人が本当に出ていく前には、たいてい音が減る。
それは経験則だった。怒鳴る者はまだ残る。泣く者もまだ残る。だが、何も言わなくなる者は、もう半分ほど去っている。政治でも、家族でも、それはだいたい同じだった。
その朝、ダイクン家の住まいから上がってきた報告は、静かすぎた。使用人の出入りに目立った変化はない。医師の往診も予定通り。アストライアの体調はやや不安定だが急変なし。キャスバルは本を読んでいた。アルテイシアは花瓶の水をこぼした。
どれも平和な記述だった。そして平和な記述は、こういう時ほど信用ならない。
私は報告書を裏返し、窓の外を見た。人工朝は今日もきれいに始まっていた。サイド3の朝は、出来がいい。出来がよすぎて、時々、人間の方が嘘っぽく見える。
セシリアが入ってきて、新しい紙を置いた。
「港湾夜間通行の再確認です」
「増えたか」
「わずかに。ですが、正規便ではなく、整備業者の立ち入りが増えています」
「整備は便利だな」
「ええ」と彼女は言った。「鍵と配線と暗がりに、だいたい正当な顔で触れられます」
私は紙を見た。整備。搬送。私的便宜。こういうものが重なるとき、たいてい人は逃げるか、盗むか、壊すかのどれかだ。今回はそのうちの一つだろうと思った。
「ランバは」
「呼べます」
「呼べ」
セシリアはうなずき、すぐに動いた。この女は動きが静かだが、静かすぎて時々こちらが先に遅く感じる。有能な秘書とは、つまりそういう圧力でもある。
ランバ・ラルは十分もかからずに来た。姿勢は硬く、顔はいつも通りだった。変わったことがあるとすれば、目だけだった。寝ていない目だ。この男は悩んでいる時ほど、顔の筋肉を使わない。
「報告しろ」と私は言った。
「ジンバ様は今夜動く可能性がある」
「根拠は」
「人が減った。減った分だけ、決めた」
私はうなずいた。いい言い方だった。長く説明しないところも含めて、ランバ・ラルはこうでなければいけない。
「どこへ」
「まだ確定していない。だが港だ。古いルートが一つ、生きている」
「止められるか」
「止めることはできる」
「お前はどうしたい」
ランバはまっすぐ私を見た。余計な感情の入らない、しかし感情がないわけでもない目だった。
「子どもたちを守りたい」
「ザビ家からか」
「全部からだ」
それは良い答えだった。良すぎて、少し腹が立つくらいに。
「ジンバは」と私は言った。
「急いでいる。急ぎすぎている」
「だから失敗する」
「そうだ」
私は椅子にもたれた。ここで決めなければいけないことは単純だった。止めるか。止めないか。ただし、単純なことほど決めにくい。止めれば、キャスバルは檻を知る。止めなければ、外を知る。どちらにせよ、将来の敵を育てることに変わりはない。
「ランバ」と私は言った。「お前は今夜、ジンバを見ろ」
「子どもたちではなく」
「子どもたちは私が見る」
ランバはわずかに眉を動かした。
「信用するのか」
「しない」
「では」
「だから見る」
彼は少し黙った。それから短くうなずいた。
「承知した」
「勘違いするな」と私は言った。「逃がすために言っているわけではない」
「わかっている」
「お前は本当にわかっている顔をするな」
「そういう顔だ」
会話はそこで終わった。必要なことだけが残り、余計なものは落ちた。私はやはり、この男のそういうところを好ましいと思う。好ましいからといって、楽ではないが。
昼過ぎ、私はアストライアを訪ねた。
公的な理由はいくつでも用意できる。体調確認。住環境の見直し。医療体制の拡充。だが本当は、母親の顔を見たかったのだ。出ていく前の子どもの周りでは、たいてい母親だけが違う種類の静けさを持つ。
アストライアは窓辺にいた。少し痩せて見えた。それでも姿勢には、まだ崩れきらない気品が残っている。こういう人を丁重に扱うのは難しい。礼を尽くしすぎると檻になるし、雑にすると復讐になる。
「体調はいかがです」と私は言った。
「良いとは申せません」と彼女は答えた。「ですが、悪いとも言いたくありません」
「正確な返答です」
「正確でなければ、生き残れませんもの」
私は少しだけ苦笑した。ダイクンの妻だった人間に、言葉の扱いが下手であってほしいと思う方が無理だろう。
「キャスバルは賢い子です」と彼女は言った。
「ええ」
「賢い子は、守られていることと囲われていることの違いに敏感です」
私は何も言わなかった。この家の大人たちは、どうも私に同じことを違う口で言いたがる。
「あなたは以前より親切に見える」とアストライアは続けた。「ですが、親切に見える檻ほど残酷です」
「私は檻を作るつもりはありません」
「つもりでないことと、そう見えることは別です」
私はその言葉を受け止めた。反論するだけ無駄だった。この人はもう、私を信じる気はない。ただ、それでも子どもたちに刃が向かっていないことは認めている。そういう中間地点にいる人の言葉は、妙によく刺さる。
「あなたは残るべきです」と私は言った。
「私は残ります」
その即答に、私はわずかに驚いた。
「意外ですか」
「少し」
「母親ですもの」と彼女は言った。「残ることでしか守れないこともあります」
私はその意味をすぐには測れなかった。だが、あとでわかるのだろうと思った。たいていそういう言葉は、あとでわかる。
帰り際、廊下でキャスバルと会った。
彼は何も持っていなかった。何も持っていない人間ほど、出ていく準備を終えていることがある。
「こんばんは」と彼は言った。
「こんにちはだろう」と私は答えた。
「この家は、時間の感じが少し変です」
「そうかもしれない」
彼はしばらく私を見た。少年の目だった。だがもう、ただの少年の目ではなかった。記憶して、比べて、どこに嘘があるかを探す目だ。
「あなたは」と彼が言った。「止める時と、止めない時を選んでいますね」
私は少しだけ笑った。
「ずいぶん大人びた言い方だな」
「大人のやることは、見ていれば少しわかります」
「わかった気になるだけだ」
「そうかもしれません」
それでも彼は視線を逸らさなかった。いい。やはりこの子は、ただ運ばれて神話になるだけの器ではない。自分の足で出ていくなら、その方がまだましだと私は思った。まし、というだけだが。
「キャスバル」と私は言った。「大人はな、親切そうに見える時ほど、自分の都合で動いている」
「知っています」
「それでも、全部が同じ都合ではない」
「あなたは、どっちです」
私は答えなかった。答えられなかったのではない。答える価値がないと思ったからだ。今の彼に必要なのは、私の自己弁護ではなく、出口の位置だろう。
夕方、クランプという名の男の報告が上がってきた。
クラブ・エデンの裏口に、見慣れない整備箱が二つ運び込まれた。箱は軽く、だが扱いは妙に丁寧。それから、タチ・オハラが港の予備ゲートを一つ、必要以上に確認していた。さらに、ハモンが昼のうちから顔を見せている。歌手が昼間から動くときは、たいてい夜に何かがある。
私は紙を見ながら思った。ずいぶんきれいな線だ。ハモン。タチ。クランプ。ランバ側の人脈が、あまりに自然な顔でつながっている。こういう偶然の重なりは、だいたい最初から段取りされている。
セシリアが言った。
「どうなさいますか」
「追跡は」
「できます」
「止めるのは」
「できます」
私は少し黙った。
アサクラが横から言った。
「閣下、今なら確実に摘めます」
「知っている」
「子どもたちを外へ出せば、後日、より大きな面倒になります」
「知っている」
「では」
私は彼を見た。この男は自分の正しさを信じているわけではない。ただ、自分があとで責任を問われにくい方を本能で知っている。そこが嫌だ。そして役に立つ。
「アサクラ」と私は言った。「お前は、失敗の可能性が低い方を選ぶ」
「はい」
「私は時々、失敗の形を選ぶ」
彼は答えなかった。答えると危ないとわかったのだろう。その沈黙だけは賢かった。
夜になる少し前、私はランバへ一通だけ短い指示を送った。
ジンバを見ろ。子どもたちは見るな。
それから港湾側へは、別の指示を流した。
第七予備ゲートの監視を一段薄くしろ。ただし記録は残せ。
これは止めるためでも、逃がすためでもない。少なくとも、私はそう自分に言い聞かせた。人は大きな判断を下す時、たいてい先に言葉の方を整える。整った言葉の後ろに、だいたい少しだけ汚い本音がいる。
キシリアが夜更け前に来た。
「兄上」と彼女は言った。「もう決めたのね」
「何をだ」
「そういう顔をしてる」
私は答えなかった。この女は時々、答えがいらない質問をする。
「止められるでしょう」とキシリアは言った。
「ええ」
「でも、止め切らない」
「そうかもしれない」
「甘いわね」
「違う」と私は言った。「管理の失敗だ」
彼女は笑った。
「それを甘いって言うのよ」
私は机の上のメモを見た。檻が美しいほど、鳥は飛びたがる。その下に、新しく一行を書き足した。
飛び立つ鳥の行き先まで檻にするな。
キシリアはそれを見て、少しだけ顔をしかめた。
「ずいぶん親切」
「親切じゃない。遠くで見えるところへ出すだけだ」
「それ、兄上が一番嫌う言い方じゃない」
「知っている」
夜半を過ぎた頃、最初の報告が来た。
クラブ・エデンの裏口から、花屋の搬送車が一台出た。花屋。宇宙港で花を動かすというのは、実に良い偽装だ。人は別れと出発の前に花を持ちたがる。そのせいで、誰も花屋の箱を深く見ない。
第二報。タチ・オハラ、予備ゲートを通過。記録は正規。ただし確認は甘い。
第三報。ハモン同行。子どもらしき小柄な影、二。
私はその紙を静かに置いた。ついに始まったのだと思った。始まるときはいつも、意外に静かだ。
「追いますか」とセシリアが訊いた。
「記録だけ残せ」
「確保命令は」
「出さない」
彼女は私を見た。初めて、ほんの少しだけ、理解しきれないものを見る目だった。それでよかった。秘書にすべてを理解されると、たいていろくなことにならない。
さらに少し遅れて、ランバから短い報告が届いた。
ジンバは別ルートへ流した。子どもたちは見ていない。だが、行った。
その文の短さに、私は少しだけ救われた。余計な感情がない。だからこそ、そこにある感情の重さがわかる。
私は椅子から立ち上がり、窓辺へ行った。もちろん本物の港は見えない。人工夜と照明だけだ。それでも私は、どこかの暗いゲートから、小さな二人分の影が出ていくのを想像した。
キャスバルは、振り返っただろうか。アルテイシアは、花の箱を覗いただろうか。ハモンは平然と歩き、タチは必要以上に緊張し、クランプは表に出ないまま酒場に残っただろうか。そういう細部ばかりが妙に思い浮かんだ。
「兄上」とキシリアが、いつの間にか後ろで言った。「あなた、今夜のことを一生引きずるわよ」
「そうかもしれない」
「でしょうね」
私は振り返らなかった。窓の外では、サイド3の人工夜が何事もなかったように広がっていた。
まだ公国ではない。まだ国の形すら決まっていない。そのくせ、国を作るはずの男は、今、未来の敵になるかもしれない少年を見逃している。
それは愚かだったかもしれない。だが、前世と同じ愚かさではなかった。そこだけが、今夜の救いだった。