂ちゃん伏せてくださぁ~い!」

「えっ――って、きゃぁ!?」

 

 ビュンッ!! と一投。

 

 長剣は真っ直ぐ槍のように飛んでいき、咄嗟に伏せた美穂の頭上を通過して、相手【魔法師】の左太腿を容赦なく貫いた。

 

 勢いで貫通してそのまま地面に切っ先が刺さり、縫い留めるような形になってしまったが、それはそれでいいかと瑠奈は納得。

 

 本人も何やら「ぐぁぁあああッ!?」と歓喜の声を上げていたようなのでウィンウィンだ。

 

 しかし、これで美穂が【魔法師】の対処をしなくて良くなった。

 

 手の空いた美穂が槍使いと互角の戦いをしていた洋輔を援護し、それからは数秒で蹴りが付いた。

 

「はぁ、はぁ……まさか、こんなことになるなんてぇ……」

「とはいえ、これで一件落着だな……」

 

 荒い息を立てて長杖を身体を支える杖にする美穂と、丸眼鏡をクイッと持ち上げるも疲れを隠し切れない表情を浮かべる洋輔。

 

 瑠奈は大鎌を回収してきてから二人のもとへ行き、「さっ」と気持ちを切り替えるように言った。

 

「フラッグを持ち帰るまでが試験ですから、引き続き気を抜かずに帰りましょう!」

 

 コイツは疲れを知らんのか、と美穂だけでなく、狂信的な瑠奈のファンである洋輔も心の中でツッコミを入れた――――

 

 

 Bランク探索者昇格試験、第二次試験。

 瑠奈、洋輔、美穂チーム――合格。

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